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97話 シャルロッテの引っ越し

 その夜。


 陽が沈み、ほどよい時間になったため、夕飯のために一時解散。

 食堂で夕飯を食べて……


 それから部屋に集まる予定だったのだけど、なぜか、シャルロッテが姿を見せない。

 食事の時間から1時間が過ぎても現れない。


 どうかしたのだろうか?

 なにかあったのかと、さすがに心配してきた頃……扉がノックされる。

 扉を開けると……


「ふふんっ、来てあげたわよ!」


 シャルロッテがいた。

 たくさんの荷物と共に。


「えっと……なんだ、それは?」

「あたしの荷物よ」

「なんでそんなものを?」

「あたし、今日からここのルームメイトになるから」

「……待った。意味がわからない」


 主語を抜かして話さないでほしい。

 いや。

 この場合、主語だけの問題じゃないか。

 重要な説明というか単語、言葉がおもいきり抜け落ちている。


「えっと……ここのルームメイトになるっていうのは、冗談とかウソじゃなくて、本当のことなのか?」

「もちろんよ。そんなウソついてどうするわけ?」

「なんでまた?」

「だって、あたしたちは仲間じゃない? これから一緒にまじ……ふぐぅ!?」

「口止めしておいたことをサラッと大きな声でしゃべろうとするな!」


 慌ててシャルロッテの口を手で塞いだ。


「あー、レンくんがシャルロッテちゃんを襲ってるぅー」

「いけないんだー。っていうか、私のことも襲ってよー」


 通りすがりの知り合いの寮生がくすくすと笑っていた。


「……とりあえず、入れよ」

「お邪魔するわ!」


 シャルロッテは、いつでもどこでも偉そうだなあ……

 ある意味でうらやましい。


 とにかくも、シャルロッテを部屋に招き入れた。


「あれ? シャルロッテさん? どうしたんですか、こんなところへ」

「あわわっ……シャルロッテさま、こんな格好で失礼します!」


 リビングではエリゼとフィアが一つの雑誌を仲良く見てくつろいでいた。


「アリーシャとメルは?」

「共同の大浴場へ行っていますよ。裸のお付き合いとかなんとか、そんなことをメルさんが言い出して、アリーシャさんが連れて行かれました」

「わ、わたしたちはもうお風呂に入っていたので……」

「なるほど」

「ちなみに、メルさんがお兄ちゃんも一緒に連れていきたい、と言ってましたが……お兄ちゃん?」

「そんなことは聞いてないし、行ってもいないからな?」


 だから、メラメラと瞳を燃やしながら睨むのはやめてくれ。


 うちの妹が最近、よくわからないことで炎を燃やしています。

 どうすればいいですか?

 ひょっとしたらエリゼの問題は、魔神よりも厄介なのかもしれない。


「それで、どうしてシャルロッテさんが?」

「俺にもよくわからないんだ。だから、ちゃんと説明してくれ」


 シャルロッテを見てそう言う。

 すると、シャルロッテはなぜか偉そうに胸を張りながら口を開く。


「ふふんっ、仕方ないわね。あたしがきちんと説明してあげるから、聞き逃さないように耳を大きく開いていなさいよ!」


 単なる説明でここまででかい態度がとれるのはシャルロッテだけだろうな。


「あたしたち、魔神を倒す仲間になったわけでしょ?」

「そうだな」

「なら、連携やらチームプレイがちゃんとできるようにならないといけないでしょ?」

「そうだな」

「なら、ルームメイトになるしかないじゃない!」

「待て。なんでそうなる?」


 最後の説明、一気に飛んでいたぞ。

 それなのに、シャルロッテはなんで理解できないの? というような不思議そうな顔をする。

 俺が悪いわけじゃない、シャルロッテの説明が悪いんだからな。


「えっと……あの、その……レンくん?」


 フィアがおずおずと口を挟んできた。

 シャルロッテの家に仕えているということで、主の考えていることがなんとなくわかるらしい。


「えっと、えっと……つまり、シャルロッテさまは一緒に……ルームメイトになることでもっと仲良くなって、親近感を増やして、そうすることで連帯感を強くしていこう……という話をしているのでは?」

「そうなのか?」

「そ、その言い方だと、あたしがレンと仲良くしたいみたいじゃない……」


 あれ?

 なぜかわからないが、シャルロッテが照れている。


 でも、それはほんの一瞬。


 すぐにいつもの調子に戻り、胸を張る。


「でもまあ、大体のニュアンスはフィアが説明した通りで問題ないわ! どう? あたしがルームメイトになる理由、わかった?」

「わかったけど……うーん」

「なんでうなるのよ。もしかしてイヤなの?」

「イヤってことはないし、理に叶っているとは思うんだけど……」


 ついつい、うるさくなりそうだなあ……なんてことを思ってしまった。

 そんなことを口にしたら、どんな反応を見せるか。


 絶対に言えないな。

 適当にごまかしておこう。


「まあいいや。歓迎するよ」

「私も歓迎しますよ、シャルロッテさん」

「よ、よろしくお願いしますっ」

「ええ、よろしくね♪」


 みんなが関係の挨拶を口にすると、シャルロッテはにっこりと笑った。

 笑顔はかわいい。

 ただ、性格は残念だ。


「それにしても、よく先生を説得できたな。一度決まった部屋を変えるなんて、普通なら反対されそうなんだけど……」

「まあ、そこはあたしの人徳ね」


 人徳、あったっけ?


「というわけで、これからよろしくしてあげるわ! ふふんっ♪」


 いつまでも偉そうにしながら、シャルロッテはやはり偉そうな挨拶をするのだった。

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