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92話 1200年前の真実

 魔法が生まれたのは、今から1200年ほど前だと言われている。


 断言していないのは、きちんと立証されていないからだ。

 今の時代はもちろん、前世でも魔法が生まれた時期は明らかにされていない。


 ただ、アニスという少女が最初の魔法使いだということは判明している。


 というのも、ありとあらゆる魔法の書物に……今の時代ではなくて、500年前のことだけど……アニスのサインが記されていた。

 初級魔法教本を始めとして、禁忌と言われている魔法書にまでアニスの名が記されていた。

 他にも、魔法が関わる色々な面でアニスの名前が出てきている。


 以上の理由から、500年前では、アニスが魔法を開発した存在と言われていた。

 故に、始祖魔法使い。

 世界最古の魔法使いであり、最強の魔法使いだ。


「すごい……まさか、こんなところにアニスの書があるなんて……」


 500年前でも、アニスが書いた魔法書はほぼほぼ消失している。

 それなのに、こんなところでお目にかかれるなんて……

 やばい。

 ちょっと震えてきた。


「お兄ちゃん、どうしたんですか? この本、もしかしてとてもすごいものなんですか?」

「ああ、かなりすごいものだ……」

「なら、読みますか?」

「え? いいのか? エリゼが読んでいたんだろう?」

「お兄ちゃんが読みたいなら、私は構いませんよ。この本に固執しているわけではないので」

「じゃあ、遠慮なく。ありがとな、エリゼ」

「いえいえ。お兄ちゃんのお役に立てたみたいでうれしいです♪ えへへ」


 頭を撫でてやると、エリゼはうれしそうにはにかむ。

 こんなんじゃなくて、今度、なにかお礼をしよう。

 甘いものとかおいしいものとか。


 その後、一人になりアニスの書に目を通す。


 書かれているのは古代文字だけど……

 これ、500年前の文字だ。

 俺にとっては見慣れた文字なので、翻訳する必要も、解読に苦労する必要もない。


「ふむふむ……」


 夢中になってアニスの書を読み進めていく。

 魔法に関する様々な知識が詰め込まれていて、とても興味深い。

 これ一冊読むだけで、普通の魔法使いならかなりレベルアップできるのでは?


 ぜひとも持ち帰りたいところだ。

 とはいえ、それはできないんだよなあ……

 あと一時間くらい読むだけで、後はもう閲覧する機会はないだろう。

 クラリッサさんの力があったとしても、そうそう何度も禁忌図書館に立ち入ることはできないだろうからな。


「うん? これは……」


 気になる記述を見つけた。

 それは、以下のように書かれていた。


 『男よりも女の方が優れた魔法を使うことができる』


 初めて聞く話だ。

 そんなことを研究している人なんて、前世でも今世でもいない。

 こんな理論、本当に正しいものなのか?

 アニスの書に書かれていることだけど、ついつい疑ってしまう。


 ただ、読み進めていくうちに……


「なるほど、意外と正しいのかもしれないな、この理論」


 ……と、納得するようになった。


 アニスの書に書かれている理論は、きちんとした実験、考察に基づいたものだった。

 荒唐無稽な話ではない。

 とてもむずかしい研究なので、検証を再現することはできないが……

 信じてもよさそうな内容だった。


「女しか魔法が使えないこと……なにか関係があるのかな?」


 ふと、そんなことを思い、関連するページを調べていくと……


「……あった」


 『魔力収束の研究とその結果について』


 アニスの書によると、世界に満ちている魔力は常に一定量であり、増減することも減少することもないらしい。

 その魔力を使い、人々は魔法を発動させる。


 ただ……絶対量が決まっている。

 そのため、魔法を使う人が多ければ多いほど、世界に満ちる魔力が減ってしまう。


 世界に満ちる魔力を100として、魔法使いが100人いたとする。

 そうなると、一人につき、1しか魔力を使用することができない。


 それは非効率的であり、無駄だ。

 誰もが優秀な魔法使いというわけではない。

 才能のないものが魔法を使うことは魔力の無駄遣いであり、才能ある者の成長、活動を妨げている。


 そのようなことは許されない。

 魔法は才能ある者だけが使うべきであり、そうでない者は排除されないといけない。

 正しい力は正しい者のために。

 それが魔法の本来ある使い方である。


 ……なんてことが書かれていた。


「アニスって、かなり過激な思想の持ち主だったんだな……」


 ある意味で、選民思想だ。

 前世でこんなことを発表したら、とんでもない騒ぎになっていたぞ。


 今世は……

 すでに女性優遇の社会が確立されているから、あまり問題にならないかもしれないな。


「って、もしかして……」


 とある予感を覚えながら、さらにアニスの書を読み進めた。

 そこには、アニスの一世一代の研究の成果が記されていた。

 その研究とは……


 『優れた才能を持つ者だけが魔法を使えるようにする。すなわち、男性から魔法の使用権を取り上げて、女性のみに限定させること』


 そんな一文が記述されていた。


「これって……どうみても、今の時代に関係あることだよな?」


 男は魔法を使うことができない。

 逆に、女だけが魔法を使える。


「今のおかしな状況は、始祖魔法使いのせいかよ……」


 思わず頭を抱えてしまう。


 どんな方法を使ったのか?

 なぜ、500年前ではなくて今なのか?

 どうして、俺は魔法を使うことができるのか?


 いくつか疑問は残るものの……

 男が魔法を使えない理由がハッキリした。


 1200年前の偉大な始祖魔法使い、アニスのせいだ。

 アニスのろくでもない研究によって、男が魔法を使うことはできなくなったのだろう。


「恨むぞ、始祖様……」

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