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87話 デート

 シャルロッテと一緒に寝ることになり、まともに眠れるのだろうか? なんて心配を抱いていたのだけど……

 クラリッサさんとの戦いで疲れていたらしく、目を閉じるとすぐに夢の中へ旅立つことができた。


 そのままぐっすりと眠り……


 翌朝。


「んんんぅ……んやぁ……」


 苦しさを感じて目を覚ますと、シャルロッテに抱きしめられていた。


「っ!?」


 慌てて離れようとするが、がっちりとホールドされていて抜け出せない。

 たぶん、シャルロッテはぬいぐるみかなにかと勘違いして、俺を抱きしめているんだろう。

 そんな感じの抱きしめ方だ。


 やばい、こんな状況でシャルロッテが目を覚ましたら……


「痴漢ね、死刑よ!」


 ……なんて感じで、攻撃魔法を連打するに違いない。

 そんなバイオレンスな朝はごめんだ。

 朝は小鳥のさえずりで起きて、ゆっくりと紅茶を飲みたいんだ。

 そんなのんびりとした朝が好きなんだ!


 俺はそっとシャルロッテの抱きしめから逃げようとするが……


「ん……んぅ?」


 シャルロッテが目を開けた。


 終わった。

 悲鳴と怒号が響き渡ることを覚悟して、思わず俺は目を閉じるが……


「ふわぁ……もう朝なのね。おはよう、レン」

「え?」

「なによ、朝はちゃんと挨拶しないとダメよ。ほら、もう一度。おはよう」

「お、おはよう……?」


 どういうことだ?

 雷が落ちない?


「えっと……」

「あら、ごめんなさいね。レンのこと、ぬいぐるみと勘違いして抱きしめていたみたい」


 シャルロッテがさらりと言って、俺を離した。


「どうしたの、ぽかんとして?」

「……いや、なんでもない」


 これはつまり……

 俺が子供だから、年下だから……

 そういう目で見ることはない、ということか?


 ほっとしたような……

 でも、ちょっとモヤモヤするような……

 とても複雑な気分だった。




――――――――――




 一週間は七日。

 そのうち、五日は学院に通い、残りニ日は休日だ。


 最初の休日を使い、シャルロッテの家を尋ねた。

 そこで終わりになる予定だったのだけど……

 クラリッサさんに気に入られてしまい、そのまま泊まることに。

 そうして、二日目もシャルロッテの実家で過ごすことになった。


 寮に戻ったら、みんなにあれこれと問い詰められそうだなあ……

 エリゼとか、ものすごく拗ねていそうで怖い。


 ……今はそのことは考えないでおこう。

 単なる逃避なのだけど、それくらいは見逃して欲しい。


 それはともかく。


 休日二日目もシャルロッテと一緒に過ごすことになり、俺達は街へ繰り出した。

 クラリッサさんに舞台のチケットをもらったのだ。


 恋人という設定もあるが……

 せっかくの計らいを無下にすることもできず、素直に舞台を観に行くことにした。


「ふんふふ~ん♪」


 隣を歩くシャルロッテはごきげんだ。

 満面の笑顔で、鼻歌を歌っている。

 その性格故に忘れがちになるが、いいところのお嬢さまだから、舞台などは楽しみなのだろう。


 そんなシャルロッテは、今日はおめかしをしていた。

 ワンピースタイプの服をベースに、いくつか服を重ね着して着飾っている。

 指輪などの装飾品はない。

 代わりに、うっすらと化粧をしていた。

 学院ではそんな姿を見たことがないから、とても新鮮だ。

 シャルロッテのかわいらしさが引き出されていて……

 ついつい目がいってしまう。


「ん? どうかしたの? あたしの顔、なにかついてる?」

「いや、なにも」

「そう? ならいいけど」


 よかった。

 俺がドキドキしていることに、シャルロッテは気がついていないみたいだ。

 もしも気がついたら、面倒なことになるだろうなあ……


 あたしに見惚れるなんて仕方のない子。

 でも、それは恥じることじゃないわ。

 なぜなら、あたしは超絶美少女なんだから!


 ……とか言いそうだ。


「シャルロッテは舞台が好きなのか?」


 このままシャルロッテをちらちら見ていたら、本当にバレてしまうかもしれない。

 ごまかすためにも、適当に話を振る。


「いえ、そんなに好きじゃないわ。どちらかというと、退屈に感じてしまうほうね。眠くなるんだもの」

「そうなのか? なら、どうしてそんなに機嫌が良さそうなんだ?」

「え?」

「え?」


 互いにきょとんとした。


「あたし、機嫌が良さそうだった?」

「おもいきり」

「そう? うーん……なんでかしら? もしかして、レンとのデートが思っていたよりも楽しみだったのかしら?」

「ぐはっ」


 予想外の一撃に、思わず咳き込んでしまう。

 俺とのデートが楽しみなんて……

 それじゃあまるで、俺達が本物の彼氏彼女の関係みたいじゃないか。


 そう言うと……


「んー……それも悪くないかもね。ふふっ」


 シャルロッテは絶妙なセリフを口にして、小悪魔的に笑うのだった。

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