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78話 禁忌図書館

 メルと協力関係を結ぶことになり、今後の方針を話し合うことになった。


 最優先しなければいけないことは、魔神の行方を探ることだ。

 450年前……世界を滅ぼした後、魔神はどこへ消えたのか?


 第三者によって、再び封印された。

 あるいは、討伐された。


 ……なんてことになっていれば問題はないのだけど、楽観的に捉えるわけにはいかない。


 魔神は未だ存在し続けている。

 その驚異は消えていない。

 そう考えた方がいいだろう。


 これからどうするか?


 そんなことを話し合い……

 まずは魔神の行方、結末を調べるということで意見が一致した。


 現在、魔神はどんな状況下に置かれているのか?

 それを知らないと話にならない。


 あと、できることならば他の謎も解明したい。

 文明が急速に発展した理由、魔法が女しか使えない理由、その他色々。

 それらを調べることで、魔神の情報に繋がるかもしれない。


「とはいえ、どこをどう調べればいいか……お手上げ状態なんだよね」


 寮の屋上。

 メルと今後についての話し合いをしていた。


 ここなら人はいないし、誰か来たとしてもすぐにわかる。

 まあ、話の内容がアレだ。

 仮に第三者に聞かれたとしても、信じることはなくて、おとぎ話などの創作の話だと思われるだろう。


「図書館などの資料は?」

「とっくに調べたよ。でも、手がかりはゼロ」

「欠片もヒットしない?」

「欠片もヒットしないね」


 メルによると、この国だけではなくて、他国の図書館にも足を運んで魔神について調べたらしい。

 しかし、魔神に関する情報を得ることはできない。

 魔神の『ま』の字も記されていないとか。


 まあ、仕方ないと思う。

 450年前に、世界は一度滅びたらしいからな。

 魔神に関することが記された書物があったとしても、その時に失われているだろう。


「手がかりはなしか……」

「ところが、そうでもないんだよね」

「心当たりが?」

「確信はないけどね。闇雲に調べるよりはマシじゃないかな、と思っているよ。アソコなら、ボクたちが望む情報を得られると思う」

「もったいぶった言い方をしないでくれ。正解は?」

「禁忌図書館」


 世界中の裏の書物が集められているという図書館だ。


 人の道を踏み外した外法が記された魔法書。

 秘匿された記録が記された歴史書。


 ……などなど。

 なにかしらの理由により、陽の光を浴びることのない書物が集められた図書館だ。

 世界中の裏事情が詰め込まれている、といっても過言ではない。


「確かに、禁忌図書館なら魔神について記された書物があるかもしれないな……」

「だろう? 他に手がかりもないから、調べてみる価値はあると思うんだよね」

「でも、アソコは立ち入り禁止だぞ?」


 国にとって都合の悪い歴史書が隠されているかもしれないし……

 大量虐殺を可能にする魔法書も隠されていると言われている。


 そんなところなので、当然、一般人の立ち入りは許されていない。

 閲覧目的の図書館ではなくて、情報を秘匿、封印しておくための図書館なのだ。


 そんなことをするくらいならば、いっそのこと、裏の書物は焼いてしまえば? と思うかもしれないが……

 消失すると呪いを撒き散らすという書物もあるみたいだから、下手に手を出すことができないのだ。


 あと、いざという時の切り札として利用したいとか。

 歴史的観点から、全てを燃やしてしまうのは惜しいとか。

 色々な理由があって、処分することは避けているらしい。


「立ち入りが禁止されているのに、どうやって入るつもりだ? まさか、忍び込むつもりか?」

「そんなことはしないよ。禁忌図書館の書物は莫大だ。一晩、ちゃちゃっと忍び込んで調べられるような量じゃない。正式な許可をとり、じっくりと調べないとね」

「どうやって許可を?」

「そこで、賢者さまの出番さ」


 イヤな予感がした。


「その力と知恵をもって、なにかいい方法を考えてくれよ」

「おいおい……まさかの丸投げか?」

「ボクが下手なことを考えるよりも、レン君に全部任せたほうがうまくいくと思わないかい?」

「思わない」

「そこは見解の相違だね」

「あのな……」


 禁忌図書館の資料を調べるというのは、確かに、良いアイディアかもしれない。

 しかし、その方法を全部丸投げするなんて……


 メルのヤツ、面倒だからっていう理由で放り投げたんじゃないだろうな?

 メルならありえそうだ。


「というわけで、頼んだよ。ボクはボクで、別の方向からアプローチしてみるよ」

「あっ、おい!?」


 言うだけ言って、メルは去ってしまう。

 アイツ、適当すぎる……


「はあ……とはいえ、他に方法もないか」


 さて、どうしたものか?




――――――――――




 禁忌図書館は国に管理されている。

 国の許可が降りれば利用することができる。


 あまり期待はできないが、手紙を書いて、父さん母さんに聞いてみることにした。

 ウチは貴族なので、ある程度、国の力を利用することができる。

 ひょっとしたら……という思いがあるが、あまり期待はできない。

 それほど高い身分ではないし、父さんと母さんはまっすぐな人なので、子供が禁忌図書館を利用したいなんて言っても反対するだけだろう。


 なので、もう一つの手を打つことにした。


「え? 禁忌図書館に?」


 調べてみると、シャルロッテの家……ブリューナク家は、かなり身分が高いらしい。

 国内でも有数の貴族で、その序列は上から数えた方が早いとか。


 そんなシャルロッテの家ならば、なんとかしてくれるかもしれないという期待があった。


「あんなところに入りたいなんて、レンはなにを考えているの?」

「ちょっと調べたいことがあるんだ。悪用はしないって誓うから、なんとかならないかな?」

「そうね……んー……たぶん、なんとかなるわよ」

「マジか!?」

「ふふーんっ、あたしを誰だと思っているの? シャルロッテ・ブリューナクよ! ブリューナク家に不可能はないわ!」


 すごい、言い切ったぞ。


「じゃあ、さっそく……」

「ちょっと待ちなさい。物事には順序と対価が必要でしょう? そのお願いをきくかわりに、レンはあたしになにをしてくれるのかしら?」

「それは……」

「でも、ちょうどいいタイミングで、レンにしてほしいことがあるの。あたしのお願いを引き受けてくれたら、レンのお願いも叶えてあげる」

「シャルロッテのおねがい?」

「ちょっとあたしと付き合ってくれる?」

「いいぞ。どこに行くんだ?」

「おばか。そういう付き合うじゃないわよ。男女の付き合い、恋人になってほしい、っていうこと」

「ああ、なる……なるほど!!!?」


 爆弾発言が飛び出して、思わず声を裏返らせてしまうのだった。

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【勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強の少女達ともふもふライフを送る】
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