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77話 新しい……

 翌朝。


 いつもより遅い時間に目が覚めた。

 酒を飲んだせいだろうか?

 ちょっとだるく、頭がぼんやりとしている。


 とはいえ、日常生活に支障が出るレベルではない。

 仮に問題が出たとしても、今日は休日なので問題はない。


「ん?」


 ベッドから降りると、エリゼもアリーシャもフィンも、まだ寝ていた。

 三人共、朝が弱いということはないので珍しい。


「エリゼ、朝だぞ」

「うぅ……」


 軽く揺すると、エリゼがこちらを見る。

 その顔は青い。


「エリゼ!? どうした、大丈夫かっ」


 まさか、なにかしらの病気に……?

 でも、エリクサーを飲んだことで、その問題は解決したはずだ。

 いったい、どうして……


「お、お兄ちゃん……」

「なんだ? どうした?」

「……頭が痛い、です……ガンガンと、割れるみたいに痛いですぅ……」


 アリーシャを見る。


「うぅ……頭が痛いわ……なによ、これ」


 フィアを見る。


「頭の中で鐘を鳴らされているような、そんな気分です……」


 みんな、揃って頭痛に襲われているらしい。


 つまりこれは……


「なんだ、二日酔いか……」


 思わずため息をこぼしてしまう。

 そりゃ、アルコールに耐性のない子供が酒を飲めば、そうなるよな。


 まったく、人騒がせな。

 でも、病気じゃなくてよかった。


「うぅ、お兄ちゃん……私、どうなってしまうんですか……?」

「どうにもならないよ。寝てれば治る」

「そうなんですか……?」

「冷たい水を飲めば、少し楽になるだろう。待っててくれ」


 みんなの分の水を汲んできた。

 それぞれに水の入ったコップを渡した。


「俺は隣にいるから、なにかあったら呼んでくれ」


 そう言い残してリビングに移動した。


 せっかくの休日だ。

 なにかしたいとは思っていたが……

 今の状態のみんなを放置することはできない。


「ローラ先生に言って、二日酔いの薬をもらってきた方がいいかな? いや、どう言い訳したらいいんだ?」


 二日酔いの薬が必要な理由を聞かれたらアウトだ。

 うまくごまかす自信はない。


「みんなには悪いけど、自然に回復するのを待ってもらうしかないか……ん?」


 コンコンと扉がノックされた。

 誰だろう?

 怪訝に思いながら扉を開けると……


「やあ」


 メルがいた。

 なぜか、大きなバッグやらリュックやら、大荷物を手にしている。


「どうしたんだ?」

「まずは、これをどうぞ」

「これは……二日酔いの薬?」

「必要としているだろう?」

「どうして、そのことを……?」

「ふふっ、あの賢者を再び驚かせることに成功したみたいだね。この瞬間は、何度味わってもたまらないね」

「えっと……?」

「ああ、ごめんごめん。正解を言わないといけないよね。まあ、単純な話だよ。シャルロッテさんが二日酔いになっていたから、残りのメンバーも同じ状態になっているんじゃないかな、って思ったんだよ」

「ああ、そういう」


 種を明かされると簡単な話だった。


「それで……そっちの荷物は?」

「あれ? 聞いていないのかい?」

「なにを?」

「今日からお世話になるよ」

「うん?」


 メルはなにを言っているのだろうか?

 お世話になると言われても、なんのことか……


 って、もしかして。


 とある可能性が思い浮かぶ。

 この部屋のルームメイトは、二人分の空きがある。

 そして、大きな荷物を持って、この部屋を訪ねてきたということは……


「ふふん、察したみたいだね?」

「メルも……今日からこの部屋で?」

「正解! 新しいルームメイトとして、歓迎してくれるかな?」

「急な話だな……どうしてだ?」

「おいおい。つれないなあ。昨夜、一緒に協力していこうと約束したばかりじゃないか」

「それとコレがどう繋がる?」

「同じ目的を持つんだから、同じ部屋にいた方が色々とやりやすいだろう? それともなにかい。ボクと一緒の部屋なんて絶対にイヤ、という感じなのかな?」

「そんなことはないが……」

「なら、問題ないね。今日からよろしく頼むよ♪」

「あっ、おい」


 俺の横を通り抜けて、メルが部屋に入ってしまう。


「なんだい? まだ質問が? 悪いが、後にしてくれないかな? この荷物、けっこう重いんだよ」

「あー……もういいや」


 トラブルの予感がしたけれど、メルを止めることはできそうにない。

 俺、女の子に弱いのかなあ……?


「手伝おうか?」

「ああ、それには及ばないよ」

「でも、重いんだろう?」

「重いといえば重いし、荷物の開封や整理には時間がかかるだろうね」

「なら……」

「はあ」


 なぜか、呆れたようなため息をこぼされた。


「キミは、自分が男ということを忘れていないかい?」

「うん?」

「ボクは、一応、女の子で……12歳の子供とはいえ、男であるキミに色々と見せたくないものがある。例えば、下着とかね」

「あ」

「わかったみたいだね? キミの好意はうれしいが、手伝えることはないんだよ」

「……みんなに薬でも飲ませてくるか」

「そうするといいよ」


 なんていうか……

 最初から最後までメルのペースだ。

 こんな相手と同じ部屋で暮らすなんて、大丈夫だろうか?


「そんな不安に思うことはないさ。ボクは、自分でいうのもなんだけど、いい女の子だよ? キミを困らせるようなことはしないつもりだ」

「人の心を読むな」

「顔に出ているんだよ。実にわかりやすい。賢者ともあろうものが情けないね」


 まったく反論できず、やりこまれてしまう。


 ……コイツ、苦手だ。

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