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72話 優勝

 極大の一撃と究極の一撃が交差して……

 大爆発が起きた。

 炎と光が荒れ狂い、リングを埋め尽くす。


 それだけに終わらない。

 多大な負荷を受けたことで、結界が崩壊した。

 リングを覆っていた光の膜が割れて、粉々に砕け散る。

 幸いというべきか、結界が割れた時には衝撃は収まりつつあり、観客席まで被害が及ぶことはなかった。


 そして、勝負の行方は……




――――――――――




「はっ!?」


 目を覚ますと、ベッドの上に寝ていた。

 学院の保健室だろう。


「……俺、なんでこんなところで寝ているんだ?」


 前後の記憶が曖昧だ。

 はて?


「お兄ちゃん!」

「うわっ」


 エリゼが抱きついてきた。

 目に涙を浮かべていて……

 迷子になった子供がようやく親に会えたような感じで、ぎゅうっと、力いっぱい……


「って、いて!? 痛いから!?」

「あっ、す、すみません」


 エリクサーのおかげか、エリゼの身体能力は俺より上だからな。

 全力で抱きしめられると、骨がぎしぎしと悲鳴をあげてしまう。


「お兄ちゃん、大丈夫ですか? 痛いところはありませんか? 体におかしいところはありませんか?」


 強いて言うなら、エリゼに抱きしめられたところが痛い。

 ……が、そんなことを言うと泣かせてしまいそうなので、やめておいた。


「いや、大丈夫。ちょっとくらくらするけど、特に問題はないな」

「よかったぁ……」

「えっと……俺は、どうして寝ていたんだ? そうだ! 大会は!?」

「お兄ちゃん、覚えてないんですか?」


 コクリと頷いた。


 メルを迎え撃つために全力を……第2位の魔法を放ったところまでは覚えている。

 結果、結界が崩壊したところも覚えている。


 でも、そこが限界だった。

 準決勝、決勝と連続で戦い、それなりに魔力が消費されている状態なのに第2位の魔法を使ったことで、限界が訪れたのだろう。

 いくらなんでも、今回は魔力を使いすぎた。

 第2位の魔法は、万全な状態で使ったとしても、ごっそりと魔力を持っていかれて、ふらふらになってしまうからな……

 あんな状態で使うべきじゃなかったかもしれない。

 おかげで、気絶してしまったみたいだ。


 で……その後はどうなったのだろうか?

 保健室にいるということは、試合は終わったのだろうけど……その結果は?


「試合はもう終わっていますよ。もちろん、お兄ちゃんの勝ちです♪」


 さすが俺の妹。

 俺の考えていることを察したらしく、そんなセリフを口にした。


「そっか……俺、勝ったのか……」


 最後の最後で気絶したせいか、いまいち実感が湧いてこない。


「もう少し詳しいことを教えてくれないか?」

「はい、もちろんです。あれから……」


 エリゼの話によると……


 俺の魔法がメルの魔法に打ち勝ったという。

 結界は負荷に耐えきれず崩壊したものの、万が一の保険がかけられていたらしく、予備の結界が即座に発動した。

 そのおかげでメルは身体的なダメージを受けることはなく、魔力の欠損のみで済んだという。


 メルは倒れて、俺の優勝が決まった。

 しかし、俺も魔力の使いすぎで、ほどなくして昏倒。

 そのまま保健室へ直行……というわけだ。


 決勝戦に出場した二人が揃って倒れて、さらに結界が壊れるという異例の事態に。

 現場は相当混乱したらしく、今でも先生達が後始末に追われているとかなんとか。


「……という感じです」

「なるほど。ところで、なんでエリゼがここに?」

「お兄ちゃんの行くところ、私あり、です!」


 よくわからないことを、そんな堂々と言われても……


「もちろん、お見舞いに来たんですよ」

「そっか、ありがとな」

「えへへ~♪」


 俺に頭を撫でられると、エリゼはふにゃりと笑う。

 なんだか、機嫌の良い時の猫みたいだ。


「他のみんなもお兄ちゃんのお見舞いに、と言っていたんですけど、大勢で押しかけると迷惑になりそうなので……妹権限で、私が代表して来ました」

「さりげなく強権発動してるな……あとで、みんなにも礼を言っておかないとな」


 保健室を見回してみるけれど、他に誰もいない。


「ところで……メルは?」

「……お兄ちゃん、それは誰ですか? 私の知らない女の子の名前……私の知らない女の子の名前……誰ですか? ねえ、誰なんですか?」


 突然、エリゼが死んだ魚のような目になり、ぐいぐいっと詰め寄ってきた。

 この感情は……恐怖!?

 バカな、魔王も倒したことがある俺が、妹相手に恐怖するなんて!?


「い、いや、別に……ほ、ほら! 決勝で戦った相手だよ。だから名前を知っているわけで……おかしなところなんてなにもないだろう?」

「なーんだ、そうだったんですね。てっきり、お兄ちゃんがどこかで悪い女の子に引っかかっちゃったのではないかと、心配になりました」


 そういう心配をしていたように思えないが……

 なんだか怖いので、深く追求しないでおこう。


「メルも魔力を全損して倒れたんだよな? でも、見当たらないけど……」

「宿直室のベッドを保健室代わりにして、そこで治療しているみたいですよ。魔力の状態だけではなくて、怪我がないか確かめないといけないので……男のお兄ちゃんが一緒だと、色々と困るじゃないですか」

「ああ、そういう」


 体の状態を確かめるとなると、確かに俺が一緒にいるわけにはいかない。

 12歳とはいえ、一応、男なんだからな。

 メルも、俺に裸を見られたくないだろう。


「お兄ちゃん、今、裸とかそんなことを考えませんでした……?」

「か、考えてない。考えてないから、目の焦点をぼかすのはやめてくれ」

「そうですか……むぅ」

「とりあえず、もう少し寝るよ。まだ少しだるいし、魔力も完全に回復していないみたいだからな」

「はい、わかりました。私はここで看病していますね」

「大丈夫だって。それよりも、他のみんなに俺が大丈夫っていうことを伝えてくれないか?」

「お兄ちゃんがそういうのなら……むぅ、いけずです」


 エリゼはちょっと不満そうにしながらも、素直に保健室を出ていった。


 一人になった俺は、とある人のことを考える。

 当然、それはメルのことだ。


「メル・ティアーズ。あの口ぶりからして、俺の前世を知っているよな? それに、あの力……いったい、何者なんだ?」

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