表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/138

68話 魔法大会三日目

 いよいよ訪れた魔法大会三日目。


 今日、1年の中で一番強い生徒が決められる。

 誰が一番優れた魔法使いなのか?


 その栄誉に興味はないが……

 強い相手と戦うことができる、というところには惹かれるものがある。


 例えば、シャルロッテ。

 彼女は遅延魔法という、俺の知らない技術を持つ強敵だ。

 シャルロッテと戦うことで、俺はさらに強くなることができるかもしれない。


 他にも、俺の知らない強敵と激突するかもしれない。

 そのことを考えると、楽しみだ。

 ただ強くなるという欲求だけではなくて……

 そんなことを考える俺には、戦いを楽しむバトルマニアのような欲があるのかもしれないな。


 さあ。

 準決勝に挑むことにしよう。




――――――――――




 リングの上でシャルロッテと対峙した。

 互いに不敵な笑みを浮かべて、相手を見据える。


 言葉はいらない。

 戦いの前の激励は、昨日、交わした。

 後は己の力を見せつけて……

 意地とプライドを賭けて戦うだけだ。


「おにいちゃーーーんっ、がんばってくださいーーー!!!」

「負けるんじゃないわよ」


 エリゼとアリーシャの声援が聞こえた。

 やる気が出てくる。


「レン君もシャルロッテさまも……えと、その……どちらも、が、がんばって……くださいっ!」


 フィアの声援も聞こえた。

 俺だけじゃなくて、シャルロッテも一緒に応援するところはフィアらしいと思う。


「シャルロッテさんもレン君もがんばれーっ!」

「私はレン君を応援しているからねーっ!」

「レン君かわいいーっ!」


 クラスメイトも応援を飛ばしてくれる。

 一部、変な応援が混じっていたような気がするが……


「では、これより準決勝を始める」


 審判の言葉に反応して、俺は目の前の試合に意識を集中させた。

 世界から音が消えるような感覚……

 シャルロッテ以外の情報がシャットアウトされていく。


 そして……


「準決勝、第一試合……開始!」

「「火炎槍<ファイアランス>!」」


 審判の合図と同時に、俺とシャルロッテは魔法を解き放つ。

 炎の槍が飛翔して、宙で激突して爆ぜた。


 相変わらず早い。

 試合前に充填していたのだろう。

 ほぼほぼ詠唱なしで、シャルロッテは魔法を使ってきた。


 ルール上、ありなのか?

 と思わないでもないが……

 シャルロッテの遅延魔法は独自の技術で、今の魔法学のはるか先をいくものだ。

 そんなものを禁止するルールなんて制定されていない。


 それに……

 相手が強ければ強いほど燃えてくるというものだ。

 制限をかけるようなことをして、弱体化したシャルロッテと戦っても得られるものは少ない。

 最大限の力を発揮するシャルロッテと戦ってこそ、成長できるというものだ。


「っ……ふふん、やるじゃない!」


 初撃が相殺されたことに、シャルロッテはわずかな動揺を見せていた。


 シャルロッテは圧倒的な攻撃速度を誇るが……

 俺はそれに拮抗してみせた。

 そのことに、シャルロッテは驚いているみたいだ。


 以前は、シャルロッテに先制を許した。

 あの時は、実はけっこう悔しかった。

 試合には勝ったけれど、魔力でゴリ押ししたようなものだからな。

 同じ魔力量だったら、負けていたかもしれない。


 なので、シャルロッテに対抗する術を密かに開発していた。

 それが『無詠唱魔法』だ。


 魔法を使う際は、大なり小なり、ある程度の詠唱を必要とする。

 第10位魔法であれ第1位魔法であれ、必ず詠唱をしなければならないが……


 俺はその詠唱を簡略化する術を開発した。

 詠唱を必要とせず、ただ一言、力ある言葉を口にするだけで魔法を発動できる。

 シャルロッテとの戦いがきっかけとなり、開発することができた新しい技術だ。


 とはいえ、まだまだ未完成だ。

 第10位より上の魔法を無詠唱で発動することはできないし……

 威力も格段に落ちてしまう。


 今後の課題は山積みなのだけど……

 それでも、こうして実戦投入できるくらいには形になっていた。


「「風嵐槍<エアロランス>!」」


 シャルロッテが魔法を放つタイミングに合わせて、俺も無詠唱で魔法を放つ。

 風の槍が激突して、周囲の空気を乱した。


 魔力量は俺の方が上だ。

 しかし、無詠唱魔法を使うことで威力が落ちているため、シャルロッテの魔法と威力が拮抗している。


 シャルロッテを打倒するには、無詠唱魔法ではなくて、きちんと詠唱をして、いつもどおりの威力の魔法を叩き込まないといけない。

 しかし……


「火炎槍<ファイアランス>!」


 シャルロッテは次から次に魔法を連射してきた。

 こちらの考えを読んでいるのだろう。

 詠唱する隙なんて与えないとばかりの猛攻だ。


 魔法大会の試合内容は模擬戦と変わりない。

 結界が展開されていて、肉体にダメージがいくことはなくて、魔力のみにダメージを与える。


 なので、いつかの模擬戦の時と同じように、あえてシャルロッテの魔法を受けてしまえばいい。

 俺の方が圧倒的に魔力量が上なのだから、枯渇するということはないだろう。


 ……が、その作戦はとらないことにした。


 理由は三つ。

 まず、そんなことをして勝利しても得られるものはないということ。

 力任せに勝利しても、成長することなんてできない。

 知恵を振り絞り、ギリギリの戦闘経験を積み重ねることで、力を手に入れることができるのだ。


 2つ目の理由は、この後に決勝戦を控えているということ。

 俺が勝つという前提で考えるのは、少々、図に乗っているかもしれないが……

 シャルロッテに勝利したら、そのまま、次の相手が戦い、決勝戦を迎えることになる。

 どんな相手なのかわからないから、できるだけ魔力の消費は抑えておきたいところだ。


 3つ目の理由は……シャルロッテが奥の手を有しているかもしれない、というものだ。

 俺の魔力量が圧倒的ということは、いつかの模擬戦でシャルロッテも知ったはずだ。

 その対策を練らず、放置しておく……なんてことは考えづらい。

 シャルロッテのことだから、なにかしらの秘策を考えていたとしてもおかしくない。

 それを警戒しないといけないので、力任せに、なんて無茶な作戦をとるわけにはいかない。


「氷烈牙<フリーズストライク>!」


 ここで初めて、シャルロッテの動きに変化が出た。


 ぐるりと、俺を中心に円を描くように駆けて……

 同時に魔法を発動。

 今までのような遅延魔法ではなくて、しっかりと詠唱を行い、魔法を発動させてきた。


 氷の波が押し寄せてくるが、俺は持ち前の身体能力だけでそれを回避。

 やや危なかったけれど、ダメージを受けることなくやり過ごすことができた。


 そして、反撃を叩き込む。


「紅蓮牙<イグニートストライク>!」


 炎が生き物のようにうねり、シャルロッテに襲いかかる!

 タイミングは完璧だ。

 普通に考えたら、避けることも相殺することもできない。


「氷烈牙<フリーズストライク>!」


 シャルロッテは、今度は詠唱ゼロで魔法を発動した。

 氷と炎が激突して、相殺される。


 こちらの攻撃は防がれてしまったけれど……

 これでいい。

 シャルロッテの遅延魔法は、あらかじめ唱えておいた魔法をストックしておくというものだ。

 どれくらいの数をストックできるかわからないが、数え切れないほど、ということはないだろう。

 それは、さすがに人のキャパシティを越えている。


 おそらく、10前後……それがシャルロッテの限界だ。

 あらかじめストックしておいた魔法を全て使い切らせることができれば、大きくやりやすくなる。


 避けられないタイミングで魔法をぶつけて、シャルロッテの魔法のストックを減らしていき……

 残量がゼロになったところで、全力を叩き込む。

 それが、最初に考えた対シャルロッテの作戦だ。


「紅蓮牙<イグニートストライク>!」


 俺は再び魔法を唱えて……

 その直後、ゾクリと悪寒が背中を走る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆ お知らせ ◆

ビーストテイマーのスピンオフを書いてみました。
【勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強の少女達ともふもふライフを送る】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ