66話 魔法大会二日目
魔法大会二日目。
参加者が絞られているため、顔見知りと激突する可能性が高い。
そんな事前の予測通り、エリゼはアリーシャと戦うことになった。
治癒魔法に長けていて攻撃力に欠けるものの、身体能力が優れているエリゼ。
魔法の技術はそこそこだけど、魔法剣という切り札を持つアリーシャ。
さすがの俺も、どちらが勝つかわからない。
エリゼとアリーシャは全力を出して激突して……
学院の歴史に残るような名勝負を繰り広げて……
そして、最終的にアリーシャが勝利した。
エリゼもかなり惜しいところまでいったのだけど、最終的に、アリーシャの魔法剣の前に倒れてしまった。
物理と魔法。
同時にダメージを与えることができる、とっておきの必殺技。
やはり、その威力はすさまじい。
エリゼは常人離れした身体能力でアリーシャを追い詰めていくが……
最後の最後で魔法剣をまともに受けてしまい、倒れることになった。
一進一退の攻防だった。
小さなきっかけ一つで、勝者が入れ替わっていてもおかしくない。
そんな白熱した試合だった。
一方で……
フィアはシャルロッテと戦うことになった。
最初は、シャルロッテさまと戦うなんて……と、あわあわしていたものの。
楽しみにしてるわよ、とシャルロッテに喝を入れられて、落ち着きを取り戻した。
堅実な戦い方をするフィア。
派手に戦い、遅延魔法という切り札を持つシャルロッテ。
一見すると、シャルロッテの方が有利に思えたのだけど……
意外と言うと失礼になるのだけど、フィアは善戦した。
シャルロッテの猛攻を紙一重のところでしのぎつつ、的確に反撃を叩き込む。
教本に載っているかのような、堅実な戦い方だった。
教本通りというと、柔軟な思考ができない固いイメージがあるのだけど……
本当はそんなことはない。
教本というものは、人が積み重ねてきた歴史だ。
今まで学んできた技術をまとめて、最適、効率化したものだ。
その内容を実践できるのならば、強くないわけがない。
教本通りに戦うフィアに、シャルロッテは苦戦を強いられた。
驚きだった。
あのフィアが、シャルロッテを相手に互角に戦うなんて……
一時期、魔法を教えた身としては鼻が高い。
ただ、シャルロッテという壁は、やはり高かった。
堅実に戦うフィアを相手に、シャルロッテは火力で押し切るという戦いを選んだ。
遅延魔法を使い、魔法を連射。
圧倒的な物量で攻めた。
さすがのフィアも、これには為す術がなかった。
なにしろ、シャルロッテのような連射に対処する術など、まだ開発されていない。
故に、対処する方法も教本には載っていない。
遅延詠唱をできるシャルロッテが異常なのだ。
結果……シャルロッテの勝利に終わった。
しかし、俺を含めて、観客はフィアにも惜しみない拍手を送った。
果敢に戦ったフィアのことを、誰もが称賛していた。
シャルロッテも、フィアの力を見て、自分のことのようにうれしそうにしていた。
フィアは照れて、あわあわと慌てていたものの……
これがきっかけとなり、良い方向に進むことができるだろう。
そんなことを思った。
そして……俺の番が訪れた。
俺の対戦相手は……
「あら、男のくせに、あんたも大会に出場していたの? レンのくせに生意気なんだけど……ま、いいわ。ここで身の程っていうものを思い知らせてあげる」
アラムだった。
「……」
「どうしたの、ぽかんとして? もしかして、あたしが怖いの? ま、しょうがないわね。あんたのような落ちこぼれとは違い、あたしのクラスは『シルカード』なんだから」
「いや……最近、まったく顔を見ていなかったから、すっかり姉さんのことを忘れていましたよ。そういえば、同じ学院に通っていたんですね」
「あんですって!?」
アラムが激高するが……
でも、仕方ないだろう?
ずっと顔を合わせていないのだから、忘れても仕方ない。
覚えておくだけの価値もないし。
「やっぱり、あんた生意気ね……ここで圧倒的な力を見せつけて、学院から追放してあげる」
「ふむ」
ここまで言うからには、自信があるのだろう。
あれから、相当な修練を積んだのかもしれない。
もしかしたら、驚くほどの力を手に入れたのかもしれない。
一応、警戒することにした。
「さあ、いくわよっ!」
試合開始の合図が審判から告げられて、互いに戦闘態勢に入る。
まずは牽制の一撃だ。
「火炎槍<ファイアランス>!」
「ぎゃあああああっ!!!?」
……牽制の一撃でアラムは吹き飛び、場外へ。
そのまま俺の勝利が言い渡された。
「アラムはアラム、っていうことか」
やれやれだ。
いじめっこの姉ではなくて、最近はギャグ枠になりつつあるな。
それはともかく。
こうして、俺は次々と出場者を打ち破り……
順調に勝ち上がっていった。
アリーシャとシャルロッテも勝ち上がるのだけど……
二人は準々決勝で激突した。
「いくわよ」
「良い勝負をしましょう! あたしの力、見せてあげるっ」
アリーシャは魔法剣を主体に、近接戦を持ちかける。
一方でシャルロッテは、遅延魔法を武器に遠距離からの攻撃をしかけた。
懐に潜り込ませず、堅実に戦う。
試合の流れに大きな変化が起きたのは、開始5分後のことだった。
突然、シャルロッテがバランスを崩した。
アリーシャが戦いながらリング場を切り、足場を悪くしていたのだ。
その罠に引っかかり、シャルロッテは隙を見せることになった。
ここぞとばかりにアリーシャが突撃するが……
シャルロッテの方が上手だった。
体勢を崩してみせたのは、アリーシャの攻撃を誘うためだったのだ。
シャルロッテは、万全の体勢でアリーシャを迎え撃ち……
そして、勝者となった。
こうして、最後まで勝ち残った四人が決まり……
俺とシャルロッテは、最終日の三日目……準決勝で激突することが決まった。
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