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62話 決戦!

 いよいよ魔法大会が開催された。

 リングの上で生徒が激突して、様々な魔法が繰り出されていく。

 特に大きなトラブルが発生するわけでもなく、順調に試合が消化されていき……


 そして、フィアの出番が訪れた。


「うっ……」

「ふふん」


 フィアは緊張で震えていた。

 対するフニンは、余裕たっぷりに笑みを浮かべている。


 ただ、フィアは逃げるような真似はしない。

 震えながらも、しっかりとフニンを見ていた。


「フィアさん、がんばってくださーい!」

「そんなヤツに負けないで!」


 観客席に座る俺達は、みんなでフィアの応援をした。

 その中にシャルロッテもいるが、彼女はなにも言葉を発していない。

 凛とした表情で、じっと舞台を見つめている。

 彼女なりに、なにか思うところがあるのかもしれない。


「いくわよ!」

「っ!?」


 審判役の先生の合図で、二人のバトルが開始された。

 先手を打ったのは、フニンだ。


「火炎槍<ファイアランス>!」


 炎の槍がフィアを襲う。


 一瞬、フィアの視線が左を向いた。

 避けるべきか、それとも迎撃するべきか。

 その判断で迷ったのかもしれない。


 しかし、それは実戦では大きな隙となる。

 一瞬の迷いが判断を遅らせてしまい、回避不可能な状況に陥ってしまう。


「うく……ふぁ、火炎槍<ファイアランス>!」


 結局、フィアは迎撃を選んだ。

 同じ魔法を放ち、炎の槍を撃ち落とす。


 しかし、判断が遅い。

 近距離で相殺したせいで爆発が起きて、それに巻き込まれてしまう。


 結界のおかげで肉体的なダメージはないが……

 魔力にダメージは入ったらしく、苦い顔をしていた。


「あら、もしかしてもう終わり? ふふっ、思った以上にあっけないのね」

「うっ……」

「ありがとう。私の踏み台になってくれて」


 フニンは嗜虐性の高い笑みを浮かべながら、再び魔法を唱える。


「閃熱牙<フラッシュストライク>!」


 光の粒子が収束して、獣の牙のように編み込まれた。

 そして、目標……フィアに向けて解き放たれる。


「火炎槍<ファイアランス>!」


 今度は迷うことなく、フィアは迎撃を選んだ。

 しかし、それは悪手だ。


 第9位の魔法を第10の魔法で撃ち破ることは難しい。

 大きな魔力があれば別なのだけど……


「あうっ!?」


 フィアの魔力では位階の壁を突き抜けることはできなかったらしく、炎の槍は光の前に打ち消されてしまう。

 そのまま光の牙がフィアに食らいつき、さらなるダメージを与えた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 残り魔力が厳しくなってきたのかもしれない。

 フィアは苦しそうな顔をして、その場に膝をついた。


「まだやれるかね?」

「は……はいっ」


 審判役の先生の問いかけに、フィアは震えながらも、しっかりと頷いてみせた。

 戦況は劣勢だけど、戦意は失っていないらしい。


 そんなフィアを、フニンはあざ笑う。


「まだ諦めないつもり? あなたごときが私に勝てると思っているの? 今なら、降参してもいいのよ?」

「諦めたりなんか……し、しませんっ」


 フィアは立ち上がり、フニンをまっすぐに見つめる。


「エリゼさんが……アリーシャさんが……応援してくれているんです。レン君が色々なことを教えてくれました。それに……シャルロッテさまが見ているんです。わ、わたしは……ダメダメな子ですけど……でも、大事な人達の期待を裏切りたくありませんっ!!!」


 その言葉は、隣のシャルロッテにしっかりと届いていた。

 シャルロッテは舞台のフィアを見て、拳をぎゅうっと握り……


「……がんばりなさい」


 一言、つぶやいた。


 その声は、隣にいる俺だから聞こえたようなものだ。

 舞台の上のフィアにまで届くとは思えない。


 しかし。


 フィアはちらりとこちらを見て……

 シャルロッテの声に応えるように、一度、コクリと頷いてみせた。


「ちっ……うっとうしいわね! あんたみたいな雑魚は、さっさと退場してくれる!?」


 フニンは苛立ちを見せて、さらに魔法を解き放つ。


「風嵐槍<エアロランス>!」

「火炎槍<ファイアランス>!」


 ほぼ同じタイミングで、フィアも魔法を唱えた。


 風と炎、二つの槍が宙で激突する。

 こうなると、互いの魔力勝負になる。

 より魔力の大きい方が相手の魔法を撃ち破る。


 その結果は……


「あうっ!?」


 フィアの負けだ。

 風の槍が炎の槍を貫いて、そのままフィアの体を穿つ。


 度重なる攻撃に、ついに魔力が底をついたのかもしれない。

 フィアは再び膝をついた。

 フニンは勝利を確信したような顔になる。

 しかし、それは油断以外のなにものでもない。

 フニンは気がついていない。

 未だ、フィアの目から闘志が消えていないことに。


「っ!!!」


 審判役の先生が問いかけるよりも先に、フィアは立ち上がり、戦う姿勢を見せた。


「どうして……!」


 フニンが焦りにも似た感情を見せた。

 おそらく、何度でも立ち上がるフィアに、本能的な驚異を覚えたのだろう。


「わたしは……負けませんっ!!!」


 フィアは深呼吸をして、さらに深く集中して……

 そして、俺が教えた魔力式を使い、魔法を発動させる。


「紅蓮牙<イグニートストライク>!」

「なっ!? ふ、閃光牙<フラッシュストライク>!」


 フィアが第9位の魔法を使えるとは、思ってもいなかったのだろう。

 フニンは驚きながら、慌てて迎撃の魔法を唱えた。


 うん、俺も驚いた。

 第10位の魔法しか使えないと思っていたんだけど……いつの間に?


「くっ!」


 二人の魔法が、再び宙で激突した。

 炎と光。

 その二つが、荒れ狂う獣のように絡み合い、喰らい合い……


 そして。


「いけぇえええええっ!!!!!」

「なっ!!!?」


 フィアの想いに応えるように、炎が打ち勝つ。

 紅蓮の炎が尾を引きながら宙を駆けて、フニンの体を打つ。


「かはっ!!!?」


 フィアの放った魔法に、フニンが飲み込まれた。

 魔力で編み込まれた炎が、フニンの心にダメージを与える。

 残っていた魔力を焼き尽くされて……


「あう……」


 ぐらりと、フニンの体が揺れて……

 そのまま倒れた。

 審判役の先生が駆け寄り、フニンの状態を確かめる。


「勝者、フィア・レーナルト!」


 ほどなくして、フィアの勝利が告げられた。

 瞬間、歓声が湧き上がる。

 見事な逆転劇に、拍手を送り、フィアの健闘を讃えていた。

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