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55話 作戦会議

「……と、いうわけで。クラスメイトのシャルロッテだ」

「ちょっと。まだ、あなたには名前呼びを許可していないんだけど」

「いやいやいや。今日、許可してくれただろ?」

「……あら?」

「鳥頭か!」

「し、失礼ね。ちょっとボケてみただけよ」


 ウソだ。

 今のは絶対に忘れていた。

 シャルロッテは、意外とうっかりなところがあるらしい。

 まあ、ある程度抜けている方が、かわいらしくもある。


「「……」」


 寮にシャルロッテを招いて、エリゼとアリーシャに紹介をした。

 二人共、なんでこの人だれ? というような顔をしていた。


 まあ、当たり前だよな。

 いきなり連れてきても訳がわからないだろう。


 幸いというべきか、今、フィアはローラ先生に呼ばれていて席を外している。

 話をするなら今だ。

 俺は、シャルロッテとフィア、それにまつわる周囲の関係を説明した。


「フィアさんが、ブリューナクさんの家に仕えている……」

「でもって、とりまきにいじめられている……」


 説明が終わると、二人は微妙な顔をした。

 まあ、楽しい話ではないからな。

 そういう顔をしてしまうのも、わかる。


「許せませんっ!」


 エリゼが怒った。

 ぐっと拳を握りしめて……

 そのまま部屋を出ていこうとしたので、慌てて止める。


「どこに行くんだ?」

「もちろん、フィアさんをいじめている人をこらしめるんです! こんなことを聞いて、黙っていることなんてできません」

「落ち着け。そういう方法じゃ、根本的な問題は解決しないと思うんだ。第一、エリゼはフィアをいじめているヤツが誰なのか、わからないだろう?」

「あっ……」


 今更ながらそのことに気がついた様子で、エリゼがおとなしくなる。

 誰かのためになると、エリゼはとんでもない行動力を発揮するんだよな。

 それは、兄として誇らしくもあるが……今は落ち着いてほしい。


「それで、そんな話をあたしたちにしてどうするの?」


 アリーシャは冷静らしく、飛び出すようなことはしなかった。

 ただ、怒りや不快感を覚えているらしく、眉が寄っている。


「フィアのために、一緒に解決方法を考えてほしいんだ。今のままだと、フィアは都合よく利用されてしまうから……二度とそんなことが起きないように、根本的なところから問題の解決を図りたい」

「あたしもおねがいするわ。フィアのために、協力してくれない?」


 シャルロッテも頭を下げた。

 ちょっと驚いてしまう。

 フィアのために、ここまでできるなんて……

 彼女が言っていた、フィアは大事な友だちという言葉は真実のようだ。


「もちろん、私は相談に乗りますよ! ねっ、アリーシャちゃんも話を聞きますよね?」

「問答無用ね……ま、断るつもりはないけどね」

「助かるよ、二人共」

「あたしからも、改めてお礼を言うわ」


 さて。

 それじゃあ、作戦会議を始めるとするか!




――――――――――




 それから……

 フィアの現状を改善するための話し合いが行われた。


 主犯格をこらしめる、学院に厳正な処分を求める、家に報告して家族に対処してもらう……などなど。

 色々な案が出てきたものの、コレだ、というものはなかなか出てこない。


 主犯格をこらしめたとしても、フィアを逆恨みして、さらに過激な行動に走ってしまうかもしれない。

 学院に対処を求めたとしても、学院は、生徒間の争いに首をつっこむことは少ないらしい。

 積極的に活動することはないという。

 良く言えば自主性を重んじているが、悪く言うと放置だ。

 家に報告するという案は、シャルロッテに却下された。

 主犯格の少女はたいそう甘やかされているらしく、そんなことをしても無駄だろう……ということだ。


「なかなか突破口が見つからないな」


 みんなで頭を悩ませる。


「やっぱり、あたしがビシッと言った方がいいんじゃない?」


 シャルロッテが、ちょっと焦れた様子でそう言った。


 たぶん……シャルロッテとしては、ふざけたことをしている取り巻きを、自分の手でこらしめたいのだろう。

 なんだかんだで正義感が強いというか……

 いや。

 それよりは、自分の知らないところで好き勝手されていたことに腹を立てている、という感じか?

 フィアのことを気遣っていることはウソではないだろうが、それ以上に、勝手なことをした取り巻きに怒りを覚えているみたいだ。


 なかなかどうして。

 女王さまは、意外と真面目で、まっすぐな性格をしていた。


 って、いつまでも女王さま呼ばわりは失礼か。

 女王さまは、これで終わりにしよう。


「フィアさんに危害が及ばない方法……逆恨みとか、そういうことが起きないようにする方法……」


 エリゼが考えて……


「うーん」


 考えすぎて知恵熱が出てきたらしく、ぐるぐると目を回した。

 体は丈夫になったのだけど、精神的な面はまだまだ発展途上らしい。


「レンはなにか思い浮かばないの?」

「うーん……なんていうか、あとちょっとでなにか思い浮かびそうなんだけど……」」

「ふーん……期待してるわよ。 それで……アリーシャさん? は、なにか思い浮かんだ?」

「そうね……」


 シャルロッテは、アリーシャのことを名前で呼んでいた。

 気が強い者同士、意気投合したのかもしれない。


「フィアさんをやばい、と思わせる、っていうのはどう?」

「「やばい?」」


 俺とシャルロッテは、揃って首を傾げた。

 隣で、エリゼも小首を傾げている。


「いじめっ子って、相手が自分より格下だと舐めているから、いじめるわけでしょう? 格上の相手に噛み付くことなんて、絶対にないもの」

「そうだな」

「だから、シャルロッテの取り巻きに、フィアはやばい、って思わせるの」

「そのやばい、っていうのはどういう意味なのかしら?」

「やばいって思わせることができれば、なんでもいいの。自分より強い力を持っているとか、親がすごい権力を持っているとか……そんな感じ」

「なるほど……さすが、アリーシャちゃんですね! そういうことを考えさせたら、右に出る人はいませんっ」

「それ、褒めてるのかしら……?」


 アリーシャがジト目になるが……

 あきらめろ。

 エリゼは本気で言っているぞ。

 ウチの妹は、たまに無自覚毒舌になるからな。


「でも、難しいんじゃないですか?」


 エリゼが異を唱えた。


「フィアさんの成績って、普通なんですよね? それじゃあ、強い力を持っているところを見せるというのは、なかなか……あと、シャルロッテさんの家に仕えているというのならば、家の権力というのも、なかなか……」

「そうなのよね……」


 アリーシャも問題点を自覚していたらしく、苦い顔をした。


 一方で俺は、アリーシャの提案がいいのでは? と思うようになっていた。


「でも、悪くない案だ。強い力を見せつければ、今までのようなことはしなくなると思う。フィア自身の力で、この逆境を跳ね返す必要が、ある程度はあるからな。で……トドメにシャルロッテが釘を刺せば、完璧だと思う」

「そういうからには、強い力を見せる、っていうところ……レンは、なにか考えがあるわけ?」


 シャルロッテが問いかけてきた。

 もちろん、無策でこんなことは言わない。


「俺が魔法を教えてみるよ」

「えっ、レンが?」


 シャルロッテが驚いた。

 他の二人も驚いていた。


「こう見えて、魔法を教えることは得意なんだ」


 前世では、賢者として活動していたからな。

 誰かに魔法を教える機会も多々あった。

 一流の魔法使いに育てる、とまでは言えないが、それなりの力を持つまで成長させることは、十分に可能だと思う。


「そうですね、お兄ちゃんなら問題ありませんね!」

「そうね、レンなら平気っぽいかも」

「ふふん、あたしのライバルなら大丈夫ね!」


 三人とも、謎の信頼を寄せてきた。


「問題は、フィアの力をどこで見せつけるか、っていうところなんだよな」


 絡まれた時にやり返すわけにはいかない。

 それだと、ただの私闘になってしまい、学院から罰を受けてしまうかもしれない。


 合法的に相手を叩きのめすことができて……

 なおかつ、同じようなバカが現れないように、なるべく多くの人に見せたいところではある。


 そんな感じで、俺の考えを説明すると……


「それなら、ぴったりの場があるわ!」


 シャルロッテが胸を張り、高らかに言う。


「ぴったりの場所?」

「魔法大会よ!」

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