53話 ライバル認定
翌日。
食事を終えた後、みんなで学院に登校した。
といっても、すぐ近くにあるので、すぐに学院についてしまう。
バラバラに登校してもよさそうなものだけど……
エリゼに猛反対された。
「いいですか? お兄ちゃん。一緒に登校する……それは、全ての女の子の……妹の憧れなんです! その夢を壊そうとしないでください。そんなことをしたら、お兄ちゃん失格ですよ!?」
……というような感じで、マジ説教された。
最近、妹の考えていることがよくわかりません。
誰か相談にのってくれませんか?
まあ、エリゼのことはいいとして。
とにかくも、俺達は一緒に登校をして……
そして、それぞれの教室へ移動した。
俺とフィアは同じクラスなので、並んで教室へ。
ただ、一緒にいると噂されるかもしれない……とフィアが言い出して、教室の手前で別行動をとることになった。
そこまで気にしなくても……と思う。
ルームメイトであることは、すでにバレているのだから。
でも、フィアにとっては大変なことかもしれないし、今は言うとおりにしておいた。
そのうち、気にすることなく、一緒に教室まで行けるようになるといいな。
そんなことを思いながら、適当なところで軽く時間を潰して……
それから、教室へ移動する。
「おはよう」
「「「おはよーーーうっ!!!」」」
教室に入り、挨拶をすると、倍以上の声量でクラスメイト達に挨拶をされた。
突然のことに、驚いてしまう。
「お、おはよう……?」
「ねえねえ。レン君に聞きたいことがあるんだけどさ」
一人がそう言って……
その他のクラスメイトが、次々と距離をつめてきた。
な、なんだ?
俺が、なにかしたか? なにもしてないよな?
「今朝、レーナルトさんと一緒にごはんを食べていたよね?」
「あー、うん。そうだけど?」
「でさでさ、その時に一緒にいた美少女二人はだれ?」
「もしかして、レン君の彼女!?」
「えっ、二人も!?」
「っていうか、そうだとしたらショックなんだけど。ちょっといいなあ、って思っていたのに!」
わいわいきゃーきゃーと、適当な話をするクラスメイトたち。
女の子って、そういう話がホントに好きだなあ……
将来、エリゼもこうなるんだろうか?
「一緒に食べていたのは、妹と友達だよ」
「「「妹さん!」」」
なぜか、ものすごい勢いで食いつかれた。
「赤い髪の子と銀髪の子、どっちが妹さん!?」
「はいはーいっ。私、赤い髪の子が妹さんだと思うな。ちょっとひねくれた感じがしてたけど、でもでも、レン君のこと頼りにしてるっぽかったし」
「んー、私は銀髪ちゃんの方だと思うなー。レン君に向ける目は、まさに妹のソレだったね。秘められた想いがあって……そして、燃え上がる禁断の恋!」
「えっと……?」
ちょっとなにを言っているかわからない。
「妹は、銀髪の方だけど……」
「あー、そっちかー。惜しい!」
「っていうか、ちょっと考えればわかることか。レン君も銀髪だもんね」
「妹さんと仲が良いねー。普段からあんな感じなの?」
一つ質問に答えると、さらに十の質問が飛んでくる。
そんな感じで、一向に話が終わる気配がない。
女の子って、本当に元気だなあ。
でもまあ、なんだかんだで、こうして話ができることはうれしい。
最初は、珍獣みたいに扱われていたからな……
少々かしましいものの、でも、仲良くなれた証拠だと思えば気にならない。
「ねえ、ちょっといい?」
凛とした声が響いた。
見ると、シャルロッテの姿が。
その身にまとう雰囲気にあてられたかのように、自然とクラスメイトたちが左右にずれる。
そうしてできた道を歩いて、シャルロッテが俺のところへ。
女王さまらしく、なかなか壮観な光景だ。
「あたしのために、ちょっと時間を作りなさい!」
ビシっと指をさして、そう言う。
「うん? どういう意味だ?」
「鈍いわね。話したいことがあるから付き合いなさい、っていう意味よ。それくらい察しなさいよ」
わかるか、そんなもん。
「というわけで、コイツは借りていくわね」
「えっ、ちょ……!?」
問答無用で教室の外へ連れて行かれてしまう。
クラスメイトの一部は、ずるーい、なんて言っていたけれど、誰もシャルロッテを止める気配はない。
女王さまのすることに逆らうことはできないみたいだ。
「えっと……それで、話っていうのは?」
人気のない廊下の端に連れてこられた。
まさか……生意気な俺を教育するつもりか!?
だとしても、おとなしくやられてやるつもりはない。
返り討ちだ!
「んー、なんていうのかしら。まあ、複雑な話じゃないんだけど……って、なんであんた身構えているのよ?」
「ん? 教育じゃないのか?」
「はぁ? 教育?」
どうやら違ったみたいだ。
「なら、どうしてこんなところに?」
「それは……他の人に聞かれたくないし」
なぜか、シャルロッテが赤くなる。
どういうことだろう?
考えてみる。
人気のない廊下、二人きり、頬を染める……
まさか、告白!?
「あんた、変なこと考えてない?」
シャルロッテにジト目で睨まれた。
「まあ、超絶かわいいシャルロッテちゃんに呼び出されたら、勘違いしても仕方ないかもね。ふふん、あたしって罪な女」
「そんなことを言うために、わざわざ二人きりに?」
「違うわよ!」
なら、早く本題に入ってほしい。
「確か……あんた、フェン・ストレイー、って言ったけ?」
「レン・ストラインだ」
「ああ、そうそう。レン・ストラインね。ちゃんと覚えていたわよ?」
ウソだ。
絶対に忘れていた。
昨日、それなりに話をしたっていうのに……
それなのに俺の名前を覚えていなかったのか。
シャルロッテは鳥あたまなのだろうか?
「光栄に思いなさい!」
シャルロッテは胸を張りながら、力強く言い放つ。
「レン・ストライン! あんたを、あたしのライバルに認定してあげるっ!!!」
「……はい?」
ライバル認定?
それは……どういう意味なのだろう?
状況を理解できなくて、思わず間の抜けた声をこぼしてしまう。
「えっと……それは、どういう意味なんだ?」
「どうもこうも、そのままの意味よ。あんたを、あたしのライバルに認定してあげる。ふふーんっ、光栄に思いなさい。このシャルロッテちゃんのライバルに認定されるなんて、一生に一度あるかないかよ。感激して、涙を流してもいいのよ?」
「はあ……」
「昨日の男だからとか、どうせダメとか……そういう言葉は撤回してあげる。代わりに、あたしのライバルに認定してあげる」
シャルロッテが手を差し出してきた。
「これからは、良きライバルとして、お互いに切磋琢磨していきましょう!」
「……そういうことなら、大歓迎だよ」
シャルロッテの握手に応じた。
「あっ、それから、あたしのことはシャルロッテでいいから。ブリューナクって呼ばれると、ライバルって感じがしないものね。代わりに、あたしもレンって呼ばせてもらうから」
「わかったよ。シャルロッテ」
「じゃ、そういうことで。あたしのライバルらしく、これからもがんばりなさい」
じゃねー、と気軽に言って、シャルロッテは先に教室へ戻った。
「ライバル認定……か」
思わぬ展開になったけれど……
そのおかげで、シャルロッテの人柄について理解することができたような気がする。
わがままで、キツイところはあるものの……
決して悪いヤツじゃない。
むしろ、あそこまで突き抜けていると、逆に好感が持てるほどだ。
昨日の話で、そのことを理解できた。
……それゆえに、謎が残る。
「シャルロッテがフィアをパシらせるなんて、ありえるのか?」
今話した限り、そういうことはしないように見えたんだけど……
どういうことだろうか?
謎が深まるのだった。
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