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46話 女王さまは負けられない

「わーーーっ!」


 ふと、離れたところで歓声があがった。


 見ると、シャルロッテの姿が。

 その手の平の上で、マジックコープがふわふわと浮いている。

 一定量の光が放たれていて、安定した動きだ。

 ローラ先生並に上手なのではないか?


 そんなシャルロッテの技術に、周囲の生徒達は驚き、尊敬の眼差しを向けていた。


「ふふーんっ、あたしにかかればこれくらい朝飯前よ!」


 彼女達の視線を受けて、シャルロッテは得意げに笑った。


 そんなことをしながらも、マジックコープは未だに安定している。

 彼女の高い技術、強い魔力がうかがえる瞬間だった。


「すごいね、シャルロッテさん!」

「私達、そんな風にできないよ。さすがだね!」

「ねえねえ、どうしたらそんな風にできるの?」


 クラスメイト達が彼女のところへ殺到する。


「ふふふふふーーーんっ、まあ、これくらいあたしなら余裕っていうか? 当たり前っていうか? まあ、楽勝よね!」


 シャルロッテは、ますます得意げな顔になった。

 調子にのってるなあ……

 でも、なんというか、不思議と憎めないところがある。


 アラムと違い、自分に強い自信を持っているからだろうか?

 その自信は彼女の魅力を引き立てることになり、自然と、ある種のカリスマ的なオーラを出していた。


「むむっ、レン君。ライバル出現だよ!」

「ルシア、なにか変なことを考えていないかい?」


 ラーナが困ったように言うが、ルシアは彼女の言葉を聞いていない。


 ルシアは、すぅっと息を吸い込んで……


「わぁーーー、レン君、すごいねーーー!!! シャルロッテさん以上に、マジックコープをうまく扱っているよ!!!」


 大声でとんでもないことを口にした。


「えっ、なになに!?」

「レン君って、シャルロッテさん以上に上手なの?」

「見て! あれだけ輝いているのに、マジックコープはぴくりとも動いてないわ」

「ホントだ……まるで、時間が止まっているみたい……」

「もしかしてもしかしなくても、ホントにシャルロッテさん以上?」

「ねえねえ、レン君。どうやって魔力をコントロールしているの? お姉ちゃんに、ちょーっと教えてくれない?」


 今度は、クラスメイト達はこちらに殺到してきた。

 その様子を見て、ルシアが自分のことのように得意そうにした。


 って、こんなことをしたら……


「ぬぐぐぐっ……!」


 案の定、シャルロッテがものすごい顔をしていた。

 俺のことを、キッと睨みつけている。

 まるで親の仇を見ているようだ。


 確かに、活躍の場を奪うようなことをしてしまったが……

 なにも、そこまで睨まなくても。


 女王さまらしく、シャルロッテはプライドが高いんだなあ。

 面倒なことにならなければいいのだけど。


「ふんっ」


 シャルロッテはおもしろくなさそうな顔をしつつも、こちらに絡むことはなく、取り巻き達と一緒に訓練を続けた。

 先の実技訓練で独断専行をしているから……

 同じことを続けたら、さすがにまずいと判断したのかもしれない。


「ふぅ……」


 シャルロッテは体の力を抜いて、マジックコープへ注ぐ魔力を消した。

 マジックコープは軽く揺れて、シャルロッテの手の平の上に落ちる。

 どうやら、シャルロッテの番は終了みたいだ。


「さあ、次はあなたがやりなさい」


 シャルロッテは、取り巻きの一人……フィアにマジックコープを渡した。


「はっ、はひ!」


 フィアは、あたふたしながらマジックコープを受け取った。

 直接、シャルロッテに手渡されたこと。

 いよいよ、マジックコープを使った訓練に入るということ。

 二つのことで、いつも以上に緊張しているみたいだ。


 そういう性格なのだから仕方ないのかもしれないが……

 そこまで緊張する必要はないと思うんだけどな。


 俺達は、所詮、学生だ。

 失敗するのが当然であり、そこから色々なことを学ぶことができる。

 なので、失敗を恐れていたら意味がないのだけど……


「わっ!? わわわ、あうううっ!?」


 フィアは失敗することを恐れているらしく、必要以上に力が入っていた。 

 その結果……


 ぽーん……と、マジックコープは明後日の方向へ飛んでいってしまう。


「もうっ、なにをしているのよ? あたしの前で無様なところを見せないでちょうだい」

「す、すみませんすみませんっ」

「あんた、魔力が足りないだけじゃなくて、運動神経も悪いんじゃない? でないと、そんな失敗はしないと思うわ」

「うぅ……め、面目ないです……」

「あんたが失敗すると、あたしも恥をかくことになるの。そのこと、ちゃんと理解してる?」

「は、はいっ……す、すいません……」

「言葉じゃなくて、行動で示しなさい! ほらっ、シャキっとしなさい! 大丈夫、あんたならできるわ! なんだかんだで、しっかりしているからね。私は信じているから」


 フィアの指導をするシャルロッテ。

 その言動は厳しいものの、陰湿な感じはしない。

 自分なりに、これが正しいと思い、そう信じて行動しているのだろう。


 ただ……ちょっと言い方がキツイんだよな。

 陰湿さがなかったとしても、時と場合により、それは鋭い刃となる。


 女尊男卑のこの世の中。

 女として生を受けたシャルロッテは、家柄もあり、自然と言動が鋭く、きついものになっていたのだろう。

 それは、同性に対しても同じで、加減するということを知らないらしい。


 叩かれて伸びる子もいるが……

 どう見ても、フィアは違う。

 彼女は褒められて伸びるタイプだ。

 それなのに、あんな言動をとっていたら、余計に追い込む結果になってしまう。


「ちょっと失礼」

「あっ、レン君!?」


 ルシアとラーナ、その他のクラスメイト達を置いて、シャルロッテのところへ向かう。


「シャルロッテさん」

「……あら、ストラインじゃない。なにか用? っていうか、名前で呼ばないでくれる? あたしのことを名前で呼んでいい許可なんて、あんたには出してないわ」


 めんどくさい女王さまだなあ。


「じゃあ、ブリューナクさん」

「なによ」

「そういう言い方は、よくないと思うぞ」

「あんたにそんなことを言われる筋合いなんてないんだけど。大体、あたしが男であるあんたをどう呼ぼうが勝手でしょう? なによ。それともあんた、あたしにちやほやされたいわけ?」

「違う違う。俺じゃなくて、フィアのことだよ」

「フィアの?」


 自分がきついことを言っているという自覚がないらしく、フィアの話になると、シャルロッテはきょとんとした。


「彼女に対してキツイ指導は、逆効果だと思うぞ。フィアのためを思うなら、もうちょっと言葉を選ぶべきだ」

「……余計なお世話よ。男であるあんたの指図なんて受けないわ」

「指図っていうわけじゃなくて、俺は、ブリューナクさんやフィアのことを気にしているだけで……」

「うるさいうるさいうるさーーーいっ!!!」


 癇癪を起こした子供のように、シャルロッテが爆発した。

 まあ、俺と数歳しか変わらないから、子供といっても過言ではないのだけど。


「あんた、さっきからうるさいわよ! このあたしのやることに口を出すなんて、生意気よっ!」


 シャルロッテは、ビシッとこちらに指を突きつけてくる。

 そして、そのままの体勢で言い放つ。


「男であるあんたなんかに、そんなことを言われる筋合いはないわ! 余計な口を出さないでくれる? いいわねっ!? でないと、後悔するわよ!」

「具体的に、どう後悔するんだ?」

「えっと、それは……」


 気になって尋ねてみると、シャルロッテが言葉に詰まる。

 しばし、考えるような間を挟んで……


「と、とにかくひどいことになるのよ! 絶対に後悔するんだからっ」


 これ、何も考えてないやつだ。


「ふんっ……みんな、行くわよ!」


 取り巻きたちに声をかけて、シャルロッテは俺から離れていった。

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