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45話 教えて!

 俺と組んだのは、メガネをかけているルシアと、ソバカスが特徴的なラーナだ。


「レン君、よろしくね!」

「よろしく」


 二人とも気さくな性格をしているらしく、笑顔で握手を求めてきた。

 適当に組んだだけなのだけど、正解だったかもしれない。

 俺も笑顔で握手に応じる。


「うふ、うふふふ……男の子の手って、こんなふうになっているんだ……若いから、とてもスベスベね」


 なにやら、握手したまま手を離してくれない……


「こら」

「あいたっ」


 ラーナが妙な顔をして、興奮している様子のルシアの頭を叩いた。


「レン君が困っているだろう。やめないか」

「ちぇ、もうちょっと堪能していたかったんだけど……残念」


 濃い二人だなあ。


「とりあえず、始めようか。誰からやってみる?」

「はいはいーいっ、私、やってみたい!」


 ルシアがまっさきに手を上げた。

 ラーナも異論がないみたいなので、ルシアにマジックコープを渡した。


「えっと……どうやるんだっけ? 魔力を流し込めばいいんだっけ?」

「魔力を注げば、マジックコープが反応して宙に浮きますよ。あとは魔力量を調整しつつ、できる限り、宙に浮かせてみてください」


 ローラ先生がやってきて、そう説明してくれた。

 あちこちを見て回り、フォローしてくれているみたいだ。


「むむむっ、適切な魔力を……えいっ!」


 ルシアの手の平に魔力の粒子が集まり……

 そして、マジックコープが輝いて、ふわりと浮いた。


「おおおぉーーー、浮いた! 浮いたよ!?」

「すごいね」


 ラーナと一緒に、パチパチと拍手をする。

 ただの訓練とはいえ、うまくいくとうれしいものがあるんだろうな。

 俺も早くやってみたい。


「っと……ととと!?」


 異変はすぐに起きた。

 ルシアが難しい顔をして、その変化に反応するように、手の平の上に浮いているマジックコープの輝きが不安定になる。

 光を放ったり、暗くなったり……

 さらに、左右にぐらぐらと揺れるようになる。


「こ、これは、なかなかっ……おっ、おおお!?」


 動物のように、マジックコープがガタガタと暴れ始めて……

 パーンッ! という音と共に、明後日の方向に飛んでいった。


「たはーっ、ダメだぁ……私にはコレが限界っぽい」


 ルシアがその場にへたりこんでしまう。

 見ると、汗をかいていた。

 それくらいに辛いことだったのかもしれない。


「ふむ。それほどまでに難しいのか……レン君。すまないが、次は私でいいか?」

「ああ、構わないけど」

「ありがとう」


 興味をそそられたらしく、ラーナが次の名乗りをあげた。

 飛んでいったマジックコープを拾い、チャレンジする。


「んっ」


 ラーナの魔力が流し込まれて、マジックコープがふわりと浮いた。

 ルシアの時よりも輝きが強い。

 それに、動きも安定している。


 これならいけるか?


 ……と思ったのだけど。


「くっ……こ、これは……!?」


 一分ほどしたところで、ラーナが苦しそうな顔をした。

 片手を支えにして、なんとかこらえるものの……


「うあっ!?」


 長くは続かず、マジックコープが飛んでいってしまう。


 ラーナはルシアと同じように汗をかいていて、肩で息をしていた。

 どうやら、思っていた以上に厳しい訓練のようだ。


「おつかれさま」

「ああ、ありがとう……」

「やっぱり、難しいのか?」

「そうだね、これはなかなか……魔力のコントロールにとても繊細なものを要求されて……さらに、ごっそりと魔力が吸い取られていく。どうやら、私では一分が限界のようだ。まあ……他のみんなも同じみたいだから、これくらいが限度なのかもしれないね」


 少し離れたところで同じ訓練をしているクラスメイト達を見ると、ルシアやラーナと同じように、一分ほどしたところでマジックコープを飛ばしていた。

 ラーナが言ったように、そこが限界なのかもしれない。


 そうなると……

 俺は、3分にチャレンジしたいところだ。

 前世が賢者なのだから、それくらいはやっておかないとな。


「それじゃあ、俺の番だ」


 マジックコープを拾い、手の平に乗せる。

 息を吐いて、吸って……

 集中をしてから、魔力を注ぎ込んだ!


「ふっ」


 ふわりとマジックコープが浮いた。

 白く明るい光を放つ。


「おぉ!?」

「こ、これは……」


 ルシアとラーナの驚く声が聞こえた。


 マジックコープは今までにない輝きを放ちながら、まるで静止しているかのように、ピタリと宙に浮いていた。

 そのままの状態で一分が経過した。


「……」


 特に疲労などは感じない。

 このまま問題なくいけそうだ。


 さらに一分、二分、三分が経過して……五分が経過した。

 それでも、俺はマジックコープをキープしていた。

 ここで飛ばしてしまう、というオチはない。


 確かに、繊細な魔力コントロールを要求されるし、消費される魔力も膨大だ。

 それでも、なんとかなる範囲だった。

 これなら10分はいけるかな?

 なんてことを思ったのだけど……


「すっ……すっごーーーい!!!」

「うわっ」


 突然、ルシアが抱きついてきて……

 その反動と驚きで、マジックコープが飛んでいってしまう。


「ちょっ……なにを……うぷ!?」

「あーもうっ、すごいなあ! それなのに、かわいいなあ!」


 ルシアが俺を胸に抱く。

 ルシアは15歳なのだけど、それなりに成長がよろしくて……

 やわらかい膨らみに顔が埋もれてしまう。


 幸せだ……

 でも、息ができない。

 天国と地獄の両方を同時に味わうことに。


「ルシア、それくらいにしておくんだ。レン君が苦しそうだぞ」

「あっ……ご、ごめんね。つい興奮しちゃって」

「いや。こちらこそありがとう」

「うん? なんで、レン君がお礼を言うの?」


 しまった。

 ついつい、正直な本音がこぼれてしまった。


「いや、気にしないで」

「そっか……まあいいや」

「それにしても、レン君はすごいんだな。初めてなのに、五分もあの状態をキープするなんて」


 ラーナが感心したように言う。


「どうすれば、そんなに上手にできるんだい?」

「どうすれば、って言われてもなあ……」

「よかったら教えてくれないか?」

「あっ、それナイスアイディア! 私達に教えてくれない?」

「え?」


 ルシアとラーナが俺の手を取り、お願いをする。


 教えてほしい、と言われてもな……

 俺は我流だから、人に教えられるような知識はない。


 でも……そうだな。

 時には、こういうことも必要なのかもしれない。


 学ぶだけではなくて、人に教える……

 そうすることで自分の中の知識を整理されて、自分自身も学ぶことができるかもしれない。

 決して無駄な行為ではないだろう。

 そんなことを思った。


「わかったよ。俺でよければ」

「やったー!」

「ありがとう」


 今度は二人に抱きつかれてしまうのだった。

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