表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/138

42話 気になるあの子

 午前の授業が終わり……

 昼休みが訪れた。


「レン君」


 クラスメイトに声をかけられた。


「お昼、一緒に食べない?」

「あ、こやつ、また抜け駆けしてるー」

「ねぇねぇ、それよりも私達と一緒に食べない? きっと楽しいよ」


 なぜか、クラスメイト達からあれやこれやと昼に誘われる。

 朝は、珍獣のように遠巻きに見られていただけなのに……


 どうやら、午前の授業……というか、シャルロッテとの試合がきっかけになり、彼女達に受け入れられたみたいだ。

 まあ、受け入れるというか、好奇心を刺激した、と言った方が正しいのかもしれない。

 みんな、俺という初めての男の魔法使いに興味があるらしく、好奇心を隠そうともしていなかった。


 これはこれでよしとする。

 一人よりはマシだからな。


 とはいえ、今日は彼女達に応えることはできない。


「ごめん。約束があるんだ」

「そうなんだ。残念」

「約束って、なになに? もしかして、彼女?」

「きゃーーー!!!」


 一人がそんなことを問いかけてきて、周囲が色めき立つ。

 女の子って、そういう話が好きだよなあ。

 苦笑しつつ、首を横に振る。


「違うよ。妹と友達だよ」

「へー、レン君って妹さんがいるんだ」

「それに他のクラスの友だち……むむむ、気になるわね」

「まあ、そういうことなら仕方ないか。待ち合わせは食堂? 場所はわかる?」

「ああ、問題ない」

「今度は一緒にお昼食べようね」

「約束だからね?」

「いってらっしゃーい」


 クラスメイト達に見送られて、俺は教室を後にした。




――――――――――




 学食へ移動して、日替わり定食を注文した。

 ここの学食は、先に料理を注文して、それから席を確保するシステムのようだ。


「あっ……お兄ちゃん、こっちですよ」


 聞き慣れた声に振り返ると、エリゼとアリーシャが見えた。

 二人ともすでに注文を済ませているらしく、席についている。

 俺の分の席も確保してくれていたみたいだ。


「おまたせ」


 エリゼの隣に座る。

 ちなみに、対面にアリーシャが座っている。


 四人がけのテーブルなので、あと一人は問題ないのだけど……

 周囲の人はジロジロと見てくるだけで、誰も座ろうとしない。

 やっぱり、男の俺が珍しいんだろうなあ……

 クラスでは受け入れられたけど、学院全体で見たら、まだまだ俺は異物にすぎないからな。


「お兄ちゃんは、何を頼んだんですか?」

「日替わり定食かな」

「お肉とスープとパン……おいしそうですね」

「エリゼとアリーシャは?」

「私は、トーストセットですよ。甘いジャムと果物がついてるんです」

「あたしは、炒めごはん。ごはんがパラパラに炒められていて、けっこういけるわよ」


 それぞれの好みが表れていた。


「それじゃあ、いただきます」

「「いただきます」」


 みんなで一緒にごはんを食べ始めた。


「二人とも、クラスはどうだった? エリゼとアリーシャは、同じクラスなんだよな?」


 エリゼとアリーシャは、俺とは違い、上位クラスの『マーセナル』だ。


 エリゼは優れた治癒魔法を使うことができるし……

 アリーシャは、魔法剣という隠し玉を持っている。

 そのことを考えれば、納得の結果だ。


 ただ、うまく馴染めるかどうか……そのことが心配なんだよなあ。

 アリーシャは強気な性格をしているから、あまり心配はしていないんだけど……

 エリゼは、やや押しに弱いところがあるからな。


 そこにつけ入るようなクラスメイトがいたら?

 使いっ走りをさせるようなヤツがいたら?


 ……いかん。

 想像したらムカムカしてきたぞ。


「私達は、何も問題はありませんよ。ね、アリーシャちゃん」

「ええ、そうね。うまくやっていると思うわ。友達もできたし」

「でもでも、お兄ちゃんと同じクラスじゃないのが残念です……寂しいです……お兄ちゃん!」

「ん?」

「今のうちに、お兄ちゃん成分を補給させてください」

「……なんだ、それは?」

「お兄ちゃん成分は、お兄ちゃん成分ですよ。それがないと、妹は寂しくて死んじゃいます」


 エリゼが手を繋いできた。


「えへへ……お兄ちゃんの手、温かいです♪」


 よくわからないが……

 妹さまがごきげんなので、よしとしておこう。


「それで、クラスの方はどうなんだ? 馴染めたんだよな?」

「はい。問題ありませんよ」

「そうなのか……ほっ」


 うまくやっていると聞かされて、安堵する。


 ……いや、待てよ?

 でも、俺に心配をかけないためにウソをついているという可能性も……


 今度、エリゼの様子をこっそりと確認した方がいいかもしれないな。

 本気でそんなことを考える俺だった。


「あたし達のことよりも、レンの方はどうなの?」

「ん? 俺?」

「この学院で……というか、この世界で、唯一の男の魔法使いなのよ? 注目されるのが当たり前だろうし……うまくやれているの?」

「んー……」


 シャルロッテに絡まれたことを思い返した。

 あれは問題といえば問題だけど……

 でも、他のみんなには受け入れてもらっているんだよな。


「それなりにうまくやっているよ」

「そうなの?」

「最初はクラスメイト達も戸惑っていたみたいだけど……まあ、一緒に授業を受けるうちに、それなりに仲良くなれたと思う」

「ふーん……そうなんだ、女の子のクラスメイトと仲良くなれたんだ……ふーん」


 なぜか、アリーシャの視線がきつくなる。

 なんでだ?

 俺、何も変なことは言っていないよな?


 ……とにかくも。


 お互いにクラスの話をして……それから、授業などの話をして、学院生活についての話を交わす。

 こうして、学食でごはんを食べながら話をするなんて、前世を含めても初めての経験なので、けっこう楽しい。


 そうやって昼休みを満喫していると、視界の端に見覚えのある姿が見えた。


「……」


 フィアだ。

 いつものように……というのも失礼かもしれないが……おどおどとした表情で、食堂に併設されている購買へ向かう。

 そこで、一人分とは思えないほどのパンを買っていた。


 なんだろう……?

 もしかして、パシらされている?

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、

評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆ お知らせ ◆

ビーストテイマーのスピンオフを書いてみました。
【勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強の少女達ともふもふライフを送る】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ