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41話 珍獣からクラスメイトに昇格

「きゅぅ……」


 俺の魔法が直撃して……

 魔力残高がゼロになったシャルロッテは、目を回してその場で倒れた。


「シャルロッテ様!?」

「大丈夫ですか!?」

「あ、あわわわ……」


 慌てた様子で、彼女の取り巻きらしき女の子達が観客席から駆け下りてきた。


 って……最後の一人は、隣の席のフィアじゃないか。

 おとなしい性格をしているから……まあ、第一印象で確定というわけじゃないが……シャルロッテの取り巻きなんて似合わないと思うのだけど。


「みんな、落ち着いてください。シャルロッテさんは、魔力がなくなり、ただ気絶しているだけですよ」


 先生が舞台に上がってきた。

 念のために……という感じで、シャルロッテの様子を確認する。

 特に問題はなかったらしく、顔色が変わることはない。


「まあ、このままというわけにはいかないですね。すみませんが、誰かシャルロッテさんを医務室に……」

「それなら私達が!」

「じゃあ、お願いしますね」


 取り巻きの女の子達が立候補して、シャルロッテが医務室へ運ばれていく。

 フィアも一緒だ。

 ただ、あまりシャルロッテを心配しているような様子はない。

 どちらかというと、ただ、他の二人と合わせているだけのような印象を受けるが……?


「レン君」

「あ、はい」


 先生に声をかけられて、そこで考えが途切れた。


「見事な試合でした」

「え?」

「あえて攻撃を受けることで、シャルロッテさんに魔法を連打させて、魔力の枯渇を誘う。そして、トドメの一撃……全て、レン君の計算によるものなのですね。男の子なのに魔法が使えるというだけではなくて、あれほど高い戦術を組み立てることができるなんて……正直に言うと、先生は驚きました。とてもすごいと思いますよ」

「あ、はい」


 最初から全部計算ずく……っていうことはない。

 ただ単に、その場その場で思いついただけだ。


 素直にそのことを口にしようとしたのだけど……


「聞いた聞いた? 今の試合、全部計算ずくなんだって!」

「すごいね……あえてシャルロッテさんの攻撃を受けるなんて、普通は思いつかないし」

「というか、聞かされていたことだけど、レン君って本当に魔法が使えるんだね……しかも、けっこう強い?」

「うーん、かわいいだけじゃなくて、かっこよくもあるかも!?」


 ローラ先生の話を聞いたクラスメイト達が、キラキラした眼差しを送ってきた。

 さっきまでは、珍獣扱いされていたのだけど……

 今はまるで違う。


 力を示すことができたから……なのかな?

 本当のことを話したら、失望させてしまうかもしれない。

 そう考えると、言い出すことはできなかった。


 まあ、いいよな?

 何も考えてなかったわけじゃないし、シャルロッテの魔力が切れることを狙ったことは確かだし……

 これでよし。

 そういうことにしておこう。


「それじゃあ、次の試合は……」

「先生! 私、レン君と戦ってみたいですっ」


 まだ名前を覚えていないクラスメイトが、そんなことを言い出した。


 一瞬、シャルロッテの敵討ち? なんことを思うのだけど……

 彼女は明るい顔をしていて、そんなことを考えているようには見えない。

 どちらかというと、俺との試合を楽しみにしているみたいだ。


 きちんと魔法が使えることを示すことができたから、クラスメイトとして認められた……というところだろうか?

 そして、初めての男の魔法使いに興味津々……という感じか?


「あっ、抜け駆けされた!?」

「はいはーい! 私もレン君と戦ってみたいですっ」

「ここで乗らなければ、いつこの波に乗る!? というわけで、私も私もっ」


 次々と立候補するクラスメイト達。

 みんなに認めてもらったみたいで、うれしいのだけど……

 俺一人で相手をするとなると、さすがにしんどい。


「はいはい、落ち着いてください」


 ローラ先生がパンパンと手を叩いて、みんなを落ち着かせた。


「レン君は、たった今試合を終えたばかりなんですよ? それなのに、続けてみなさんの相手をできるわけないでしょう?」


 む。

 できるわけないと言われるのは、なんか悔しいな。

 まだ魔力は残っているから、問題は、精神的な疲労だけだ。

 連戦できないことはない。


「先生。俺なら、まだ戦えますよ」

「レン君……」


 ローラ先生は驚いた顔を作り……

 次いで、感心するような表情を浮かべた。


「あれだけの戦いをした後なのに……みなさんのために、まだがんばろうというのですね? その心は素晴らしいと思いますが、無理をしてはいけませんよ」

「いや、別に無理というわけじゃなくて……」

「いえ、いいですから。それ以上は言わないでください」

「はあ……」

「レン君は魔法を使える男の子という、特別な存在というだけではなくて……みんなのためにがんばることができる、立派な男の子でもあるんですね。先生、感動しました」

「えっと……?」

「でも、無理をする必要はありませんからね? はい……みなさんも、レン君にこれ以上負担をかけないようにしましょう。レン君は素晴らしい精神の持ち主ですから、みなさんに応えたい、と思ってしまうみたいですし」


 ローラ先生の言葉に、クラスメイト達は顔を見合わせて……

 ちょっと申し訳なさそうな顔をしながらも、親しみのある表情をこちらに向けてきた。


「ごめんね、レン君。私達、ちょっと考えなしだったかも」

「男の子が本当に魔法を使えて……それだけじゃなくて、シャルロッテさんにも勝っちゃうから、浮かれてたのかも」

「私達は、私達だけでやることにするね。でもでも、レン君が応えようとしてくれたのは、すっごくうれしかったから!」


 よくわからないが……

 良い方向に解釈されたみたいだ。

 クラスメイト達に受け入れられたことを実感する。


 よかったよかった。

 さらなる力を求めて学院に入学したものの……

 ぼっちは勘弁してほしいからな。

 そんな状況に陥ったら、力を身につける前に孤独死してしまう。


「はい。そういうわけで、レン君は見学して、体を休めてください」

「わかりました」

「他のみなさんは、順々に試合をしていきますよ。まずは……」

「あ、先生」

「はい? なんですか?」

「俺も近くで観てていいですか? 観客席より、こっちにいた方がみんなの魔法をよりよく観察することができるので」

「ふふっ、レン君は勉強熱心なのですね。見て覚えようというわけですね?」


 その通りだった。


 この時代の魔法が衰退していることは理解しているのだけど……

 それでも、学べることはあるかもしれない。


 例えば、シャルロッテの魔法。

 彼女は、俺の予想以上に詠唱が速かった。

 才能なのか特技なのか、それはまだわからないが……


 シャルロッテとの戦いを経て、この時代の魔法も研究する価値がある、と判断した。

 まだまだ見限るのは早い。

 なので、クラスメイト達の戦いを見れば、何かしら強くなるためのヒントを得ることができるかもしれない。


「わかりました。では、先生と一緒に審判席にいきましょうか」

「はいっ」


 というわけで、ローラ先生と審判席に移動した。

 審判席はリングを見下ろせるような高い場所に設置されていて、さらに、複数人が入っても問題ないくらいの広さがあった。


 うん。

 ここなら、クラスメイト達の戦いをよく見ることができそうだ。


「それじゃあ、始めてください」


 ローラ先生の合図で、次の試合が始まった。

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