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22話 妹がついてきた

 12歳になった。


 念のために、長期に渡りエリゼの様子を観察してきたのだけど……

 元気になりすぎた、という点を除けば特に問題はなくて、無事に完治した。

 時間がかかったけれど、そんな結論を下すことができた。


 これで、憂いが消えた。

 全ての問題が解決されて……

 俺は、エレニウム魔法学院の門を叩いた。


 とはいえ、誰でも入学できるわけではない。

 入学するためには試験を乗り越えないといけない。

 なので、俺は試験を受けることになり、試験会場を訪ねた。


 試験会場は、学校の訓練場の一つだ。

 野外に設置された訓練場で、小さな村ならすっぽりと入ってしまうくらいに広い。

 訓練場の端にいくつか倉庫や建物が設置されていた。

 その近くに、訓練用の木人がずらりと並んでいる。


 そんな訓練場に、100人ほどの受験者が集まっていた。

 まだ試験は始まっていないものの……

 ここにいる者は、皆、ライバルとなる。

 受験生達の間にピリピリとした空気が漂っていた。


 そんな中、俺はというと……


「お兄ちゃん、お兄ちゃん。ここにいる人、みんな、受験生なんですね。たくさんいますね」

「……そうだな」

「私、ちょっと心配になってきました……」

「……そうだな」

「でもでも、お兄ちゃんと一緒にいるために、私、がんばりますね!」

「……そうだな」


 妹が元気な笑顔で、ぐっと拳を握りしめて気合を入れていた。


 ……どうしてこうなった?


 エリゼが元気になったことで、晴れて、試験を受けることになったのだけど……

 そのことを知ったエリゼは、『私も試験を受けます!』と言い出したのだ。


 アラムは慌てた。

 父さんと母さんも慌てた。


 完治したとはいえ、ついこの前まで、エリゼは体が弱かったのだ。

 学院に通うなんてありえない。


 みんなに反対されるのだけど……

 頑固なところは誰に似たのやら。

 エリゼは周囲の反対を押しきり、最終的に、俺と一緒に試験を受けることになってしまったのだ。


 そして、もう一つ。

 まったく予想していなかった問題が起きた。


「ふん。有象無象が多数いるわね。うっとうしいわ」


 アラムが不機嫌そうにしていた。

 俺とエリゼがエレニウム魔法学院の入学試験を受けると聞いたアラムは、私も! と声をあげた。

 アラムはストライン家を継ぐのだけど……

 エリゼを俺と二人にさせるわけにはいかないらしく、着いてきたというわけだ。


 頭が痛い。


「まあ……これはこれで、よしとするか」


 アラムのことはどうでもいいけど……

 動機はどうあれ、エリゼが初めて自分からしたいと言い出したことだ。

 できるだけ応援してあげたい。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」


 くいくい、とエリゼが俺の服を引っ張る。


「こんなにたくさんの受験生がいるんですね、ドキドキしてきました」

「緊張しているのか?」

「はい……私、受かるでしょうか?」

「わからない。それは、エリゼのがんばり次第だ」

「むぅ……それはわかっているんですけど、でもでも、そこは私なら大丈夫、って言ってほしかったです」


 エリゼが唇を尖らせた。

 拗ねるところもかわいい。


「でもでも、一緒に入学できるように、私、がんばりますねっ」

「そうだな。一緒にがんばろう」

「ふん。エリゼ、あまり無理難題を言うものではないわ」


 アラムが話に参加してきた。


「男がエレニウム魔法学院の試験に合格するなんて、ありえない話よ」

「もう……アラム姉さん、またそんな意地悪を……」

「私は事実を言ったまでよ」

「でもでも、お兄ちゃんはすごい魔法を使えますよ? あんな魔法が使えるなら、絶対に合格できます!」

「あれは……なにかの間違いよ。男のレンに、あんなことができるわけがないわ。あるいは、トリックなのかもしれない。ふんっ、お父様とお母様にいいところを見せようと、あのような小細工をするなんて……ずる賢いヤツね」


 どうやら、以前の試合は、なにかのトリックだと思われているらしい。

 試合だけじゃなくて、ダンジョンでも魔法を見せたはずなんだけどな……

 アラムの中では、自分に都合の悪いことは、良い具合に書き換えられるらしい。


「えっと……お兄ちゃん、姉さん。受付を済ませましょう?」


 場の空気を和ませるように、エリゼがそんなことを言った。


「ええ、そうね。先に受付を済ませてしまいましょうか。まあ、レンも好きにするといいわ。試験を受けることは、誰でもできるから。まあ、男であるレンが受かる可能性なんて1%もないだろうけどね、あははは」


 いちいち頭に来るようなことを言うヤツだ。

 一発、お見舞いしてやろうか?


 って、いけないいけない。

 そんなことのために転生したわけじゃないからな。


 それに、今ここで、アラムとの関係を悪化させるわけにはいかない。

 一応、こんなのでもストライン家の後継者だ。

 これから先、一緒にいることは多くなるだろうし、下手に絡まれても面倒だからな。


「お兄ちゃん、行きましょう?」

「ああ」


 エリゼに誘われるまま、受付を済ませた。

 アラムも受付を済ませた。

 あとは、試験開始を待つだけだ。


「おや? アラム様ではありませんか」


 なにやら金髪の女性がアラムに話しかけてきた。

 どことなく雰囲気がアラムと似ている。


「あら、あなたなのね。どうしたの、こんなところで?」

「それは私のセリフですよ。アラム様がエレニウム魔法学院に通うなんて、聞いていませんよ」

「まだ試験は受けていないけどね」

「しかし、アラム様ならば試験を受けるまでもないでしょう。それだけの実力がおありなのですから」

「ふふん、まあね。しかし、貴族であるあなたも試験を受けるのかしら?」


 いけすかない感じがするこの女は、アラムの知り合いの貴族らしい。

 麗人というように美しいのだけど……心はどうだろうか。


「ふむ……君がストライン家の長男か」


 金髪の女が気さくに話しかけてきた。


「あなたは?」

「私は、アラム様の親友のラウルムだ。フォールアウト家の長女でもあるぞ」


 フォールアウト家……確か、ウチと親交のある貴族だったか。

 それなりに有名なところだと聞く。

 けっこうな大物が出てきたものだ。


「アラム様に聞いたけれど、君も試験を受けるらしいな?」

「そうですけど……それがなにか?」

「やめておきたまえ。男は魔法を使えないのだ。魔法を使えない以上、君は絶対に受かることはないぞ? なにか目的があるのかもしれないが、残念ながら、キミが合格することはないだろう」


 言葉はやや乱暴だけど……

 ラウルムの言葉に嫌味は感じられない。

 たぶん、俺のことを考えて忠告してくれているのだろう。


 ただ、そんな忠告は受け入れることはできない。


「それでも、俺は学院に入学してやりたいことがあるので。試験はちゃんと受けますよ」

「ふむ?」


 ラウルムは考えるような仕草をとり……


「なるほど。意思が強いのだな。うむ。キミは、実にいい人のようだな。男にしておくのは惜しい。それにかわいいしな、はぁはぁ」


 惜しい、と言われても……

 まさか、女になれ、とか言わないよな?


 というか、なんで吐息を荒げているの?

 怖いんだけど……


「しかし、現実は変わらない。男は魔法を使えないのだ」

「いや、使えるんだ。それが」

「強がらなくてもいいぞ。はっはっは」


 この人……悪い人ではないが、人の話を聞かないタイプと見た。


「……アラム様。弟君に教育をしても?」

「ええ、好きにしてちょうだい」

「かしこまりました」


 なんの話だろう?

 不思議に思っていると、ラウルムが自信たっぷりに告げてくる。


「確か、レンと言ったな? キミに勝負を挑もう」

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