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128話 開戦

「いよいよ……か」


 迫りくる人形兵器の群れを見て、俺はわずかに震えた。


 恐怖というわけじゃない。

 これは、武者震いだ。


 前世からの宿命に、今、決着をつける時が来た。

 心が奮い立つことは当たり前のことだ。


「ん……」


 俺と同じ位置で待機しているメルが、同じように震えた。

 武者震い……じゃないな。

 顔に緊張の色が見られる。


「どうしたんだ?」

「えっと……」


 メルは気まずそうな顔をして、たははと苦笑いする。


「情けないことに緊張しているんだよね」


 そう言って、メルは俺に手を見せてきた。

 その手は、小刻みに震えている。


 きっと、怖いのだろう。

 これからのことを考えて、不安を消すことができないのだろう。


 無理もない。

 これからの数時間で、この国の運命が……


 いや。


 この世界の運命が決まるんだ。

 緊張しない方がおかしい。


 武者震いなんてしている俺は、ちょっとおかしいのだろう。


「情けないよね。この時のために、色々とがんばってきたのに、いざとなると……これだから」

「仕方ないだろ。メルは、魔神の力を直接目にした。普通、怖くなるさ」

「でも……」


 メルは納得いかない様子で、震える己を情けなく、悔しそうに見ている。


 言葉は響かない。

 届かない。


 なら……


「あ……」


 メルの手を握った。

 小さく震える手を止めるように、ちょっとだけ強く、ギュウッと握った。


 ……こんなところをエリゼに見られたら、なんか言われるかもしれないな。

 ついつい場違いなことを考えてしまう。


「なんで……?」

「震え、止まった?」

「あ……」

「俺にできることなんて大したことはないかもしれないけどさ。でも、一緒に戦うことはできる」

「……レン……」

「昔のメルは一人だったかもしれないけど、今は違う。俺がいる。エリゼがいる、アリーシャがいる、シャルロッテがいる、フィアがいる」

「……」

「そう思うと、少しは気が楽になってこない?」

「……うん、そうだね」


 メルの手の震えは、ゆっくりと収まっていった。

 緊張にこわばっていた顔も、いい具合に力が抜けていき、代わりに力強い笑みが浮かび上がる。


「どう?」

「うん……もう平気。よし!」


 メルは何度か拳を開いて握ったりして、体の調子を確かめる。

 そして、問題ないというような感じで、強く大地を踏む。


「じゃあ、いくか」

「そうだね。サクッと世界を救おう」




――――――――――




 そして……決戦の時が訪れる。


 一方は、己の生存権を賭けて。

 一方は、己の存在価値を賭けて。


 命と命の削り合い。

 力を示し、人間と魔神が激突する。




――――――――――




「撃ちなさいっ!!!」


 先手は、人間が手に取る。


 クラリッサの合図で、横一列に並んだ魔法使いが、一斉に魔法を撃つ。

 炎、氷、雷、土……ありとあらゆる属性の魔法が飛翔して、迫りくる人形兵器達に着弾した。


 しかし、人形兵器達は足を止めない。

 むしろ、加速する。

 そんなものは意味がないとあざ笑うように、己の力を誇示するように、大きな音を響かせながら激走した。


「そう、今のは意味がないというわけね。ならば、これはどうかしら?」


 今のは第10位の魔法だ。

 そんなもので敵を倒せるとは、クラリッサも思っていない。


 だから、今のは小手試し。

 敵にどれくらいの力があるのか、測るためのもの。


 故に、次の一撃こそが本気。


「全力でいきますよ……私に続きなさい。雷神槌<トールハンマー>!」

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