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127話 そして、宴が始まる

 あれから一週間が経過した。


 今日がアニスの指定した日だ。

 しかし、間抜けな話ではあるけれど、何時に開戦するのか、詳しいところを聞いていなかった。

 まあ、さすがに日付が変わった瞬間、深夜の0時ということはないだろう。

 おそらく、夜明けと共に……という感じなのではないかと、俺は睨んでいた。


 そして……その予想は的中した。


 太陽が上り、夜の闇がゆっくりと払われていく。

 地平線の向こうから光が広がり、太陽が姿を見せる。

 その光に追い立てられるようにして、異型の者が現れた。


 手と足と頭。

 人の形をしているものの、その見た目はまるで違う。

 服を展示するための人形のような姿をしていて、顔に目や口はついていない。

 その表面は、水が波打つように、時折、揺れていた。


 おそらく、ホムンクルスをベースにした、人型魔導兵器なのだろう。

 それらが数え切れないほど現れて、この国を目指している。


「お、おい……なんだよ、あれは……」

「知るかよ、俺に聞くな……」


 街の外で防衛戦を敷いていた騎士や魔法使い達が、異型の者達を見て動揺する。


 さすがに、あんな相手と戦ったことはないみたいだ。

 これが災厄なのか? と、戸惑いをあらわにしていた。


 ただ、あれはただの前哨戦に過ぎない。

 本当の決戦は、この後だ。




――――――――――




 いよいよ戦争が始まるということで、人々は強い緊張を覚えていた。

 日々、魔法の腕を磨いているものの、実際に戦闘を経験した者は少ない。


 実戦訓練を行うことはあるが、それはあくまでも訓練に過ぎない。

 命を賭けた戦闘をしたことはない。

 故に、緊張しても仕方ないことと言えた。


 そんな中……


「アリーシャちゃん、見えてきましたよ!」

「ええ、そうね」


 前線に立つエリゼは、臆した様子は欠片も見せず、むしろ強気な態度を見せていた。

 アリーシャも同じようなもので、鋭い目で、迫りくる人形兵器達を見ている。


 エリゼとアリーシャも実戦はこれが初めてだ。

 しかし、他の人と違い、緊張も恐怖も覚えていない。


 その心にあるのは、ただただ、レンの役に立ちたいという思い。

 それだけが彼女達の心を突き動かしていた。


 故に、恐怖なんて感じているヒマなんてない。

 緊張なんてしているヒマはない。


「アリーシャちゃん、いきますよ!」

「ええ!」


 エリゼは拳を構えて、アリーシャは剣を構えて。

 それぞれ、人形兵器の群れに突撃した。




――――――――――




 フィアは小さく震えていた。


 いよいよ実戦だ。

 覚悟はしていたものの、いざとなると心がすくんでしまう。

 素直に怖い、と思った。


「フィア!」

「ひゃあ!?」


 突然、胸を揉まれて、フィアがひっくり返るような声をあげた。

 そんなことをした犯人は……シャルロッテだ。


「な、ななな、なにをするんですか!?」

「胸を揉んだのよ!」

「堂々と誇らしげに言わないでくださいっ」


 フィアは胸元をかばうようにしつつ、シャルロッテから距離をとる。


「今は大事な時なのに、どうしてこんなことを……」

「だって、フィアが緊張しているんだもの」

「わ、わたしはそんなことは……」

「無理するんじゃないわよ」

「あいたっ」


 シャルロッテがフィアの額をコツンと指先で弾いた。


 ついつい、フィアは涙目になる。

 そんなフィアを見て、シャルロッテは優しく笑う。


「緊張するのはわかるわ。でも、そんな必要はないとわかりなさい」

「ど、どうしてですか……?」

「このシャルロッテちゃんが一緒にいるからよ!」


 シャルロッテは胸を張って言う。

 あまりに堂々とした態度に、フィアはぽかんとしてしまう。


「あたしが一緒にいるんだから、安心しなさい! そして、フィアは存分にあたしを頼りにしなさい!」

「……」

「絶対に、フィアは守ってみせるわ! だって、あなたはあたしの友達なんだもの」

「……甘えてもいいんですか?」

「もちろんよ」

「……はいっ!」


 フィアに笑顔が戻る。

 それを見たシャルロッテも笑顔になった。

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