123話 メルの心
レンと少し話をして……
それなりに遅い時間になったところで眠気を覚えたらしく、レンは自分の部屋に戻った。
それを見届けてから、ボクも自分の部屋に戻る。
ランタンの火を消してベッドに横になった。
目を閉じて……
でも眠気は訪れない。
むしろ、レンと話す時よりもスッキリとしていた。
「ふう」
小さな吐息をこぼしながら起き上がり、ベッドから降りた。
明かりは……なしでいいか。
部屋から明かりがこぼれていたら、レンみたいに起きてきた人が何事かと思ってしまうかもしれない。
カーテンを開けて窓の外を見る。
さっきと同じように、空には星が輝いていた。
「綺麗だけど……ちょっと物足りないかな?」
一人で星を見ても、正直つまらない。
レンが隣にいると何倍も綺麗に見える。
それは……
彼と一緒にいると心がわくわくするから。
ドキドキするから。
ときめくから。
「うーん、こういうのは柄じゃないんだけどね」
自分に対して苦笑して……
でも、動く心は抑えることができない。
「最初はただの憧れだったんだけどね」
自分を助けてくれた人。
魔法に興味を持つきっかけを与えてくれた人。
ただそれだけのはずだった。
でも、同じように転生をして……
それから巡り会い、一緒に過ごすようになって……
同じ目的を持って行動して……
気がつけば彼のことを目で追うようになっていた。
いつも彼の言葉を気にするようになっていた。
なぜ? と問われても、うまく答えることはできないかもしれない。
そこに明確な理由なんてないんだ。
そうすることが当たり前のように、彼に惹かれていた。
たぶん……一目惚れ、っていうやつかもしれない。
「まあ、柄じゃないのはわかってるから隠してるけどねー」
この想いはずっと秘めてきた。
それはけっこううまくいっていると思う。
今のところ、本人にバレている様子はない。
周囲にもバレている様子はない。
あ、でも、妹ちゃんはどうかな?
あの子、彼のことになるとけっこう鋭いからなあ……
ひょっとしたら、なんとなくは感づかれているのかもしれない。
「とはいえ、認めるようなことは絶対にしないけどね」
ボクはこう見えて乙女だ。
問い詰められて想いを吐露するなんてかっこ悪い真似、絶対にしない。
どうせなら、もっとロマンチックな方法がいい。
今みたいに綺麗な景色が見えるところで、一緒の時間を過ごすとか。
あるいは、一緒の時間を過ごしながら、少しずつ雰囲気を作っていくとか。
まあ、そんな感じ。
ボクも一応女の子なので、それなりに夢を見るところがある。
「まあ……彼を相手にしていたら、厳しいかな?」
まずライバルが多い。
それと、本人が鈍い。
大変な道のりだ。
以前なら諦めていたと思う。
「でも今は……」
ちょっとはがんばろうかな、って思っている。
まあ、こんなことを考えている場合じゃない、って言われるかもしれないけど。
でも、未来を考えずに今を生きることはできない。
だから少しくらいは夢を見てもいいと思う。
「いつか君の心を射止めてみせるからね」
誰にも見られることなく、ボクは小さく笑うのだった。




