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120話 レンの新魔法

「それじゃあ、今度は俺の番だな」


 気がつけば、互いに新魔法を披露するという展開になっていた。

 まあ、相手の力を知らなければ、その部分を伸ばすような訓練はできない。

 力を改めて確認するという意味でも、新しい魔法を見せておいて損はないだろう。


「レンもなにか開発したの?」

「アイディアだけで、まだ完成はしていないんだけどな」

「へー、どんなの?」

「それは……俺も秘密、ってことで」

「ずるい」

「おかえしだ」


 唇を尖らせるメルにニヤリと笑ってみせて、それから距離をとる。


「メルも防ごうとしないで、避けた方がいいぞ」

「へー、自信たっぷりだね」

「それだけ開発に時間をかけてきたからな」


 もっとも完成はしていない。

 発動することは可能だけど……

 色々と細かいところが荒く、調整が何度も必要になるだろう。


 まあお披露目くらいなら問題ない。

 そのレベルで使えることは、すでに確認済だ。


 というわけで、さっそく魔力を練り上げる。


「セット<起動>」


 この魔法は3つのトリガーから構成されている。

 まずは1つ目のトリガーワード。

 それを口にして、俺は両手を広げた。


 その両手の先……

 それぞれに魔力が収束されていく。


「アクセス『ファイアランス<火炎槍>』、アクセス『サンダーランス<雷撃槍>』


 右手に炎が。

 左手に雷が。

 それぞれ燃えて、唸る。


「同時に二つの魔法を……? いや、それにしては……」


 メルが驚いた顔をしていた。

 自分で言うのもなんだけど、異なる魔法を同時に使うなんて器用な真似をするヤツなんて普通はいない。

 シャルロッテは同じ魔法を充填することで、多重に使用しているが……

 あれとはちょっと違う。


 頭の中で二つの魔法の構造式を展開。

 それを並列処理して、同時に使用する、というものだ。


「すごいけど……でも、それが新魔法?」


 今度は、メルは訝しげな顔をした。


 その疑問はもっともだ。

 異なる魔法を同時に使うことは大変な作業だ。

 でも、だからといってそれで強い力が得られるというわけじゃない。


 魔法の内容、威力はそのままなので、特に変わらない。

 攻撃と防御、同時に行いたい時は便利かもしれないが……

 そういう時以外は特に役に立たないだろう。


 そう、このままでは。


「合体<クロス>」


 3つ目のトリガーワードを唱えた。

 ここからが俺の新魔法の本領発揮だ。


 両手を重ねる。

 そして、炎と雷が一つに。


「ぐっ……!」


 瞬間、膨大な圧力を感じて、手が弾け飛ばされそうになる。

 一つになった魔法が獣のように荒れ狂い、出口を求めている。


 まだだ。

 まだ完全に一つになっていない。

 この状態を維持して、完全に融合をさせて……


 今だ!


「解放<リリース>、火炎雷撃<フレアライトニング>!」


 メルに向けて魔法を解き放つ。


 炎と雷が融合して、辺り一帯のものを乱暴に食い散らかしていく。

 草木が焼けて。

 大地が灼ける。

 蛇がうねるように突き進む炎は、いうなれば炎の雷というところか?


「ちょっ!?」


 珍しくメルが本気で焦ったような顔をした。


「テレポート<転移>!!!」


 俺の行動をなぞるように転移魔法を使用した。


 メルの姿が消えて……

 その直後、炎の雷がメルがいた場所を襲う。


 その威力は……

 とりあえず、砂が溶けたとだけ言っておこう。

 砂の融点は約1000度。

 まだ調整が必要な状態でこれだけの威力を出すことができたのなら、わりと満足だ。

 いい魔法を開発することができたと思う。


「ちょ、ちょっと……! 今の魔法はなんなのさ!?」


 メルが慌てた様子で問い詰めてきた。


「砂が溶けるなんて、そのデタラメな威力……え? なにそれ? 見たことないんだけど? ……え?」

「おもしろいくらいに慌てているな。そんな顔初めて見るかも。貴重だ……絵に残しておきたいな」

「茶化さないでくれるかな……? で、今の魔法はなに? 当然、教えてくれるよね?」

「合成魔法だよ」

「合成……?」

「二つの魔法を合成して、新しい魔法を作り出す。簡単に言うと、そんな感じの魔法だ」

「……」


 メルがぽかんとした。


「魔法を合成って……そんなばかな。君は新しい魔法をその場で開発したのかい?」

「違う違う。あくまでも結果を導き出すだけで、新しい魔法を生み出しているわけじゃないんだ。なんていうかな……例えばスープを作る時、試行錯誤してレシピを開発するだろ? それが魔法の開発。俺がしているのは、スープの元を適当に選んで適当にブレンドしているだけ。その方法を確立させたものが合成魔法、っていう……よくわかんないな、この説明」


 俺は説明下手だったらしい。

 というか、まだまだ調整が必要なので、自分でも理解していないところがあるんだよな。


「ざっくり料理に例えて言うと、どんな料理も合成できる窯を開発した、っていうところか」

「……」

「どうかした?」

「いや……とんでもないことをさらりと言うものだから、さすがのボクも唖然としてしまったよ。とんでもないね……さすが、賢者」

「まだまだだよ。まだ未完成だから、色々と調整を重ねないといけない」

「これで未完成って……しかも、今使ったの第10位の魔法を合成したやつだから、第2位を合成したりしたら、どれだけの威力が……はぁあああ、やっぱり天才は違うなあ」


 そんなことを口にするメルは、どことなく落ち込んでいるみたいだった。

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