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111話 ホムンクルス

「ホムンクルス?」


 部室に戻り、皆が戻るのを待ち……

 それから、今回の事件の犯人を告げた。


 その名は……ホムンクルス。

 魔法で作られた人工生命体だ。


「ホムンクルスってなんですか、お兄ちゃん?」

「エリゼは知らないの? 確か……そうそう、魔法で作られた命のことよ」


 エリゼは小首を傾げていたが、アリーシャは知識があるらしく、そう言った。


 今の時代は一度、文明が崩壊してると思われるが……

 それでもホムンクルスを作成できるほどの技術は持つことができたらしい。

 わりと一般的なものであるらしく、ただの学生であるアリーシャも知っているくらいだ。


 短期間……数日で作り上げることができる。

 子供から老人まで、その幅は広い。

 誰かに似せることも可能であり、その場合はドッペルゲンガーと呼ばれるほどそっくりになる。


 ただ、知能は低い。

 しゃべることは可能だけど、簡単な会話を3~4つ、繰り返すくらいだ。

 作成する際に、あらかじめプログラムを組み込んでおけば、多少の会話はできるようになる。

 しかし、自分で考えることはできない。

 受け答えも簡単なものに限られるため、どこか人間味が薄れてしまう。


「うーん、ボクのホムンクルスかあ……」


 自分の偽者が出現したことがショックなのか、メルが深刻な顔をしていた。


「あのさ、あのホムンクルス……」

「ああ」

「すっごく美人だと思わなかった? さすがボクのホムンクルスだよね」


 ちょっとでも心配して損した。


「まあ、冗談はともかく」

「本気に見えたけどな」

「冗談だってば。それよりも、ボクのホムンクルスがいたっていうことは、みんなのホムンクルスがいてもおかしくないかもね」

「だな」


 ところどころで現れるというみんなの偽物。

 あるいは、他の誰かの偽物。

 そいつがホムンクルスという可能性は高い。


 普通、話している相手がホムンクルスだなんて思わないからな。

 多少おかしかったとしても、気のせいということで片付けてしまうと思う。


 肝心の、どうしてそんなことをしているのか? という疑問についてだけど、それについてはわからない。

 ただ、ひとまず原因を特定することができた。


 後は、裏でホムンクルスを操る犯人を捕まえることができればいいのだけど……


「ふと思ったんですけど」


 エリゼが疑問顔で言う。


「メルさんのホムンクルスは、どうしてお兄ちゃんの前に現れたんでしょうか?」

「それは……偶然じゃないか?」


 メルに親しい俺達の前に姿を見せれば、ホムンクルスとバレる可能性が高くなる。

 そんな命令は、普通に考えるなら出すわけがない。

 だから、たまたまホムンクルスの活動範囲内に入り込んで……


「で、でも……あの時、メルさんのホムンクルスの方から話しかけてきましたよね?」


 フィアが当時の様子を思い出しながら言う。


 言われてみると……?

 偶然のようではあるが、ホムンクルスの方から話しかけてきた。

 自分からアクションを起こすなんてこと、普通のホムンクルスならありえない。

 なにかしら目的が設定されていれば別だけど……


「ってことは……メルのホムンクルスは、レンたちに接触するのが目的だった、っていうことかしら?」

「その可能性が高いように思えるけれど、理由が謎ね」


 シャルロッテの疑問に、アリーシャは一部同意した。

 その上で謎が残ると、続けて小首を傾げた。


 俺も敵というか、ホムンクルスの背後にいる人物の目的について考えてみる。


 クラス間の対立を煽り……

 そのための手段としてホムンクルスを利用する。

 そして、俺たちにあえて接触するその理由は……?


「……ダメだ、わからん」


 どうにもこうにも情報が足りない。

 もう少し踏み込んでみないと、なんとも言えないな……


「もっと情報がほしいわね。現状、まったく情報が足りていないわ」


 アリーシャも同じ結論に至ったらしく、俺と同じような考えを口にした。


「ふふんっ、それなら簡単じゃない」

「シャルロッテはなにか策が?」

「まったく、レンはこんなことも思い浮かばないの? あたしがいないとダメダメね!」


 ちょっとイラッときた。


「いひゃひゃひゃ、いふぁい!? ひゃにするのよ!?」


 シャルロッテの頬をぐにぐにとしておしおきをした。


「もう、あたしのかわいい顔がどうにかなったら、どうしてくれるのよ? 責任とってもらうんだからね!」

「いいから。それよりも、シャルロッテの案を話してくれ」

「簡単よ。知っているヤツから聞けばいいのよ」

「というと……?」

「ホムンクルスを捕まえればいいじゃない!」


 どどーん、という効果音がつきそうな感じで、シャルロッテは自信たっぷりに言う。

 しかし、俺は呆れてしまう。


 そんなことができるなら苦労はしない。

 相手はどこに出現するか不明。

 情報を集めればパターンを特定することができるかもしれないが、あまりに時間がかかる。


 それと自壊プログラムがしこまれているらしく、捕らえておくことは不可能。

 仮に拘束に成功したとしても、相手は知能を持たないホムンクルスだ。

 こちらの質問に答えることは……


 ……いや、そうでもないか?

 別にわざわざ質問する必要はない。

 記憶を覗く魔法を使えばいい。

 後遺症が出る可能性があるため普通の人には使えないが、相手がホムンクルスなら遠慮はいらない。


 ホムンクルスに普通の記憶はないかもしれないが……

 誰に作られたのか?

 どんな命令を与えられたのか?

 そういう記憶はさすがに残っているはずだ。

 それらを突き止めることができれば、あるいは……


 後は拘束する方法だけど……


「お兄ちゃん」

「うん?」

「私にちょっとしたアイディアがあるんですけど……」

「え? ホムンクルスを捕まえる方法があるのか?」

「捕まえたら溶けちゃうんですよね?」

「ああ。それと、己に危険が及んだり情報が抜き取られようとしても、たぶん、自壊プログラムが作動すると思う」

「なら、できると思います。ようするに、どうしようもできない状況にしちゃえばいいんですよ」


 エリゼが笑顔で言う。

 そんな妹はシャルロッテと違い、とても頼りに見えた。


「ちょっと、なにか失礼なことを考えてないかしら?」

「……気のせいです」

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