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108話 ドッペルゲンガー?

 嫌な予感は当たるというか……

 あれからしばらくの時が流れたのだけど、クラス間の対立は収まることなく、むしろ激化していった。


 今までは裏で陰口を叩く、物を隠すなどの軽いいやらがらせ程度だったのだけど……

 ここ最近は、真正面からぶつかることが多い。


 本人がいるところでの嫌味。

 それを受けての口喧嘩。

 ひどい時は、私闘に発展する。


 そんな状況が当たり前。

 クラス間の対立は日常茶飯事になってしまった。


「ふぅ」


 放課後。

 部室に行くと、すでにエリゼとアリーシャの姿があった。

 二人共疲れた様子で、エリゼなんかはため息をこぼしている。


「どうしたんだ?」

「あ、お兄ちゃん……」

「レンなら、大体の想像がついているんじゃない?」

「クラス間の対立か……」

「正解。廊下を歩く度に、他のクラスの子に絡まれるのよね。自分達を見下しているとかバカにしているとか、口を開けばそういうことばかり」

「私達、そんなことは絶対にしていないのに……誰も話を聞いてくれなくて……」

「……そっか」


 うーん。

 エリゼやアリーシャは上位のマーセナルだからなのか、一際問題が大きいみたいだ。


 俺は学院で唯一の男だからなのか、以前聞いたように、巻き込まないようにするという協定が結ばれているためなのか……

 真偽はわからないが、直接、絡まれたことはない。


 ただ、そんな俺の前でも、女の子たちは日に日に対立を深めていく。

 隠すようなことはせず、堂々と動くようになっていた。

 まるで、正義は自分にあり、というような感じだ。


 どうにもこうにも、嫌な流れだ。

 一過性のものだと思い、ひとまず様子を見てきたのだけど……

 それは間違いだったかな?


 以前、エリゼが陰口を叩いていたという噂も聞いているし……

 うーん、動くべきだろうか?


「ぴゃあああああっ」


 突然、フィアが部室に飛び込んできた。


「ど、どうしたんだ? そんなに慌てて?」

「ぜーはー、ぜーはー、ぜーはー……」

「あ、すまん。まずは息を整えてからでいいぞ」

「ひゅばー……」


 フィアは死にそうな顔をしつつ、なんとか息を整えて……

 それから、必死な顔で言う。


「た、大変です! シャルロッテさまがシルカードの生徒に絡まれて!」




――――――――――




「ふふんっ、このあたしがどうにかなるわけないじゃない!」


 ……30分後。


 シャルロッテはいつものように偉そうな感じで、当たり前のような顔をして部室にいた。

 ついさきほど、騒動に巻き込まれたとは思えない態度だ。


 まあ、シャルロッテはいつもこんな感じか。

 きっと、天変地異が起きても、いつもどおりに偉そうに胸を張っているに違いない。


「はぁあああ……よ、よかったです。シャルロッテさまに何もなくて……」

「なによ。フィアったら、このあたしがシルカードごときに負けるとか、そんな不遜なことを考えていたわけ?」


 それ、不遜なのか?


「このあたしを誰だと思っているの? 天下無敵! 常勝無敗! 最強頂点のシャルロッテ・ブリューナクちゃんよ!」


 お前、俺に負けてるだろ。


「レン、あんたもあたしのことを心配していたの?」

「俺は心配してなかったけどな」


 シャルロッテの魔法技術はマーセナル以上のものがあると思うし……

 最近は、ずっと特訓をしているからな。

 大幅に基礎魔力が上昇しているはずで……

 そんなシャルロッテに敵う相手なんて、この学院では数えるほどしかいないのではないか?

 いや、いないのではないか?


 そんな認識なので心配はしていない。

 心配するとしたら、相手の方だ。

 シャルロッテがやりすぎて、治癒院送りにしてしまわないか……そこは心配だった。


「むう……なによ、あたしのこと心配してくれたっていいじゃない」


 なぜかシャルロッテが膨れていた。

 俺、なにもしてないよな……?


「ところで……エリゼ」

「はい?」


 ふと、シャルロッテがエリゼの方を見た。

 なにやら訝しげな顔をしているが、どうしたんだろう?


「あんた、少し前に外に出てた?」

「いえ? 私は授業が終わった後、すぐに部室に移動して……そのままですよ? 外には出ていませんけど」

「そう……?」


 シャルロッテは、おかしいわね? というような顔をして、小首を傾げた。

 なにが疑問なのだろう?


「どうかしたのか?」

「んー……放課後に入ってすぐ……そこそこ前のことだから、今はどうなっているかわからないのだけど……あたし、外にエリゼがいるのを見かけたのよね」

「えっ?」

「喉が乾いてたから、あたしはレンと一緒に部室に行かないで、フィアと一緒に購買に向かっていたの。その途中、窓からエリゼが見えたのよ」

「えっと……それ、見間違いじゃないんですか? 私、放課後は外に出てませんけど……」

「どうなのかしら? 見たのはあたしだけで、しかも後ろ姿だったから断定はできないんだけど……でも、あれはエリゼのような気がしたのよね」


 なにやら話が妙な方向に転がり始めたな?


 それにしても……シャルロッテの話は気になる。

 いないはずのところでエリゼが目撃された。

 つい最近、似たような話を聞いたことがある。


 この前、エリゼに絡んできたシルカードのクラスの女の子の話だ。

 彼女たちは、エリゼが陰口を叩いていると言っていたが……

 これも本人は知らないことだ。


 偶然?


 ……いや。

 偶然の一言で片付けるのは乱暴な気がするし、なによりも危うい。

 そんな判断をしてしまうと、とんでもないミスをしてしまいそうな……


「エリゼはここにいるけれど、でも、外にいるところを見かけた……これ、ドッペルゲンガーっていうやつなのかしら?」


 アリーシャの言葉は、なかなかに確信を突いているような気がした。

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