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106話 煽る者

「対立ですか?」


 俺たちの間でも話題になっていたけれど……

 まさか、先生を悩ませるほどの問題になっていたなんて。


 興味を覚えたので、そのまま話を続けてみる。


「どういうことなんですか? よかったから、聞かせてください」

「んー……あなたたちに話すようなことじゃないんですけど、でも、少しでも情報が欲しいですね」


 迷った末に、ローラ先生は簡単な事情を説明してくれた。


 基本は、エリゼとアリーシャから聞いた話と変わらない。

 三つのクラスの間で、対立構造が構築されつつあるというものだ。


 今までは互いをライバルとして競いつつも、足りない部分は補ってきたのだけど……

 ここにきて、その構造が変わりつつあった。


 ライバルとして競うのではなくて、相手を敵として認識するようになっており、時にいきすぎた言動を取る生徒がしばしば。

 なにかしら協力を求められたとしても、相手が別のクラスならば、一切、相手にすることはない。

 敵意と不満だけを溜め込むような構造に変化しているらしい。


 ……そんな話をローラ先生から聞くことができた。


「やっぱりというか、俺、知らなかったなあ……」

「まあ、レン君は唯一の男の子ですからね。一部では、レン君に勝手に手を出したらいけないという、抜け駆け禁止協定もあるみたいですし……それ故に、今回の対立からは遠ざけられていたんでしょう」


 え? なにそれ?

 抜け駆け禁止とか、初めて聞いたんだけど。


 エリゼとアリーシャを見ると、顔を逸らされた。

 この反応……二人共知っていたな?

 俺が調子に乗ると思ったのか、あえて黙っていたのだろう。


 調子に乗ったりはしないぞ。

 ……ちょっとはニヤニヤしそうだけどな。




――――――――――




 その後、フィア、シャルロッテ、メルが合流して……

 部活動という名の特訓に励んだ。


 特訓といっても、新しい魔法を覚えるために、魔法書を読むだけだ。

 これならローラ先生に俺たちの目的がバレることもない。


 そうして部活動を終えて……

 空は暗くなり、星が輝くようになっていた。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん。今日はなにが食べたいですか?」

「ん? 食堂に行かないのか?」

「今日は、私がお兄ちゃんにごはんを作ってあげたい気分なんです。もちろん、みなさんの分も用意しますよ」


 こんな感じで、エリゼはちょくちょく俺の面倒を見ようとする。

 病気が治り、元気になってからは、その欲求がどんどん強くなっていた。


 体を動かせることがうれしいのか?

 あるいは、エリクサーのお礼がしたいのか?


 どちらにしても悪いことじゃないので、好意に甘えることにした。


「じゃあ、せっかくだから頼むよ」

「リクエストはありますか?」

「んー……ぱっと思い浮かばないけど、肉料理がいいな」

「お肉ですか……はい、わかりました。他に、一緒に食べる人は?」


 みんなが一斉に手を挙げる。

 仲がいいな。


「わかりました。じゃあ、ちょっとお買い物に行ってきますね」

「え? 今から?」

「部屋にある材料だと、ちょっと心もとなくて。あと、調味料が足りないんですよね」

「そこまでするなら、また今度でも……」

「すぐに街に行けば、まだお店は開いていると思いますから。その分、ちょっと遅くなっちゃいますけど、そこは我慢してもらえるとうれしいです。では、行ってきます!」


 エリゼは勝手に話を終わらせてしまい、一人でタタタと街の方に駆けていった。


 材料や調味料を買わないとダメと知っていたら、頼まなかったんだけど……

 悪いことをしただろうか?


「こら」

「いてっ」


 ぽこん、とアリーシャに小突かれた。


「なにぼーっとしているの? 早くエリゼを追いかけなさい」

「ん? なんで?」

「あのね……エリゼ一人に荷物を持たせるつもり?」

「あ」

「それに、まだそれほど遅くはないけど、暗い夜道を女の子一人で歩かせるものじゃないわ」

「そ、そうだな。わかった、すぐに追いかけるよ! サンキュー、アリーシャ」

「鈍いのもほどほどにしなさいよ」


 なぜか、アリーシャの言葉に他のみんながコクコクと頷いていた。


 俺、鈍いの……?




――――――――――




「えっと、エリゼは……?」


 エリゼを追いかけて夜の街へ。

 別れてからそれほど時間は経っていないのだけど、今のエリゼは、抜群の身体能力を持っている。

 足も速く、なかなか追いつくことができなかった。


「ええいっ、めんどくさい!」


 俺はエリゼほどの体力はないし、街中、全部走り回ることなんてできない。

 そもそもすれ違うかもしれない。

 なので、手っ取り早い方法でいく。


「探知<サーチ>!」


 周囲の魔力を感知する魔法だ。

 個人を特定することはできないのだけど……


「向こうか」


 たくさんの反応を感じる中で、やたら大きい、飛び抜けた魔力反応があった。

 おそらく、これがエリゼだろう。

 最近の特訓のおかげで、魔力がかなり上昇しているからな。

 他の人とぜんぜん違うため、見つけやすい。


 エリゼらしき反応があったところへ向かう。


「しかし……他にも反応があるな?」


 エリゼほどじゃないけど、そこそこの魔力反応が二つ。

 エリゼらしき反応のすぐ近くにあった。


 なにか嫌な予感がする。

 俺は急いで反応のあったところへ向かった。

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