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SKILLmagic  作者: もののべ
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目覚め

頑張って連日投稿っす! この物語ももうすぐおしまい!

最後までお付き合い下さい!

「そう……。私も居ちゃ駄目なんですね」


「親族の場合はどうか曖昧なところですが白井さんは足と手のリハビリがありますので、半年間程度は入院が必要となります」


「次に、山葉さんですが。その……状況が状況ですのでカウンセリングを行う予定です。日程等は後日お知らせいたしますので」


「……」


「ああ! ちょっと白井さん! 動かしてはいけませんよ」


 医師が慌てて美奈子さんの止めに入る。

 ベッドの上で仰向けに寝ている美奈子さん。彼女の腕にはギブスが巻き付けられていて、足は固定されていた。

 美奈子さんは少し目を伏せて小さく溜息をついていた。その顔はどこか寂しそうで、やっぱり裕翔の事が心配なんだな、思う。同時にこんな事に巻き込んでしまった私は罪悪感で押し潰されそうだった。


「それでは」そう言い、医師が退室する。この部屋には私と母と美奈子さんだけ。重い空気が流れていた。


 その沈黙が耐えきれなかったのか美奈子さんが笑みを浮かべて明るい声で言った。


「なんか、ちょっとデバッグしてたときから、その傾向が出てたらしいよ? あいつ」 


 医師の話だと、どうやら今回だけが原因というわけじゃなく、もともと何か脳に負荷をかけていた事もこうなってしまった要因なのだとか。


 そして、思い当たる節は1つだけだった。そう美奈子さんは呟く。


「いや、最初あっちで議題が出たときおかしいなってちょっと思ったんだよね。だって本来高性能のパソコン数台を総動員して、やっとVRシステムを稼働させて、しかも、そのパソコンでさえ、下手すりゃキャパオーバーしかねない物質やらなんやらのアクティブソースを人間の脳内でするとなればそりゃ相当負担かかるよね。裕翔には悪い事しちゃったな」


「あんた、死んだって事にするわね。土砂崩れで」

 母が強引に話を変える、強引すぎるし話題が突拍子もなさすぎる。あと、設定が結構具体的だ。

 海外への出張とかでもいいだろうに。理由付けなんて。それなのに死んだ事にするって。母と美奈子さんは幼馴染みだから、こんな事が言えるのだろうか。

 美奈子さんも一瞬驚いた顔をしたけど、何かを察したのか。


「ああ、そだね」

 美奈子さんは力なくそう言い、真面目な顔で母を見つめていた。


「迷惑かけるね、和代」


「それは、お互い様ね」


「はい、話は決まったのでジュース買ってくるね。もうすぐ沙織ちゃんと一葉ちゃんもくるみたいだし」


 そう言って母は部屋から出て行ってしまった。残された私と美奈子さんは少し黙っていた後、私から口を開いた。


「……こんな事になってしまって、ごめんなさい」


 何か言われる覚悟はしていた。それをしっかり受け止めるのも私の責任だった。そう思っていたから、ズボンの裾をぎゅっと握り、美奈子さんの言葉を待つ。


「…………私や、裕翔の事より、さ。綾音ちゃんが私は1番心配だな」


「あ、え?」


 予想外の言葉に思わず、聞き返してしまう。


「ん〜……、うまく言えないけど、気負い過ぎ? みたいなね。『私は被害者面しちゃいけない。周りをこんなに巻き込んでいるんだから』こんなふうに思ってない?」


「…………。実際、そうだし、私が原因なのに1番軽症ですんでるし」


「それは違う。()()()()()()。心が今回誰よりも傷ついてる。結局未遂ですんだのは不幸中の幸いかもだけど、綾音ちゃん程重症患者はいないよ?」


 私はその一言が欲しかったのかもしれない。自分は悪くない。そう考えれば考える程、自分は間接的な加害者だと。自分が被害者面をする事を自分自身が認めなかった。

 大好きな人に、その家族にこんな仕打ちをしておいて私は悪くありません。そんなのどの口が言えようか。でも、本当は。本当は、気づいていた。ボロボロな事に心がズタズタになっている事に。でもそれに縋ってはいけないと、それを無理矢理奥底に押し込んで。


 でも、それを見通してそう言って、くれたであろう美奈子さんには頭が上がらない。実際、上がらながった。


「……っあぁ……ぃあ………っ……っ……」


 顔を覆って泣いていた。


「逆にどんどん相談してほしい。喜んで協力するよ? ま、今は話聞くくらいしか出来ないけどね」


「………なん、で、そんな、風に………接してくれ……るの?」


「これ言うと、和代が何言うか分かったもんじゃないからここだけの話だけどね、私にとって綾音ちゃんは可愛い実娘みたいなもんなんだよね。ははは……」


 ちょっと恥ずかしそうに笑う美奈子さん。そう言ってくれるだけで救われる。助けてくれる人が、自分を大切に思ってくれる人が、家族のように大切にしてくれる人がいる。なんて幸せな事だろう。


「あらあら。ほらそれで涙拭いて」



    


             ✽



 その後、一葉ちゃんと沙織ちゃんが母と一緒に来て少し話した後、裕翔の病室へ行く事になった。


「貴方達だけで行ってきな」


 そう言って病室に残った母は母親同士の会話もある事だろう。


 その病室へ向かう途中、私は二人に事情説明して、先に行ってもらい私は近くのショッピングモールへと向かった。

 裕翔と私は半年間接触を避けなければならない。もし無理矢理記憶を戻そうとすれば、記憶がなくなってしまうからだ。でも、私は裕翔と一緒にいたい。とんだ我が儘だけど、これは譲れない。

 しかも好都合な事に、うまく行けば来年には二人共別々の高校に通うことになる。

 あんなに嫌な事だったのに。裕翔がこっちに来てくれないかなぁ。なんて毎日のように思っていたのに、これがこんな形で役立つとは思いもよらなかった。



――性別を変えることは出来ないけど。

――それが裕翔にバレないように、裕翔の前では男の子で。そして高校では普通の生活をして。


「あった………!」


 ショッピングモールの一画にあるかつらショップ。

そして、私が手に取ったのは黒色のかつら。網のようなものがセットでついている。

 私は試着室で自分の髪を網でまとめてみる。すると坊主のような姿になる。それが面白くて、つい笑ってしまう。そして、その上から黒色のかつらを被ってみる。いい感じ。どう見ても男の子にしか見えない。自分にぴったりの服装(ズラ)が見つかって私は喜びを隠せない。さて、病院に戻るとしよう。







             ✽








「すごいのぉ、これでばれる事はなかろう」


「ウンウン。いいね、それ!」


「本当? ありがとう、一葉ちゃん、沙織ちゃん」


 少し低い声を出して男の子っぽくしてみる。その声を聞いて、三人で大爆笑する。私も久々に笑った気がした。


「翠咲ちゃん、来れないの?」  


「しばらく、実家にいなければならないらしいしの」


「そっか。戻ってきたら、この事話さないとね」


「む? チャットで伝えればよかろう? 何故じゃ?」


「いや、向こうにいるのに心配してたら楽しめないでしょ?」


「そうじゃな」


「それにしても、可愛らしく眠っちゃって」


「本当、お兄ちゃんらしいよ」 


 裕翔の頭には包帯が巻かれていた。それが昨夜の出来事を嫌でも思い出させるが、なんとか吐き気をこらえる。こんなところで、場を乱すわけにはいかない。






「んん………」


 眉をひそめて、五月蝿そうな顔をしながら、目を覚ます裕翔。


 裕翔は、少し困惑しているようで辺りを見回している。そして、私達、いや、『俺達』を捉えると少し首を傾げて。



「あの………君達は? 誰、ですか?」


………覚悟してたけど、結構きついなぁ。今までの記憶は、裕翔の頭にはないのだ。図書部での皆の事も。皆で遊園地で遊んだ事も。

 そして、私に告白してくれた事さえも。


 そう思い出を思い返すと涙が自然と出てきちゃう。

 実際、沙織ちゃんは「絶対! 泣かないもん」って言っていたのに大粒の涙を流していた。

 横では、一葉ちゃんも泣いていた。

 

「あ……えっと……」


 突然初対面だと思っている人達が、次々に泣き出しちゃったら、困惑するよね。


 



――――君が、例え私を忘れてしまっても。私は絶対に忘れない。あの時の楽しかった記憶を。思い出を。どちらかひとりが記憶を覚えていたら、その記憶は、その思い出は、『シェア』する事ができるのだから。


――――君が私を、私達を忘れてしまったとしても。また作ろう。あの頃の思い出を超えるような、楽しい思い出を。楽しい記憶を。その新しい記憶は皆で『シェア』できている。それを忘れないようにしよう。












――――例え、君が私を忘れてしまっていても。



――――私は――。私は、大好きだから。




――――いつまでも。君が私を思い出してくれるまで私は。私の時間を君と『シェア』しよう。




「初めまして。白井裕翔君。俺の名前は………えっと……山葉和也(やまはかずや)って言うんだ。もう一度、俺と友達になってよ」 


 私は、裕翔の前に右手を差し出した。


 

 少し、裕翔は「え……?」と言う顔をしていたけど、それから笑顔で「よろしく」そう言って、私の手を握り返してくれた。



 





 

よろしくお願いします!

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