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SKILLmagic  作者: もののべ
43/46

原因

今回の話は不快に感じる方が多いと思います。

本当に申し訳ありません。

気持ち悪いシーンがございます。嫌な方は見ないことをおすすめします。

「あの、私が何か……?」


 怖さをなんとかはねのけ、西林に尋ねる。

 綾音の怯えを見てか、西林は笑顔を見せゆっくりと近づく。


「ごめんだお。別にあんな怒鳴る必要はなかったよね。でもね。なんで、僕じゃなくて。裕翔君なんだい? 僕もさぁ、こんなにも綾音さんを愛しているのにぃ……」


「ひ……」


(なんで知ってるの!? ……怖い。……怖い。)


 綾音は戦慄し、目の端には涙をためていた。


「でもね、別にいいんだお。だって、これから()()()()()()()()()


 そう言うや否や、西林は綾音の肩を掴み押し倒す。そして西林は綾音の上の服に手をかける。


「やめて……やめて! 何するんですか!!」


 必死に抵抗するものの、大人の力には勝てるはずもなく、上の白いシャツを剥ぎ取られる。


「初めてを頂くだけだお。そしたら、きっと僕の事好きになってくれるよね?」


「やめて下さい! 助けて!! 裕翔……!」


 すると、パンッと西林が綾音の頬を張る。


「黙れ!! 今そいつの名前なんか出すなお!? 僕と一緒にいるときにさぁ……元彼の名前なんざ聞きたくねぇお?」


「……っ……。ひっく……えぇ……」


「ふう! ふう……。これで分かっただろ」


 抵抗しなくなった。綾音を見て西林は満足そうに微笑む。気持ちの悪い、嫌な笑みだ。


 西林は自身のジーンズをのベルトを外し、チャックを下ろす。そして、ジーンズを脱ぎ、パンツを脱ぐ。西林は綾音の顔の前にソレを持って来る。見せつけるように。


「どうだお? いいだろ? おい? なんか言えお?」


「………。うぇぇ……」


 いつまでも泣きやまない綾音に業を煮やし、声を荒げる。その姿はいつもの様子ではとても想像出来ないものであった。


「萎えさせんじやねぇお!? 立てよ! 口開け!!」


 口を開けるよう強要する西林に対し綾音は泣きながらも口を固く閉ざす。


「………絶対……っく。ひっ……嫌だ!!」


 



 ひときわ大きな音が室内に響き渡る。今度は鈍い音だった。





             ✽✽




「あ……あ……うう……」


 

 痛い。

 口の中が血の味でいっぱいになる。気持ち悪い。気持ち悪い。

 口の中がじんじんしている。口だけではなくて、今ので鼻血も出てしまったらしく、白い床にポタポタと一定のリズムで滴り落ちる。


「あ〜あ〜あ、そうやって渋るから。思いっきりグーで殴っちゃったじゃないか」


 いつも優しかった西林さんがこんな人だと思いもしなかった。今まで楽しそうに話を聞いてくれた人が、今は丸で別人だった。


「た、助けて……! 誰かあああああ!」


 私は頬の痛みをこらえ、西林さんの顔をける。


「うんぐぁ……!」


 西林さんが顔をのけぞらせたところをすり抜け、腰が抜けてしまってるのでドアに向かって四足で走る。外まで逃げれれば……!助けをよべる。空にはドローンが飛んでるはずだし、すぐにでも警察が来てくれるはず! 


「逃がす訳ねぇだお?!」


 足を掴まれ、引きづられる。転がされたところに蹴りが飛んできた。



「ふん!!」


「うぇぇ……。うぷ……!」


 今日遊園地で食べたものが逆流する。


「あ〜あ。もういいお。なら、口でしなくていいから、股開いて?」


「嫌……お、……!」


 私が拒絶する度に、平手や。拳が腹や顔に飛んできた。


 もう自分の呼吸がおかしかった。ヒュー。ヒュー。と、何処から息が出ているのかすら分からない。パニックだった。あまりの恐怖に、あまりの気持ち悪さに。吐いても全然良くならない。この感じ。


 私は世界で1番、こいつが嫌いだ。

        

             



             ✽




「もういいお」


 足をバタバタさせ、抵抗を重ねていたが足を掴まれて強引に股を開かされる。


「いやああああああ!!! 止めてぐださぁいい……!」


「助けて……裕翔……」


 涙ながらに弱々しく叫ぶ。この声は届くことはないと分かりながら。


 突如、扉が空いて、思いっきり誰かが西林を吹き飛ばした。


「早く逃げろ!!」


「あああ……! ゆうううどぉぉぉ…………!」


「警察呼んで来てくれ!!」


「ゔん!」



            ✽





 綾音が扉の外に出てから、裕翔はどうしようもない怒りを目の前の男にぶつけていた。


「このゲス野郎が!!!! 何やってんだよ!!!!」


「クソがっ!、お前のせいで……!お前のせいで!!」


 何度もお互い拳を振るう。部屋をゴロゴロと転がり合いながら、中学生と大人の喧嘩が勃発していた。お互い武術の経験等ないため互いの拳は避ける事など出来ずにもろにくらう。お互いの拳はすでに互いの血で汚れている。

 裕翔が西林の頬を殴り飛ばし、西林がのけぞったところを押し倒し、馬乗りになり何度も、何度も、拳を叩き落とす。


「クッソやろおおおおおおおおおお!!!!」


 顔を腕で隠す西林。それを解いて殴りつける裕翔。それが永遠に続くかと思ったが、西林が腹を回転させ裕翔を振り落とすと今度は西林が裕翔を踏みつける。


「おらおろぬあぁぁぁぁあ!!」


 声にならない叫べをあげ。何度も踏みつける西林だが、ここで踏みつけるのをやめて、Dive ROOMの横にあったものを手に取り、それを裕翔の後頭部目がけて振り下ろした。


「…………ああぁぁぁあぁぁああ!!」


 今までの拳とは非にならない強さの痛みが裕翔を襲う。西林が手にはモンキーレンチが握られていた。

 抵抗できなくなった。裕翔に何度も。何度も。何度も。モンキーレンチを振り下ろす。


「……」


 ピクリとも動くかなくなった裕翔を見下ろし満足したかの様にパンツとジーンズを穿き、部屋から出て行く西林。

 血だらけの裕翔とモンキーレンチを残して。




            ✽✽✽




「綾音ちゃん!? どうしたの! その格好!?」


 私は、ヨタヨタと会社からでてくる親友の娘の姿を見て戦慄した。

 どうしたのその格好。と聞いたものの、本人は服すら来ていなかった。これは明らかに異様だと察し。綾音のもとへ駆け寄る。

 先程まで遠くてわからなかったが、顔はところどころ腫れていて、鼻血が出ていた。私の姿を、見て安心したのか綾音は大声で泣き出してしまった。

 なんとか事情をきき、警察と念の為に救急車を呼んだ。ここからすぐ近くに消防署があるのですぐ来るだろう。私はコートを脱いで、綾音に着せた。


「裕、翔、がぁっ……。来てくれ、たけど……っ! ……今どうな、ってるか、わからないんです……っ! っ!」


「分かったわ。大丈夫よ。多分ね」


 そうは言いつつも流石に心配になる。私は「少し待ってて? 様子を見てくるから」と、綾音に言い残しエントランスに向かう。


 その途中で、物凄いスピードで駐車場から飛び出して来た。運転席には、西林君が乗っていて……。



  



             ✽





 激痛が全身を駆け巡ったと思った時には、アスファルトの地面に叩きつけられていた。息の詰まる感覚。体中がじんじんと熱い。歯を食い縛り痛みに耐える。痛みがある腹部のあたりに手を持っていくと、ヌメヌメしたものが手に触れた。暗くて色は分からないが、大方、いや、100%想像がつく。血だ。


 薄れゆく意識の中で、小さい頃から聞き慣れた、あの「ピーポー、ピーポー」というサイレンの音を聞きながら、私は目を瞑った。


 

        

             ✽




 私は警察の人と一緒に会社内に入り、渡り廊下を渡って2つ目の部屋を開けた。


「…………!」


 私は何も言葉が出なかった。……う、そ。

 現実を受け止めきれず、目を瞑る。だって、だって。裕翔が血塗れだったのだから。裕翔の近くにはモンキーレンチが落ちていて。これで殴られたのだと容易に想像がついた。


 自分が今立っているのかすら分からないほどに足元がふらついた。

 もし、このまま。裕翔が死んでしまったら。そう考えてしまうと、もう涙を止めることはできなかった。


 救急隊員の人がAIの『RORO』と一緒に、裕翔と美奈子さんを車内に運び込む。


 それをただただ呆然と見ていた私に救急隊員が「君も乗って」と声をかける。


「……はい」


 

 

 私も乗り込んで車内で適切な処置を受けたが、私なんか軽いほうだ。



 二人は集中治療室に入って行ったっきり数時間、ランプが消える事はなかった。




           

             ✽



 しばらくしすると、母親が泣きながら私を抱きしめてくれた。その時。私は本当に安心したのか、周りの迷惑にならないように配慮しようと思ったけど、無理で、一度決壊した思いは留まることを知らず、母和代の胸に顔を押し付けて大声で泣いた。


「怖かったね……」


「わあああああああああああああああああああああ…………!!」


 母は温かい。とても、とても。



 私はその温もりに包まれて、気持ちも少し落ち着いたところで、それは少しだけだった。まだ二人が助かった訳じゃない。

 母の温もりを感じながら、手術の終わりを待った。






              ✽




「結果から、申し上げますと。白井美奈子さんはもう命の心配はございません。」


「裕翔は?!」


 美奈子さんの事も勿論心配していたけど、私は裕翔方が気になって仕方がなかった。何も無ければいいのだけど……。


「白井裕翔君の方はですね、……F型記憶喪失症になる可能性が考えられます」


「……」


 私は何も言えなかった。頬を伝う涙さえも気づかなかった。私の体はそこにあって。でも心はそこにない。そんな気さえした。


「それは……どのくらいの確率なのでしょうか?」


 母が医者に不安そうに尋ねる。


「ほぼ1()0()0()%()だと考えて置いて下さい」


 申し訳なさそうに医者が言う。私と母は言葉を失った。


「外部によるダメージは頭蓋骨によって守られています。しかし今回の場合――――」



 私は自分を責めた。あの時、私が逃げずに裕翔と西林を抑えておけば、と。過去は変えられないのに。


「そして、F型の1番厄介な症状は。基本、何も無ければ半年かその位で記憶は徐々に回復していくのですが、その前までに患者様の、ある種の……そうですね。トラウマのような記憶を無理矢理取り戻そうとすると、脳の過剰な自己防衛が発生し、記憶が全部なくなってしまう可能性があります」


「なので――。患者様の為を思って、今夜の事件に関与した方々は半年間、顔を合わせないで頂く事になります」






 今日は0時を回ってクリスマス。


 サンタさんは、最高のプレゼントの代償として。わたし達との記憶を取っていってしまいました。









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