記憶
「お、俺は綾音の事を……」
『綾音ちゃんは凄く優しいのよ。裕翔が思っている以上に』
――嬉しい。本当に嬉しい。思い出せたんだ。母親の事も。綾音の事も。全てなくしてしまったと思っていたものが、こんなに簡単に元に戻るなんて。後で必ず綾音には謝らないとな。いや、綾音だけじゃない。全て思い出したら、みんなに謝って。そしてまた笑い会えるような日常を過ごすんだ。
『今から話す事が裕翔が記憶を失くす事になった事件の全貌よ』
喜びに浸るのは、すべてを思い出してからだ。そう言われている感じがした。言うとおり、全てを受け止める準備は出来てる。
『これは――――』
✽✽✽
「裕翔君、ごめんだお? こんな事君達にしか頼めなくて。綾音さんも」
「いえ、大丈夫ですよ」
「……ホントに君は………ぁ」
「え?」
「いや、何もないお? じゃ、また明日ね」
「西林さん、母さんと和代さんは?」
「今はね会議中っぽい。白井さんも山葉さんも凄いからなぁ、なんせ普通にこの会社とこのゲーム作った会社の両方掛け持ちしてるぐらいだからね」
今俺らがいる会社はゲームのデバッグを担当する会社。
いろんな種類のゲームのデバッグを行っていて、今回も母達のはからいでデバッグを手伝っている。いつもはリリース前にするデバッグなのに、今回はゲームが販売されてから、デバッグの依頼があったらしく。どうやら、少しデバッグ以外にもなんかの実験をする為に俺達に白羽の矢が立ったらしい。
幼馴染の山葉綾音は彼女の母の和代さんが手伝いを頼んでいるっぽい。
山葉家と白井家はマジで兄弟かってくらい仲がいい。何かあればすぐに山葉家に行くし、あっちもそんな感じ。親同士が親友だかなんだか知らないけどもう家族みたいに仲がいい。そんくらい仲がいいわけだから何をするにも俺たち二人は基本的セットになる。
「じゃあ、いいや。沙織が結構母さんに会いたがってるから……って言っといて下さい」
「うん。伝えとくね」
「ありがとうございました。失礼します」
俺達は社員の西林さんに軽く会釈して、会社を後にした。
「いやぁ〜、楽しかったな!」
「お前、本当にゲーム好きだよな」
「いや裕翔に言われたくないし。てか、楽しすぎ。もう社員の人達よりダンジョンの階層進んじゃったよ?」
「まぁ。俺達の得意なゲーム形式だったし」
「やっぱ、私達って相性いいんだよ!」
「っ……!? は、はあ? 何言って…………!」
「バーカ。ゲームのだよ。あはは! 何意識しちゃってんの?」
「あ〜、はいはい。認めるけど、お前さぁ……もうちょっとそう言うの自重しような」
「はいはい」
いつもの。なんの変哲もない会話。これがずっと続くもんだと思っていた。綾音と、ゲームして。一緒に帰って、体育祭とか行事とかしたり………………。でも…………、今年で最後になんだよな。
「あ、綾音。…………やっぱ駒台高校にすんのか?」
「…………うん。逆に裕翔は楚辺高校なんだよね」
そう。高校の進路が違うのだ。家はすぐに近くだし、高校が違ったとこで何も変わらないと思う。でも…………寂しいのだ。
なんで寂しいのか。ずっと一緒にいた親友だから?
違う。
――――俺は。綾音の事が。
「んじゃ! また明日ね」
いつもの別れ道。もう、ここか。今日も終わりか。
街灯が俺等を照らす。俺達のはく息もいつしか白くなっていた。明日は12月23日、終業式。やっと学校が終わると思うと嬉しい限りだが、来年は受験が待っている。冬休みはラストスパートをかけなければならない。
「おう、ゲームもお互いほどほどに勉強な」
「ういっす! さっ、帰ったらホラゲでもしよっかな〜!」
「おい。俺の話は右から左に抜けてんのか?」
お互い、吹き出す。そして笑い合う。
「ちゃんと聞いてるよ、勉強も頑張るよ」
「聞いてたのか。ほんじゃな」
「うん」
「あ、ねぇ、昨日の話覚えてる?」
「? 昨日?」
「また覚えてないの? 最近物忘れ激しすぎだよ? そんなので受かるの? 楚辺」
「いいから。昨日何話したんだっけ?」
「クリスマスイブ! 遊びに行くって言ったでしょ?」
「ああ。したな、そんな話。おう、24日は空いてるよ」
「良かった! もう絶対忘れないでよ!!」
「何処行くんだっけか?」
「遊園地!」
「オッケ。じゃあな」
最近、物忘れが激しい。なんでだ。あんな大事な事を忘れるなんて、少し異常だぞ。
まぁ、いいか。それよりクリスマスイブ。楽しみ、だな。
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