あの時の記憶Ⅱ
十六年、人生を歩んできた。その長いようで短い人生の中で目玉が飛び出そうになったのは今日が初めてだ。
『……あ、やっぱり姿を見せた方が良いわね』
母と名乗る『何か』に今までかかっていた靄が綺麗すっぱり消えた。靄の中から現れた女性は茶髪を後ろで結び、目は吊り目気味。白衣を纏っている。その姿は、まさに。
「お、母さん……!」
『良かった。なんの負荷もなくすんなり思い出してくれて』
視界がどんどん歪んでいく。
「あああああっ………………。うああ、……」
『これなら、もう大丈夫ね。裕翔の記憶は完全に戻せるわ。ほら、泣かないで』
いつぶりだろう。誰かに甘えたのは。
✽ ✽ ✽
「それで? 母さん、今現実で何処にいるの?」
『私は今病院にいるわ。その訳も追々話す』
『まず、裕翔の記憶喪失の原因は約半年前の『クリスマスイブ』の話なの』
「クリスマスイブの日何が?」
『ええ…………。それはそう、彼女の事、山葉綾音に関する事よ』
✽ ✽ ✽ ✽
「ああ! 貴女はやっぱり、綾音さんですねっ!!」
「もう、こんな事止めて!」
「いや〜、嬉しいですな。無能なサユリを庇って貴女はゲームオーバーになった。でもこのバクのおかげで、再会出来るとは! 感謝しないとですね」
「私はこれを最後にもう貴方の顔を見たくない――――」
「――――私は、貴方だけは許さないから」
✽ ✽ ✽
「ねえねぇ! ねぇってば! 一緒に、遊ぼー!」
家から真っ直ぐ進んで青い車の止まっている駐車場を右に曲がったところにある公園。そこでいつも一緒に遊んでいた、彼女の事。
「ん〜!! おいしぃ〜! 裕翔のお母さんの玉子焼き大好き!」
「やっぱ、美奈子さんの玉子焼きなんだよな〜!」
運動会、体育祭では毎回一緒にお弁当を食べていた彼女の事。
「あっははははは! 下手! ここはこう。織り込むんだよ?」
文化祭で一緒に栞を作った、彼女の事。
――――俺は。
1番近くにいた人を忘れていた。
――――俺は。
なんで、なんで。忘れていたのだろう。
――――俺は。
いつから忘れていたのだろう。
――――彼女の事も。
そして――。
この気持ちも。
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