あの時の記憶
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「…………またあんたか。ゲームオーバーになっちまったんだよ、もういいだろ。……そうだ、どうせ忘れちまうんだからあんたが誰だかおしえてくれよ」
白い。周りには何もない白い空間。ここは夢の中なのかどうかすらわからない。でも、地面は濡れている。というより、浅い池の中に寝そべっているような感覚だ。ひんやりとした感覚が脳を刺激しているせいか、今までの『何か』との接触の中で一番頭がクリアだった。
『いいえ、少しあなたは勘違いをしている。今回『これ』から覚めた時には逆にすべてを思い出しているわ』
「…………」
『貴方にとってつらい過去を今から話すわ。準備は大丈夫?』
両手でお椀を作り、池の水をすくい顔を洗う。――――つらい過去だとしても。
「たとえ、それがつらい過去だとしても。俺は――――!」
思い出されるすでに朧げな数日前の記憶。ミキと話していた時。俺が「何も覚えていない」と言った時。あの時のミキの見せたあの悲しそうな顔。申し訳ないと思った。自分のことを忘れられてしまう悲しさはどんなものだろう。あの時、ベットから目を覚ました時。涙を流す妹の横で一緒に泣いていたイチハに「貴女は誰ですか?」と聞いた時のあの表情。あれは絶対に忘れられない。
そして、いつも心の中にある何か大切なものを忘れているという直感。いや、確信にも近いような感覚。思い出さなくてはならない。だから、少し泣きそうになりながら叫んだ。
「俺は、たとえどんなつらい過去でも乗り越える!! だから、話してくれ」
俺はビビっていた。ずっと怖かった。真実を知る事が。
でも、今はその恐れはない。
俺の言葉を聞いて満足げな笑みを浮かべる女性。
『じゃあ、私がまず名乗るとしようかな』
どんな事実であろうと俺は驚かない。
『私の名前は――――白井美奈子。貴方の母親です』
目玉が飛び出そうになった。




