ロスト
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「ハイリスクハイリターンじゃねぇか?」
イブは笑って、頷く。
「そう、これは大博打だお。負ければこのゲームは終わってしまう。でもテスタ、君を倒すのはそれ位の覚悟がいるよね。だってその能力は最強だから。なんせ自分の脳に多大な負荷をかけて――――――記憶を失う代わりにこの世界の全ての物質を創り出せるんだから。言ってしまえばテスタ、君もハイリスクハイリターンだね」
「確かにそうだな。で? イブ。お前はこの能力を最強と言ったよな? 最も強いと。ならばこの加護よりも弱い加護で、弱い能力で、俺に勝てると?」
イブはさも当然のように言う。笑みを消さぬまま。
「ゲーム内において。だお、その能力が最強なのは。私はこのゲームのハッキングした、いわば神だお? 人間の位での最強は、神の域では簡単に覆る。したがって――――――私が最強なのさ。神の力は強力だお」
「へぇ……」
「私の加護は『穴』。私の直線数十メートルの空間を喰らい尽くす」
そう言いながら、イブは人差し指をゆっくりとこちらに向けた。向けてきた。
「ほら? どうだい? 痛いだろ」
「……へぇ……!」
右腕が消された。『穴』に引きずり込まれたのだろう。
厄介な能力ではある。だが、『穴』はイブに設定されてから、能力として発現する。指をこちらに向けてからタイムラグがあったことをふまえると不可視であるが、回避できない事はないはずだ。
そして不確定要素としてアクション無しでの攻撃が可能か否か。さっきは、俺に、指をこちらに向けたことで能力が発動されたことは間違いない。ならば何かアクションを行った時に回避行動を行えば良いのだがノーアクションの場合ではそれが出来ない。
それがわからない内は迂闊に飛び込むことはしないほうが良いな。
頭をフルに使って相手の情報を整理する。
勝てば、皆が笑える世界に帰れる。
緊張で手が震えている。
剣を創る。創る。創る。創る。創る。創る。創る。創る。創る。創る。
「ハハハハッ! 驚きだなぁ。もうわかってるんだろ? それなのにまぁ……。そんなに創って」
「いいんだよ。お前を倒せばみんな無事に元の世界に戻れるんだろ? なら、俺の記憶なんて安いもんなんだよ」
「そうかい? ならいいけどさ」
「さぁ。お前にとってはここで時間を使いすぎてはまずいだろ? 始めようぜ」
「でも、テスタ。君の様子を見る限り、長期戦になりそうだねぇ」
「一撃で沈んでくれれば、苦労はねぇんだがな」
剣を一斉掃射。剣一本一本が自我をもっているかの如く、上に飛んだイブを追尾する。しかし、上に飛んだイブが突如として消え、同時にテスタの背後に現れ、剣を深々と突き刺した。どうやら、イブの能力は穴と穴を自由に行き来することも出来るようだ。
「いやー、これは…………テスタの方が一撃で沈む流れかな?」
「それはないな。これは………………フェイクだ」
「刺した瞬間に把握したお。良くやるよね、君は昔から器用だった。まったく………………透明マントを創り出すとは」
「でもその様子だと俺が何処にいるかも分かっているんだろ?」
「結論から言ってしまえば分からない、だお。さっきも言った通り、刺すまで分からないんだお。全く、システムを乗っ取っても君の能力ともう3つの能力だけは、どうしても解析できなかったんだ。本当にやってくれたよ。君の親御さんは」
「俺の…………親?」
今は良い。勝ってから聞き出せば良いだけだ。質問が喉まで出かかっていたが、踏みとどまった。いや、実際には少し出てしまっていたか。
「いやいや、全員潰すのは骨が折れるお。どこぞの忍者漫画かい? こんなに分身作っちゃってさ。こんなのいつ作ったんだよ」
「透明マントで隠れていた時にな。さぁ、ここで問題。誰が本物でしょう?」
「全員潰すだけだお」
「答えになってねぇよ」
「「「はあああああああああっっっ!!!」」」
一斉に、数百体のテスタがイブに向かって躍りかかる。
イブも、正面から向かい打つようだ。剣に穴を纏わせ、空間を削り取っていく。中々の腕前を見せつけ、的確に、正確に。冷徹に。まるで――機械のように――――決まり決まった動きをする機械のように。テスタを殺していく。
「「「「「乱舞!!」」」」」」
テスタの剣が光を帯びて、その光―――――、残光がゆらゆらと波のように。ゆあーんゆよーんゆやゆよん、と揺らめく。イブも同時にスキルを発動する。『シールド』。物理攻撃を防ぐ盾を顕現させた。
火花が散り、ヒビが入り、亀裂が広がり、そして爆ぜる。
「……!!!」ガードを崩され、僅かにスキが生まれる。
「「「「「今だああああああああああああ!!!!」」」」」
『『神速』』。お互い同時時に同じ能力を使う。ビュッ、と風の切る音がして数十体のテスタが斬り捨てられた。イブは少しの切り傷しか負っていない。
「いやはや、これに頼るのは嫌だったんだけどねぇ」
『設定変更』――――――――自動排除。




