最強の代償
更新遅れてしまって本当に、本当に申し訳ありません!
もうすぐでこの小説も完結です。
こんな不定期で申し訳ない限りですが、最後までお付き合い頂けると幸いです。
『ねぇ、ねぇってば』
「なんだよ? また出てきたな」
『五年も一人だと寂しいんだよ』
「なら、丁度良いや。なぁ対価ってなんなんだ? 俺の宝物ってなんなんだ?」
『教えない。じき分かる事だし。そろそろ私と会えるかもね』
「………………はぁ」
今回は短かったな。
さて、ここは……。ああ、いつもの宿屋か。
「お兄ちゃん…………」
「あ――――、あれ?」
おかしい。なんで俺の正体がバレてるの? でも普通に考えて見ると新しいデータが俺って言うより、シロカに戻ってる。って考えたほうが自然じゃないか。
「なぁ、サユリ。今俺って、シロカだよな?」
「うん、そうだけど……、何で?」
やはりか。気を失ってからどうやってかは知る由もないけれど、この宿屋に戻ってきてデータが戻ったのだろう。
「ああ、あの…………」
何でと聞かれて直ぐに答えてしまいそうになり、それをぐっと堪える。あのスーツの男との約束を思い出したから。
――――――データの正体が貴方と露見してはいけません。その時はそのデータは使えなくなると思っていてください。
「なんとなく」
「なぁイチハ、サユリ。あいつは?」
二人とも黙って目を伏せる。は? おいおい、そんな顔すんなよ。まるで――――――まるで、ゲームオーバーになっているみたいじゃないか。
「詳しく話せ」
「……うん」
それから小一時間、サユリとイチハから詳しく14階層の話を聞いた。カズがサユリを庇ってゲームオーバーになったこと、ランク1位の無敗の双剣王に助けられた事等。しかしそこまで詳しく聞くと疑問を覚える点がある。
「なぁ、その無敗の双剣王はカズがゲームオーバーになったところを見ていたのか?」
「うん、多分見ていたと思うよ。私を助けてくれたんだから…………それなりに……近くに、いたはずだから」
おいおい。じゃあ、なんで――――、俺はその事を覚えていないんだ? 確かに、少し意識を失っていたがテスタのデータに変わった時にはちゃんと意識があった。なのに――――なぜ……?
「分かった。もう分かったから、泣くな? あとこれからダンジョンに行くときは絶対俺も連れてけよ?」
サユリは泣きながら首を縦に振った。言質はとった。
「少し休む」
とっとと終わらせよう。こんなゲーム。
そして、誰も泣かなくてもいい世界に戻るんだ。
「変更」
テスタのデータになり、無色透明の催眠ガスを創り出す。
そう――――――テスタの加護は『創製』。
万物を創り出す能力。すなわち最強の能力だ。
二人とも寝静まったところで俺はダンジョンへ向かった。
✽ ✽ ✽ ✽
「ふぅ…………」
圧倒的。もう二階層も突破してしまった。
あのベイリンを凌駕するボスモンスターであるのにも関わらず、ノーダメージでクリアしてしまった。
――――さて、後二階層は上がれそうだな。
――――17階層。ボス部屋。
「…………」
『クロロロロロロロ………………!!』
17階層のボスは、『飲み込む者』。タコのようなモンスター。触手が無数にあり、そこから繰り出される攻撃は多彩で強力。しかし、俺にはそれが見えている。
他の触手を躱しながら、一つの触手を斬り落とす。しかし一秒とたたず、それは再生する。
この――――『飲み込む者』の一番の特徴は全ての触手を同時に落とさないと、永遠に再生し続ける事だ。
しかし、パーティーで挑むこのゲームゲームには本当にぴったりなボスと言える。
俺は数十本の――――黒く、黒い、大剣を創り出す。剣の柄まで真っ黒に染まっている。
「潰せ」
直後、剣が全ての触手を斬り落とす。
『ロ………………!!』
『飲み込む者』の触手攻撃は封じた。もうここまでくれば、勝利も同然だ。
「これで4階層突破か」
あ? あれ? 4階層? 俺は……さっきの『飲み込む者』の前に倒したボスはどんな奴だったっけ。
お、覚えていない?
そうか、そうだったんだ。俺は――――――――。俺は…………。
この能力を使う度に記憶を失っているんだ。これが俺の対価。最強の対価。俺の宝物。
「やぁ、テスタ?」
頭上で声がかかる。声で分かる。俺達をこのゲームに閉じ込めた張本人。
「イブ…………!!!」
「あれ? まだ僕の事は思い出してないの?」
「は? 何を言って――――」
イブは少し面白くなさそうに舌打ちした。
「まぁ、いいお。このままだと普通に僕のところまで1日とかからずついちゃうから。ここで、始末させてもらうお」
そう言いイブは、剣を抜いた。




