珊瑚海の死闘3
1942年5月9日 1500
珊瑚海 北西部
IJN祥鳳
笹井醇一中尉は祥鳳の飛行甲板から飛び立った。二日前空母蒼龍に着艦した彼は彼らを出迎えた少将にこの海戦に参加したくないかと言われ彼は二つ返事で参加を希望した。
そして彼は祥鳳に回された。損失した96式艦戦の変わりには彼の零式戦は強力であり台南空の人間だけあって艦長は喜んでいた。笹井は彼らの期待に沿うよう勤めるつもりであった。
高空へ飛び立った彼は坂井、太田、西沢の三名が今日の僚機であった。
10分ほど飛んでいたとき、坂井機が彼の機体に並走し坂井が前方下方を指差した。
そこには青色に塗装された、彼らのような訓練を受けた(そして実戦を生き抜いてきた)ものたちにしか見つけられなかったであろう機体、つまり敵機がいた。
「っ…敵機!」
その言葉が漏れると同時に彼は機体をそこへ向け、彼の優秀な部下たちもその後に続いた。
先頭にいた機体(おそらく雷撃機)に照準を定める。そして引き金を絞り、両翼から20mm機関銃が火を吹き、雷撃機が爆発する。彼の機体はそのすぐ横を通り過ぎた。
珊瑚海における空母戦、その第二ラウンドが始まった。
IJN祥鳳 艦橋
直衛機が敵攻撃隊を見つけ、迎撃に入ったのを確認したMO機動部隊前衛は迎撃体制に入った。
第六戦隊の四隻は祥鳳の四方を固めていた。
五隻の駆逐艦はその外円を固め死角をなくしているようにも見えた。
「敵攻撃隊数、およそ60。真直ぐ突っ込んでくる!」
「直衛隊、敵攻撃隊への迎撃続行中。増援は出しますか?」
「出そう。笹井君達だけだと裁けないだろう。」
伊沢は先ほど来たパイロットの名前を言った。
その言葉のすぐに、甲板から4機の零戦が上がった。
それを待っていたように米軍機が分散した。
「敵攻撃隊、一部を除き本隊を離れます!」
「何!?」
(我々を狙わない、だと。つまり目標は二航戦か。)
伊沢は地団駄を踏みかけた。しかし彼は艦長であり動揺を部下には見せられなかった。
「一機も二航戦に向かわせるな!直衛隊には何としても突破させないよう言うんだ。面舵30、横っ腹を敵に見せろ」
「宜候、面舵30。」
祥鳳の余り大きいとは言えない船体がさらけ出される。
その挑発にのるアメリカ人は多かった。
「敵攻撃機、約20、本艦に向かいます。」
「誘いに乗ったな。かかって来い…。」
伊沢の闘志は燃え上がっていた。もっとも一部の人間には狂気に見えていたが。