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来たぞ我らの


種族は様々だが、その存在そのものが迷惑になってしまうというのも悲しい話だ。

特にデカいと大いに困る。



ある日の事、仕事も終わり、とっとと帰ろう、と吉田と談笑しながら宇宙港を出ようとしたときの話である。

突然、何かが落ちてきたような地響きが起こった。

「うわっ、地震か!?大丈夫か!」吉田が咄嗟に私を庇おうとしたが、この程度で壊れる建物でもあるまい。

それにしても、地震にしては妙な気もする。初期微動も無かったし。

すると何やら出入り口で騒ぎになっている様子である。

「何かあったのかな」と吉田と二人で駆け付けると、なんと、身丈が40メートルはありそうな巨人がいたのだ、それに怪獣も!

巨人の方は銀色ので顔を見ても表情というのが読み取れない。怪獣の方は二足歩行する巨大なとげとげしたイグアナみたいであった。

「何だあれは!?」全く同感である、ありゃなんだ。

巨人と怪獣は今にも戦いだしそうな雰囲気であったが、空からまた巨大なものが降りてきた。

「あれは、自衛隊の宇宙艦隊じゃないか?」

現れたのは横にでっかく旭日星系旗(旭日の周りを太陽系惑星が回る様を模した旗)が描かれている宇宙戦艦である!来たぞ我らの自衛隊!

さらに続けて、ユニオンジャックの描かれたものと、赤白緑の線が(多分大急ぎで)描かれたものも現れた。

それぞれ日本、イギリス、ハンガリーの宇宙艦隊だろうが、明らかにハンガリーのだけ艦影が違う。

「あれはうちの船だな……」といつの間にか隣にいたメロードが呟く。

「って事は、早速貰っちゃったのかな」「多分最新のヤツだろう」いいなぁ。

しかしこんなところでドンパチされては堪ったものではない。

自衛隊の艦、山汐型宇宙戦艦から交信を試みているようである。

『即刻退去せよ、さもなくば交戦の意志ありとして攻撃を開始する』

あ、多分これ中に乗ってるの自衛官じゃなさそう。

「うん、これ多分ガウラ帝国軍の人乗ってるよね……」

自衛官はあんなこと言わないのである。すると巨人の方もそれに答えた。

『私は君たちがM87星雲と呼ぶところからやって来たラノレトウ人だ』

「ゲッ」とメロードが声を出す。一体何なのか。

「宇宙の鼻つまみ者だ、独善的な思想を押し付けてくる、危険な武装集団だ」

何でも、彼らの考える平和を強制してくる上、意に沿わないとなると忽ち攻撃を仕掛けてくる危ない連中なのだそう。

しかも一人が一艦船並みの戦力を持つので非常に質が悪いのだという。

そんな奴が一体何しに地球へとやって来たのか。

『この宇宙怪獣を退治しに来た。あなたたちに危害は加えない』

降りて来た時に結構被害出てるし、その巨体だといるだけで危ないし、それに不法入国である。

しかも、宇宙怪獣の方は割と大人しい、巨人に怯えている様子である。

『怪獣の不法侵入は罪に問えないが、貴様は知的生命だろう、出て行くがいい』

『宇宙の平和と秩序を守るのが私たちの使命だ』

『なら法を守れ、そもそもお前たちは銀河系不干渉条約に調印しただろうが、なぜここにいる』

痛いところを突かれたのか、間髪を容れず目から光線を発射した!

しかし、山汐はバリアーのようなものを張って凌ぐ。

同時にイギリスの戦艦レナウン、ハンガリーの戦艦トゥラーンが攻撃を開始する。

それぞれ、レーザー砲のようなものとレールガンみたいなのを発射した。

『デュワアアアアアアアアア!!!』

と巨人の身体が吹っ飛んでいく。ビルにぶち当たって膝をついたところに宇宙怪獣が駆け寄ってきて腹に蹴りを入れた。

『ボォァ!!』

余程腹に一物を抱えていたのだろうか、怪獣は何度も蹴りを入れ続ける。やめたげてよぉ!

戦艦三隻はその様子を周りから眺めている、まあこの状況では……。

そのうち、巨人はクタッとなって動かなくなった。し、死んだのかしら。

「いや、連中がそんな簡単に死にはしない、気絶か、狸寝入りだろう」

こんなところで死んでもらっても困ると言えば困るのでそれは安心した。

「あ、浮き上がった!メロード君あれは」「あれは念力だろう」

あの巨体がフワーッと浮き上がる、巨人はぐったりしているので気絶したのだろう。

そして、レナウンが何かを発射すると、空中にポッカリと穴が現れた!

「凄い!何あれ何あれー!!」吉田も大はしゃぎである。

「あれはワームホール、かな。私も見るのは初めてだ」

空間が捻じ曲がったかのような、いや事実捻じ曲がっているのだろうか、空間そのものに穴が開いている。

巨人はその中へポイッと放り込まれた。そして、レナウンが再び何かをワームホールに向けて発射すると、シュッと穴は閉じてしまった。

「あれはどこに行くんだろう」「さぁ……」

全く困り果てた宇宙人だ。幸いにも、後日、死傷者は出ていないことが発表された。

とはいえ建物の被害はそれなりの物となってしまったという。

怪獣の方は大人しいので、適当な無人島にて飼育を計画しているらしい。大丈夫かしら。


そして数日後。メギロメギア人が現れて、何やら憤慨している。

「お前ら!ラノレトウ人なんて押し付けやがって!!」

どうやら、いきなり星系内に現れたらしく、機嫌が悪かったのか交戦状態となったらしい。

「ただでさえ賠償艦なんかで艦隊戦力が減っているというのにぃー!!」

相当ご立腹のようだが、私に言われてもな!?

確かにテキトーにワームホールに放り込んだのはよろしくない事だろうが……。

「もぉー嫌いっ!」

彼(彼女?)の叫びが宇宙港に響く。


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