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ラブリー・ランチョンミート


日本に来る外国人観光客には案外日本人にとっては大した事も無い事がウケていたりもする。

それと同様で、地球人にとっては取るに足らないような意外な食品が宇宙人にウケていたりもするのだろう。



最近では宇宙人関連のテレビ番組も増えてきた。それだけ身近になったという事であろう。

地球外人への排他的な風潮は徐々に鳴りを潜め始め、街中でも日本人と宇宙人が並んで歩いている光景も増えてきた。

とはいえそれは日英に限った事のようであり、在日在英外国人はあまり快く思っていないという話である。

そんな風潮の中、以前流行っていた外国人に日本に来た理由を問いかける番組があったが、それの宇宙人版と言うべき番組が現れた。

勤務を終え、家に帰ってきて他にする事も無いのでボケーっと眺めていたが、とあるカラカル型人種(こいつらよく来るな……)があるものを目的に地球に来たという。

「銀河系でも著名なアミ人のグルメ旅行をしている美食家……美食というより悪食だけど、その人が紹介した地球の食べ物があるんだ!」

そう言って懐からランチョンミートの缶詰めを取り出した。例のしょっぱい成型肉の缶詰だ。

「美味しいランチョンミートだよ!」自慢げな表情をしているが、リポーターは困惑気味である。

「あなたの星ではこういった食べ物は無いのですか?」

「無くはないけど、普通こういうのって非常食か軍用食だし、一般に流通する事は少ないんだよね!」

そういうわけでそこそこの人気を博しているという。

「レシピにも困らないし!卵とランチョンミートを一緒に焼いてもいいし、卵とベーコンと一緒にランチョンミートを付け合わせても、卵とベーコンとソーセージとランチョンミートでも、ランチョンミートと豆…」

と続けているとこの人物の連れが恐らく即席で作ったであろうランチョンミートの歌を歌い始めた。

「聞いた話だと北方の海賊民族がこれを作り出したんだよね!」

リポーターも何の事だかという表情で唖然としており、そこでVTRは終了した。

宇宙人の言ってる事はよくわからんが、とにかくランチョンミートが人気らしい。


宇宙港のお土産売り場でも早速ランチョンミートが並び出した(というかお土産売り場なんてあったの知らなかった……)。

まあ私もランチョンミートは嫌いではないのだが、ランチョンミートを買ったとしてもどうやって調理すればいいのか、という問題である。

日本の中でも沖縄ではランチョンミートというのはポピュラーな食材であり、ランチョンミートと卵のおにぎりなんかが有名という。

他にもサンドイッチはもちろん、ランチョンミートをゴーヤと一緒にチャンプルーにしたり、ランチョンミート味噌汁、ランチョンミート天ぷらやランチョンミートおでんなど様々な料理にランチョンミートは使われている。

そんなランチョンミートの事を考えながら仕事をしていると、カラカル型人種の入国者が訪れた。

「知ってる!?ランチョンミートの事!」

そりゃあ当然、現に今の瞬間までランチョンミートの事を考えていたところである。

「美味しい?ランチョンミートって!まああの人がお勧めするぐらいだから美味しいんだろうけどランチョンミート!」

この人物もやはりランチョンミート狙いのようだ。銀河では空前のランチョンミートブームでも到来しているのだろうか?

是非ともランチョンミート製造会社に教えてやりたいものだ、星間ランチョンミート企業も狙えるであろう。

「いいよねぇ……私たちの星にも来て欲しいなぁ、ランチョンミート製造会社」

実際そうなれば彼らとランチョンミート企業と双方にとって喜ばしい事である。

ランチョンミートを好きな時に好きなだけ食べられるようになれば、ランチョンミート天国だ。

「まあ好きなだけは食べられないだろうけどさ、ランチョンミートって塩分過多だし」

とにもかくにも、ランチョンミートはこのカラカル型人種を虜にしているようである。

「お勧めのメニューは?あの美食家が言うには『ランチョンミート・ランチョンミート・ランチョンミート・ランチョンミート・ランチョンミート・ランチョンミート・ランチョンミート・豆・ランチョンミート・ランチョンミート・ランチョンミートの豆抜き』が美味しいんだって!」

それはただのランチョンミートではないだろうか?というか何かわけのわからない情報を掴んでいる気もする(先の北方民族の話も)。

恐らくだかそのようなメニューは無い、と伝えると露骨にガッカリした表情を見せた。

「えー、『ランチョンミート・ランチョンミート・ランチョンミート・ランチョンミート・ランチョンミート・ランチョンミート・ランチョンミート・豆・ランチョンミート・ランチョンミート・ランチョンミートの豆抜き』は無いの?」

無論自分で作ればその限りではないだろうが、そんなランチョンミートだけの虚無のような料理は存在しないと信じたいものである。

「あ、そっか!ありがとう!まるでランチョンミート博士だ!」私はランチョンミート博士ではないよ!


ここ数日、さながら、スパムメールの如くこの話題を見聞きしてばかりである。

愛しのランチョンミートよ、さっさとくたばれ!


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