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あなたは神を……


日本において新興宗教が嫌われているのは例の地下鉄の事件が原因であるのはよくご存じだろう。

無論宇宙にも新興か伝統かを問わず宗教は存在する。そして宣教師も。



ここ最近の日英宇宙艦隊の登場は、まさしく英国の産業革命、日本の明治維新を思わせるような衝撃を宇宙各国らに与えた。

特に軍事力で追い抜かれた中小国らに与える衝撃は計り知れず、無論この事だけが原因ではないのだが、建艦競争と拡張主義の蔓延をより強く押し進めた。

しかし大国らは無関心であった、簡単に捻り潰せるからである。

そして、その拡張の尖兵というのは地球外であっても宣教師のようで、その宣教師がこの地球にもやって来たのだ。それがこの人物である。

「汝、神を信ずるかね」

今時そんな勧誘の仕方って無いと思うのよ私。

豚かはたまたネズミかなんかなのか、というなんとも形容し難い容貌であるメチルスイ人の宣教師は地球に自身らの信教であるナマタ教を布教しに来たのだという。

「日本人というのは信仰に熱心ではないようだが。信仰こそ大義であり人生の糧である」

熱心ではないが、別に宗教からの影響が無いわけではない。

日本人の価値観というのは神道や仏教、儒教、道教、近年ではキリスト教などの価値観が折り重なって構成されている。

その上、国家元首たる天皇陛下も神道の最高神官であり、地球でも稀な宗教国家という一面も持っているのだ。

という事を懇切丁寧に説明するも、だからどうした、という様子である。

「おかしなことを、ホホホホ。日本には国教が制定されていないではないか、それでいてよく敬虔なる信徒と言えるな」

まあ、実際日本人が宗教に熱心ではないし、敬虔とも程遠いのは事実だ。

「確かに、地下交通機関にイソプロピルメチルフルオロホスホネートをばら撒かれては不信感を感じるのも無理もない」

イソプ……サリンって言えサリンって!

「しかしむしろ安心したがね。国体を変えずに布教する事が出来るという事に。それで、汝、神を信ずるかね」

私は結構、御免被るというものだ。神は八百万柱程いれば十分なのである。

「それは良くない、我らが神を信仰するといい。さすれば苦難は訪れない」

長いブタ鼻をヒクヒクさせながら言うその目は、なんとも虚ろなようにも見える。元々こういうのかもしれないが。

すると彼は急に私の頬を軽くひっぱたいた!痛い!

「ほら、こういう事になボボボボボボボボ」

そして彼の背中にメロードのエネルギー警棒が突き刺さった、何がほらだこのアホめが!


後日、もうそんなやつは来ないだろうと私は甘ったれた考えをしていたのだが、またしても来てしまった。

「やあどうもどうも。宗教の勧誘なんだけどさぁ」

そんな軽いノリの勧誘の仕方があるか!宗教はお断りだ、八百万の神々の威光にひれ伏せ!

またしても妙な人物が現れた、彼はカドミン人の信仰するイアチア教の宣教師であった。触角の付いた猫か犬みたいな容貌である。

「まあそう言いなさんなって。安くしとくから!」

宗教に安いも高いもあるのだろうか。やたら寄付を求める宗教なら掃いて捨てるほどあるが。

「まずこの宗教札、これが無いと入信できないんだけど、今ならなんと原始惑星割引で8割引きなんだよね!」

まず入信に金がかかる時点で高い。

「んで、信徒札と信徒名簿に名前を記入するのにまたお金がかかっちゃうんだけど……こちら!」

何かの札を取り出す。免罪符とでも言うつもりなのか。

「よくご存じで!この免罪符を購入すると、なんと無料で記入できちゃう!」

名前を記入しないとどうなるというのか。

「とんでもない事をお聞きになりますなぁ!半年に一回更新しないと追い出されて処刑されてしまうんだ!」

絶対入りたくないぞこんな宗教!ひどすぎる!

「なんと、お気に召さない?それならばこちら!奴隷札!これを適当に捕まえてきたヤツに付ければ奴隷として所持することが出来る!もちろん自分に付けてもいいけどね」

どこまでもヤベー宗教である、というかこれ信仰してるの?カドミン人は?

しかもどういう信仰なのかも伝わってこない、なんか互いに縛り合う腐敗した組織みたいな雰囲気だけが伝わる。

「それは掟の第12条に引っかかるから伝えられないね」

入らないからとっとと入国してくれ、と書類を返したところ、彼は急に黙り込んだ。

「なるほど、仕方ないねぇ」と彼は懐から銃器のようなものを取り出し、メロードに取り押さえられた。

とにかく酷い連中である。宇宙碌な宗教ないな……と思ったが、ぶっちゃけ地球にも碌な宗教というものはないな、と思い直し、業務に戻った。


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