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消えた救世主:警備の本領


多分近くのガソリンスタンドだろう。

彼は地球の燃料を『身体には悪いが味はかなりのもの』と評していたので。



店を出たものの、街は混み合っている。そりゃそうだ、ハロウィンだし(というかまだハロウィンなのか!?)。

心なしか人が増えているようで、うへぇ、と思いつつ人を掻き分けて進んだ。

が、駄目。なんだか思っている方向とは全然別の方に向かっている、というか人の波にどんどん流されていく!

ああ、どこまで行ってしまうのだろうか……これだからこういうイベントはクソッタレなのだ。

貴重品を急いでボンバージャケットの内ポケットにしまい込み、前のジッパーを引き上げた。

ぶつくさと文句を言いながら流されるがままに進んでいく。

一体この集団はどこへと向かっていくのだろうか。と、考えていると、急に腕を引っ張られた。


あまりいい予感はしないが、如何にもな柄の悪い連中に路地裏に引き込まれたようである。

私は素早く懐から財布を……あれ、どこやったっけ。

「別に悪いようにはしねえよ」今日日そんな事を言う人間を私は初めて見たよ。

しかしながら、なんというか、出来の悪いWeb小説のお約束のような状況である。

全く困った事が幾つかあって、一つはここがどこだかわからず、表通りの連中は誰もこちらを気にかけない事。

それと、財布を差し出せば素直に返してくれるような輩ではなさそうであるという点である。

更にもう一つ、恐らく、カッコいいヒーローは酒に酔ってるので現れないであろうという事。

いやしかしこれもう、どうしたらいいのかわからないんですけどマズいなこれしかし。

恐怖を強く感じると体が動かなくなるというが、まさしく今がその状態で、へぇ~ホントだったんだァとか考えてる場合でもなくて、本当にどうしよう。

メロードでもバルキンでも、この際吉田でもいいから誰か助けに来ないだろうか、来るわけないか。

と、観念しかけた時、アイツが現れた!

「おいおい、警備がてらに歩いてりゃ、やっぱり不埒者がいやがったな」


エレクレイダー!である。

「そうだぜ、この俺エレクレイダー様の参上だ!」

私を引きずり込んだ連中は、なんだこいつは、という顔をしている。まあ当然である。

「治安が悪いからよぉ、職業病ってやつかな、警備していたのさ」

流石である、今日に限っては手放しで褒める他ない。

「礼を言うぜ、悪党ども。この俺がかっこよく活躍できる場を作」

ガァーン!と大きな音が鳴った。エレクレイダーの顔面に大きめの石が当たった音だ。

「いってぇ!なんて事するんだ、地球人なら死んでたぞ!ほら見ろ、傷がついたじゃないか!」

ついてるようには見えない。というか痛覚があるのか、いらないだろロボに。

「この野郎!」と悪党ども。再び石を投げる。トンテンカンと金属音が鳴り響いた。

「痛い痛い!お前ら、人を機械だと思って好き放題するじゃねえか!明日の紙面に初めて人造人間に殺された地球人って紹介されたくなきゃ程々にしときな!」

そう言うと、エレクレイダーの腕が機械音を鳴らして開いた。連中はぎょっとする……が、何も起こらない!

「……あ!しまった、非番だから武装は無いんだった!」

助けに来てもらっておいてあんまりこういう事を言うのはよくないが、やられっぱなしである。

「な、なんだよ驚かせやがって……!」と連中。私もそう思う。

「しょうがねえ、こういう時は逃げるに限る」と私を抱きかかえて逃走した。


一時はどうなるかと思ったが、なんとかなってよかった。

「ま、この俺様にかかればざっとこんなものさ。この俺は警備員だからな、警備の本領ってのを見せつけてやったわけだ」

いやそれはどうだろう、助かったからよかったものを。

「……まあ、ちったぁしくじったがな」

今日は素直に礼を言うとしようじゃないか。なんだか酔いも冷めちゃったし、店に戻ろう。

「あ、俺ガソリンをペットボトルに入れてもらったんだけど、持ち込みしても大丈夫なのか?」

持ち込み以前になんかの法律に引っかかりそうだが、少なくともコップは貸してもらえないだろうね……。


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