表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/171

消えた救世主:ケルトの盆祭り


10月の末と言えばハロウィンらしい。

…………となると騒ぎ出すのが宇宙人どもだ。意外とミーハーな連中である。



ハロウィンっていうのは、お察しの通り私はあまり好きではない。

そもそもケルト人の文化であり、実は私はケルト人ではなく日本人であるからだ。

更に言うなら、くそったれた連中が暴れ回ってスリや暴行、性犯罪を嗜むようなくそったれたイベントに好んで参加するような人間など……少し熱くなり過ぎた。

とにかく、こんなものに参加するのは絶対にありえず、大変な不本意な事であるのだ。

「あはは、もう3回ぐらい聞いたよ」と言うのは鉄騎に扮したバルキン・パイであった。

そうなのだ、ここはハロウィン会場なのだ。なんでだ。

「なんでって、クラウカタ警備員が行くならって」クラウカタというのはメロードの姓である。

つまりは例の宇宙人に今回もまんまとしてやられたという訳だ。

というわけで私も、私というのは心底嫌な人間なので、第二次世界大戦時の米空軍パイロットの仮装をしている(だって恐ろしいものに仮装するんだろう?)。

「サイコー!あなたらしいね!」とバルキンには好評だ。

今日は佐藤も来るらしく、吉田が張り切っている。

「いや、俺もあのロボットアニメをみっちりと仕込まれてさ、すっかり大ファンだぜ」

と、情報参謀とやらの仮装だ。絶対歩きづらい。

肝心のメロードはと言うと、ゲームのキャラクターの仮装だという。狐がパイロットのやつ。

「カッコいいよね、開発者はわかってるよ、うん」

思いっきりキメ顔なのがなんとも腹立たしいという物だ。似合っているが。

「ふっふっふっ、この愚か者どもめが!」などと言いながら現れたのは佐藤である。

「おおっ!破壊大帝!」と吉田。なんか二人で盛り上がっているので、二人は二人だけで放っておいた方がいいのではないだろうか。

「あなた達もそうでしょう?こんな錆臭い馬は邪魔だよね」鎧をジャラジャラと鳴らすバルキン・パイ。

とは言うが、私としてもせっかくみんな集まったのだからどうせなら一緒にいたい。

「あらま本当?だよねー!さぁ楽しくやろうよ!…………何するお祭りなの?」

私がケルト人の歴史から近代合衆国の児童労働についてまで説明しようとすると、もう一人のメンバーが到着した。

「主役の登場だぜ」と狼男の仮装で現れたのはエレクレイダーであった。

「エレさん、お久しぶり」「ああこないだの……誰だっけか」

佐藤だ佐藤、機械のくせに物忘れをするんじゃない。

さて、全員揃いはしたのだが、一体なにをするものなのだろうか、というのは私も思うところである。

先日にもハロウィンイベントが行われたが、器物破損が相次いだので暴動と勘違いしたガウラ軍の歩兵駆逐戦車が緊急出動し、アダムサイトガス砲弾を撃ち込んだという出来事があった。

その影響なのか、随分と町は穏やかな様相を呈している。というか思いっきりそれが原因だろう。

穏やかとは言っても、以前ほどの乱暴な騒がしさが無いだけで賑わってはいるのだが。

「つまり、お菓子をくれない人にイタズラすればいいのね?」

説明したところ、若干ニュアンスが異なるがバルキンはわかってくれたようだ。

すると、通りすがりの魔女に近づいて行った。

「お菓子ちょうだい!じゃなきゃどうなるかわかってるよね!?」

「ぎゃーっ!」魔女は一目散に逃げていく。馬型宇宙人は見慣れない人も多いだろうし、仕方ないね。

バルキンの方は何だよもう、と膨れっ面を多分していることだろう。鎧で顔は見えないが。


というわけで、ビアガーデン?っぽいところが開いているとのことなので、そちらに向かった。

佐藤が予約してくれていたようだ。「流石は破壊大帝さま」と吉田。

「全くこの愚か者どもめ、こういう時こそ頭を使うのだ」とはいえ、宇宙人3人と私と吉田である。

「…………そうね、無理だね」察しがよくて助かるという物だ。

そうしてるうちに食事が運ばれてきた。すごくハロウィンっぽいぞ!

色とりどり(黒と橙の二色が強いが)の料理に、メロードとバルキンは目を輝かせている。

「テンション上がって来たよ!」「すごいね、祝い事の料理みたいだ」

私も驚いた、カボチャや魔女、おばけなどを模る凝った意匠には目をチカチカさせられる。

「あんたは昔っからそうだよね」と呆れる佐藤。

こういうイベント事でいつも聞くセリフなので、そういうのわかった上で付き合ってくれてるんだろうに。

「そうだけどさ。じゃ、乾杯といきましょうか」

カンパーイ、とジョッキをぶつけると粉々になった。メロードとバルキンのせいだった。加減しろバカ!


さて、酒と食事も進み、キツネとウマは随分と酔っ払っている。

「この鎧重いよ!誰だよ着せたの!」自分で着たのでは?

佐藤と吉田も随分と話し込んでいる、どうやら情報参謀と防衛参謀のどっちが忠実なる部下であるか、の議論を交わしている。

メロードは、おめめをパチクリさせていて、黙々と料理を食べている。

全くハロウィン感は無いが、まあそこそこ楽しめているのでよしとしよう。

ふと思ったのだが、エレクレイダーの姿が見えない。

吉田にその事を聞くと「トイレじゃないの?」と言う。ロボがトイレに行くか?

そもそも『俺は飯は食えねぇけどな』と言っていたから暇だから席を立ったか、ガソリンでも買いに行ったのだろうか。

メロードやバルキンにも聞いてみるが「知らないよ!誰だよこの鎧着せたの!」「この状態じゃ超能力も使えないし~」とお話にならない。

うーん、でもまあエレクレイダーだしいいかなぁ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ