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オリンピック作戦:高貴なる者の宿命


マウデン家は慈善活動か何かのつもりで現れたようだ。曰く、自身の行為を『明白なる天命』『悠久の大義』と称している。

親切なのは大変結構な事なのだが。



キノドクさんと色々案を練ってみるものの、煮詰まる気配は全くしない。

どんな妙案を出しても、結局はミユ社の下位互換になってしまうのだ。

「やっぱ金持ちはいいよな」と吉田。それにキノドクさんが噛み付く。

「何を仰いますか、我が帝国が貧乏とでも言うのですか」

どこぞのスナネコには『貧乏性』とは言われていたが。

「まあ確かに、宇宙船はボロですし、軍隊はここ数十年兵器以外の装備は更新されていないですし……」

他にもあるようで、念仏を唱えるかのようにブツブツ言っている。

創意と工夫でなんとか、とは言いたいところなのだが、そもそもの新国立競技場の設計がよろしくないのだという。

「あんなマイゲール(侮蔑語、翻訳不可)みたいな建物、よく臆面もなく世間に発表できましたね?」

かなり高価な案を採用しようとしたり、批判が出たからとそれを蹴ってまた設計をやり直したり、政府が予算削ったり、と色々バッドイベントが重なったのである(実に馬鹿らしい)。

「もしガウラ人を駆り出したら冷房がないから全員死にますね。しかし皇帝陛下は思慮深いお方ですから、何かお考えがあるのでしょう」

またブツブツと念仏を唱え出したので吉田も「はぁ、思いの外楽しくはなかったな」とため息を吐く。

全くその通りである。


さて、不気味なのがマウデン家だ。彼らは多分貴族とかの人たちだろう、何者なのだろうか。

なんと今回は特別に彼らのプレゼンについて話を聞くことが出来た。

「よくぞ来られました、地球の客人よ」

うねうねと触手を伸ばし、あー!あー!気持ち悪い!触るんじゃない!なんか湿ってて生暖かくて嫌だ!

「はた、失敬した地球の客人よ。性別4型はこういうのはお嫌いかしら……?」

性別の問題ではない、いきなり触手を手に絡められてはどんな人も嫌がるだろう。

「おかしい、以前の性別6型の地球人は嫌がらなかったのですがぁ」

それはそいつが変態なだけである。ところで気になるのが性別〇型、とかの言い回しだが。

「よくぞお聞きくださいました地球の客人よ、我らの性別はあなた方よりも多く、実に3倍なのでござんす」

六つ、性別があるとは驚いた。どのようなものか気になあー!やめろ!気持ち悪いっ!

「はた、失敬、顔なら構わないかと……」

良いわけないのだこのバカ貝めが。

「いいえいいえ、わたくしたち地球で言うところのアンモナイトに似ておりますが」

全くふざけた連中である。ただ悪い奴らではないような気があー!やめろっ!

「失敬、ついつい、地球人の肌は非常に肌触りがとっても良いもので」

……私もガウラ人にむやみやたらと触るのは今後控えるようにしようかなぁ。


「地球の客人よ、とくとご覧あれ」とまるでオペラか演劇か、というようなふうにスポットライトが照らされる。

そして、舞台のようなものが始まった。聞きなれない音楽が鳴る。

「ああ、私は哀れなる日本人! 大体育大会のスタッフが集まらないの!」

泣いている演技をする役者、そこへ別の役者が現れた。

「我々マウデン家、そなたに手を差し伸べる者……」

「まあ、なんとお優しい!」

なんだか三文芝居でも見せられているかのようだ。

横で見ているプロジェクトリーダーみたいな貝が多分、ドヤ顔をしてこっちを見ている。


内容について一言で言うと、今の日本政府が実に好きそうな内容であった。

無償、やりがい、精神的動員、そういう言葉が散りばめられている。

しかしそれではやはり人は集まらないのではないか、それともマウデン家の臣民でも動員するのだろうか。

「もちろん、日本人でございます。ある秘策がございますですよぉ!」

そう言って、プロジェクトリーダーっぽい人物が飴玉のようなものを取り出した。

「ボランティアにはこれをお配りします。これは素晴らしいでございますよ」

ご賞味あれ、と手渡されたが、どうも気味が悪いので口には入れなかった。

「実はその飴玉、カーマルマミン酪酸という物質が入ってましてね。我々も日常的に使用している害のない嗜好品でございます」

これを舐める事で変性意識状態に陥り、強い強い至福感や多幸感を得ることが出来るという。

効果は8時間、彼らの国では毎日摂取する事が奨励されているという。何の悪びれもなく説明してくれたのだが要は麻薬である。

「そして、この素晴らしき嗜好品を地球にも広めようと。このボランティア活動は絶好の機会です!」

毎日摂取しているという事は身体に害は無い、のかもしれないが、如何せんアンモナイトなので影響についてのデータは当てにならない。

そもそもちゃんと麻薬として効能が地球人種に対してあるのかどうかもわからない。

いずれにせよ、麻薬を売り込もうとしているのは確かで、これでは貴族の家系というよりマフィアだ。

しかも地球上で認知されていない成分なので、輸入も制限されていない。

この辺りは『地球の事はよくわかんないから』と帝国もノータッチなのだ。

「まっ、ご賞味いただくもいただかざるも個人の自由。マウデン家の臣民にも使わぬ者はいますからね」

そして、食べないなら、と私の手から飴玉を拾い上げ自身の口に放り込む。

「これの素晴らしさを宇宙に広めるも、我らマウデン家、高貴なる者の宿命でござんす」

マウデン家、思っていたよりもヤバい連中であった。よかったぁー、食べなくて!


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― 新着の感想 ―
[一言] 国家全体が狂ってるわwくるんなもん広めんなw
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