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小さな侵略者

港を開いてより数日、宇宙諸国らの一部よりある通達が届いた。

なんと、日本で洗脳された、または著しい健康被害にあった、という話なのだ。

翻訳機には追跡機能もついており、被害者たちの動きには不審な点もなく、

原因が一体何なのか、皆目見当もつかないというのだ。

これでは言いがかりにも程がある。

もちろん私たちにも調査のメスが入ったが、嫌疑は不十分。

休憩時間でこの事を吉田と話した。

この休憩時間というものがいやに長いのだ、というのが、宇宙船の数にも限りという物があるらしく、

一日に三から五便、一度に乗客は百二十ほどしか運べないというのだから、

入国審査が終わってしまえばかなりの空いた時間が出来る。

それに比べて出国管理はいつ客が来るかがわからないものだから、

一日中開けておかないといけないというので気の毒な話だ。給料は向こうの方がいいのだが。

「しかし、何が何だかわからない」と吉田は言う。

これは全くその通りで、ここにも噂は舞い込んでくるも、どれも何がなんだかわからない、というものであった。

旅館やホテルでも別に毒を盛った、などということはあり得ない。

地球の空気が肌に合わなかったのだろうか、と尤もらしい事は言えるが、

結局のところ宇宙人の健康問題までは専門外だから、憶測で語る事しかできない。

「だとすると、洗脳されたってのがよくわからん!」と彼は唸る。


翌日のまた休憩時、吉田がまた情報を持ってきた。

「なんでも、洗脳されたってのは思考回路が原始的になる、って感じだとか」

だとしてもそれが何かのヒントになるのかはわからない。

そう答えると彼は、「別にいいだろ、俺たちは探偵ごっこしてるだけなんだから」と言う。

それは確かにその通りだ。面白いから追っているだけで解決してやろうという気概という物はない。

実は私もこれまでの入国記録に目を通してみたが、ある共通点があった。

被害者たちはいずれも、菌類から進化した種族であった、という訳だ。

「だとしたら菌類の専門家だろ、そいつらが風邪でもひいたってのか」

そこが不可解な点でもある。だが、彼らにとっての未知の病原菌にやられた、という事もあるだろう。

「結核かインフルエンザか、将又マラリアにでもかかったのかな」

だとするとさながら、映画の『宇宙戦争』のような話であった。


そうしてまた翌日、今度は朝礼にて通達があった。例の件が解決したそうだ。

原因は食事にあった、納豆である。

なんでも科学者連中は病原菌ばかりを調べていたが、出国管理の人間がそういえば、と、

納豆の臭いがしたという話を出したところ、見事に的中したそうだ。

この納豆菌という連中は凄まじい繁殖力と耐久性を持つため、発酵食品などの工場では納豆の食用が固く禁じられているという。

それで、菌類人種を体内から侵略し、体調不良や乗っ取りを起こしたという訳だ(放っておけば納豆菌との対話が出来るのでは、という話でもある。彼らには気の毒な事だが夢のある話だ)。

いやはや、地球の小さな侵略者には驚かされた、という話であった。

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