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私はここにいる


ボイジャーのゴールデンレコードは、このような文を読みに来る者なら

きっと誰でも知っているはずであろう。

地球外知的生命体がいたのであれば、あれの立場はどうなったのか。



「金のレコードぉ?知らないなぁ」

ガウラ人は別にボイジャーを発見して地球に訪れたようではない。

殿下も言うからには間違いないのだろう。

「例の戦争の副産物だよ。そこで、素敵な星、まあ人だが、彼を発見したので、国連とかいうのをチョチョイと……あっ、これは言ったらだめだったか」

つまるところ、イギリスと日本が選ばれたのは

彼らによる陰謀が関わっていたということなのだろうか。

いやまあね!?おかしいとは思ってたんだよなぁ~最初からぁ〜〜!

「表向きは国連の話し合いで決められたってことになってるから、内緒ね」

私が言い触らしたところで信じる人もいないだろうが。


なぜ、私が殿下とこんなお話しているのかというと、

他でもない山野元大臣のお願いなのである。

「我々とて、アメリカと手を切ったわけではないですから。手を切れとうるさいのを拒絶してますがね」

彼らの目的の天皇陛下が日本に御わす以上、

ガウラ帝国に対してある程度強気に出れるのだ。

日米同盟をこのまま解消させるのは不義である、

という見方が政府内でも強いのである。

これまでの立場が少し逆転してしまった、と考えるものもいる。

ガウラ帝国も万能で無敵、というわけでもないので、秘密裏に米国に接触することは不可能ではない。

そうなれば事態は急変することだろうが、今のところその兆候はない……らしい。

「放っておけばいいのに、民主主義というのが、というか王がいないというのがお気に召さないようで」

完全にイデオロギーの闘争であり、間に立つ日本にとってはクッソどうでもいいことである。

そもそも自分たちも民主主義国家と手を組んだこともあったくせにである。


さて話は逸れたが、金のレコードについての存在自体は宇宙探検家たちの間で認識されていたようだ。

殿下が話をしてくれたのか、宇宙探検家ギルドの会合に招待された。広大すぎる宇宙では縁故主義が物を言うのである。

自らの手足だけで同好の士を血眼になって探しても、広すぎて見つからないのだ。

「その通り、まさしく金のレコードのようだ」

「私はここにいる、と叫んでも、誰の耳にも届かないなんてことはよくある。星間国家は幸運を掴んだ一握りの者たちだ」

宇宙探検家たちは何も無い空間をひたすら彷徨い続けている“イカれた”連中である。

探索に出る度に自分たちの孤独さに打ち震えるのだという。

「宇宙には誰もいないんだよ!」

多種多様な人種たちがそれに頷く。彼らにはイデオロギーなどは些細な事であるようだ。

「そうだ、金のレコード!我々は『赤子の呼び声』と呼んでいる」

こういう、原始文明が他者とコミュニケーションを取ろうと漂流物を送るというのはそこまで珍しくはない。

しかし、その原始文明の存在を突き止めるのは非常に稀な事である。

「赤子を見つけた!赤子を見つけたんだ!」

なんかテンションがおかしい人がいるが、誰も気にしていない様子であるのでいつものことなのだろうか。

「だが今この場にあるわけではない。アノマリーは出来るだけそのままにしておくのが礼儀だ」

アノマリー(宇宙に点在する奇妙な事象全般のこと)に変に手を出して惑星が一つ壊滅したという話もあるらしい。

「このレコード、探査機はこの地球で言うところのカシオペア座ガンマ星付近で発見された」

となると……550光年もの距離である、らしい。

しかしおかしなことになる、まだ数年前に太陽系を出たばかりのはずだ。

1光年先に行くのにも1万8千年はかかるはずであるが……。

「レコードのコピーのデータならここに」

探検家の一人が携帯端末を取り出すと、レコードの音声が流れ出した。

いつぞや聞いたのと全く相違ないものであった。


「うそでしょ……」

山野元大臣と同席しているNASAの職員は驚嘆の声を漏らした。

データをコピーしてもらい、NASAで比較分析を行うと、全く同じものであった。

ほぼ間違いなくボイジャーレコードのものだという。

「ありえない、何かの間違いではないのか?」

探検家たちの記憶違いや情報入力のミスの可能性はあるかもしれない。

「実のところ、通信は途絶えていた。2009年辺りを最後にね……」

ここだけの極秘情報らしい……彼らの上司にも伝わっていない……。コラぁー!

そりゃあ、突如550光年先にワープ?でもしたのであれば、途絶えるのも当然である。

本来ならまだ太陽系を出たばかりでそれほど遠くまでは行っていないはずの探査機が、

なぜ遥か彼方で発見されたのだろうか。何があったのかは探査機のみぞ知る。

これは例の探検家ギルドでさえ解明できていない。

彼らギルドが『真理の不安定性』と呼ぶ事象であり、宇宙の七不思議の一つである。


ちなみに残りは『宇宙の存在』『神霊の有無』『42』『性癖は何のため?』

『全ての生命が働かずに面白おかしく生きていく方法』『特定生物の諸問題』

などである。いくつかしょうもないのがあるな……。


【宇宙の七不思議】

-真理の不安定性-

物理法則は自然に、或いは人為的に捻じ曲がることがあるが、

それらも含めて物理法則なのだろうか

何かを計算し忘れたのか?たまたまなのだろうか、それとも……


-宇宙の存在-

なぜ何もないのではなく、何かがあるのか

存在に意味はあるのだろうか

問いかけること自体が馬鹿げているという考えもある


-神霊の有無-

神が世界を作ったのだろうか

死は終わりでなく変化であるのだろうか

何れにせよ、彼らには税金を支払ってもらいたいと考える為政者は多い

そんなだからなかなか出てきてくれないのではないか?


-42-

万物についての究極の疑問の答えであるに違いありません!


-性癖は何のため?-

見ろ!あいつ閂に欲情してるぞ!ということだけではない

本能に同種の適齢の異性としか交配できぬよう刻めば良いのに

どうしてどいつもこいつも異種族だの同性だの高齢だの幼年だの非生物だの

変な配偶者を見つけてしまうのだろうか

明らかに遺伝子多様性の範疇を超えているのではないか


-全ての生命が働かずに面白おかしく生きていく方法-

働くのが好きな種族もいるのでいつも議論の的である


-特定生物の諸問題-

彼らはどこから来て、何者で、何の目的があるのだろうか

一刻も早く滅ぶか帰るかして欲しい……

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― 新着の感想 ―
[一言] ループを讃えよ!
[一言] 案外、変なスポットに入ったのか・・・
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