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異次元転移はただの風邪:呑龍討伐!


目が醒めてまず思ったのが、少々涼しいかな、という点だ。

「こんなものだよ、この季節は」

もう一人の私の話を聞くに、この地球は温暖化とは無縁らしい。

どうやら、街のど真ん中で目覚めたようだ。

でもなんだか古い写真で見るような町並みである。

一番の驚きは、上空に人影が浮かんでいることだ。

あれが例のドンリウであろう。

「帝都の街を案内したいところだが、あまり時間がない」

もう一人の私によって対策室らしきところへと連れて行かれた。

途中の町並みはまさしく興味深いものばかりであった!

古いような新しいようなデザインの車、

見慣れない企業名、英字がほとんど無い!

しかしその割には結構外国人も見かける、

なんとも不思議な光景であった。


「へー、きさんが異次元の……」

対策室長っぽい人はラスちゃんにそっくりであった!

「まあ確かにあたしはラスばってんが」

……あなたは、そういう感じなのね!?

「話は聞いとると思うけど……なんでそげん赤い服着とうと?」

これはまあ深いような浅いような訳があったりなかったり……。

「まあよかばい、何か策があるとよね?」

それはこのスマホに聞いてみなければならない。

電源を入れると、画面にカガンが写っていた。

『君がこの動画を見ているということは、ボクはこの世界にはいないだろう……』

そりゃそうだ、私が世界を移動したんだから。

『見事なツッコミだ。……ちゃんとツッコんでくれるといいけど。これ録画だし』

録画でした。録画にツッコんじゃったよ!

『とにかく、電気人間野郎にプログラミングを埋め込んだ。彼がしっかりとやってくれるはずだ』

しかし、彼女にこんなことが出来るとは意外ではある。

『すごいだろう?情報生命体は物理攻撃は効かない、効くのは情報的攻撃と精神的攻撃だ。そして彼らは大抵意識を共有している』

「なるほど、そうやったったい!?」

ラス室長が声を上げた。

ノウハウがないと倒せないタイプの敵は実に厄介である。

『そこで、ボクは電気人間野郎にネット論客として悪い方に名高い"タラコ唇 デコ雄"の動画を見せたんだ』

はぁ?あの賠償金から逃れるためにドイツに逃亡したやつ?

『その通り。彼は論議を混乱させるのが上手だし、しかも出羽守だ』

悪い方に拗れた負けず嫌いが世の役に立つとは、

世の中なかなかわからないものである。

『彼らを論破……論破と言っても議論でもして論理的な破綻を指摘したりする必要はない、

 いわゆる俗語での論破、をすれば、彼らの戦意を砕き、憤死させることも出来るはずだ』

なんだか無茶苦茶不安になってきた、大丈夫かなこの作戦。

そんな論破されただけで憤死するようなメンタルで

銀河中を侵略して回るだなんて可能なのだろうか。

『攻撃的な人はだいたい弱いってことだね』

しかし、もしそれで駄目だったらどうすればいいのか。

『それでダメなら、スマホに情報爆弾をつけておいたから起爆するといい』

最初からそっち使っちゃダメなの?

『向こう100年情報機器が使えなくてもいいならね』

「それは困るばい!」「出来れば使わないで済むといいですね……」

確かに大変なことだ、まあ本当に最後の手段だろう。

『それと、スマホも改造させてもらったよ。おそらく敵は宇宙だろうから反重力装置で一飛びさ』

勝手に改造しないで!

『ごめんねぇ、新しいの買ってあげるから。宇宙空間でもエネルギーシールドを張ることで行動可能だ』

スマホの充電には荷が重いのではないだろうか。

『懸念は尤もだ、フル稼働では4時間しか保たない』

めちゃくちゃ長持ちじゃない!?

『それでは健闘を祈るよ。動画が終われば電気人間野郎が目を覚ます。無事、帰ってきてね、お願いしたからね』

そうして、再生は終わった。

すると、電気人間野郎が画面に登場する。

「なんか寝てる間に大変なことになってますねぇ」

本当にね、彼にとっては災難なことだろう。

「いいえ、こういうの大好きです。相棒!早速とっちめに向かいましょう!」

誰が相棒だ、誰が。

彼は反重力装置とシールドを起動した。

するとスマホを中心に球状の光の膜が張られる。

これがエネルギーシールドか!

「はみ出たりはしてないですよね、準備はいいですか?」

だがちょっと待ってほしい、今はまだ室内である。

3人が目を丸くしてこっちを見ている。

「先に言ってくださいよ!」

というか、私はついていく意味があるのか。怖いんだけど。

「情報爆弾の起爆は人の手でするようになってますので」

なるほど……。

「頑張ってくれよ私……いや、頑張るのは電気人間くんの方だが」

「応援してますよ!」「吉報を待っとるばい!」

3人に別れを告げ、窓を開ける。

そして反重力装置を起動し空へと飛び立った!


数分ほどで、宇宙空間に多分到達した。

しかし凄まじい光景だ、生身で空に飛び上がるとは。

こんな経験をするとは思っても見なかった。

「はっはっは、まず異次元転移が稀ですよね」

それもそうだ。思えば随分と遠いところまで来たものである。

軌道上に浮かんでいる人影、ドンリウに近づいていく。

なんと表現すべきか、人型の赤黒い影に目と思しき光が縦に5つ並んでいる。

しかも超巨大だ、身長何km?

『それ以上近づくな!』

その影からの言葉だろうか、急に頭に鳴り響いた。

『何者だ』

まずは私は答えたが、どうやら聞こえていないようであった。

やはり情報生命体にしか意思疎通ができないらしい。

「我々は大日本帝国の全権大使です」

『何の用だ』

「何の用はこちらのセリフでしょう?なぜ宇宙の星々を喰らうのですか?」

『それは我々が宇宙の支配者だからだ』

「宇宙の支配者?侵略者ですよね?」

『我々は宇宙を支配する義務がある、これこそ明白なる天命なのだ』

「支配とは言いますが、あなたがたのやってることって大量虐殺ですよね?」

『違う!』

ドンリウは声を荒らげる。

『支配は正当な権利であり義務だ!』

「誰の何によって保証されているんですかその権利と義務とやらは」

『この我々自身によってだ!宇宙を支配する資格を持つのは我々だ!』

「根拠を見せてもらっていいですか?なんかそういう資格を発行する機関でもあるんです?」

『この力こそが根拠だ!逆らう者はみな滅ぼした!』

「ではあなたはこの宇宙全ての生命を滅ぼさなくてはなりませんよ」

『なんだとぉ……!』

電気人間野郎は高笑いをした。

「はっはっはっは、誰もいない独りぼっちの銀河で宇宙の支配者気取りとは、全くお笑いですな」

『…………ギャオオォォー!!!』

ドンリウはちょっと考えて、そして悲鳴を上げた!

そして爆発四散、跡形も残骸も無く消え去ってしまった。

結構メンタルが弱かったようだ。

今まで破壊活動をしている間に、ちょっとでも過ぎらなかったのかしら、その疑問……。

.


地上に戻ると、万歳三唱の声があちらこちらから聞こえてくる。

「やったー!勝利万歳!天皇陛下万歳!大日本帝国万歳!」

もう一人の私も大喜びの様子だ。喜び方は置いておくとして。

「ありがとう私!この世界は救われたよ!」

「本当に、お礼してもしきれないでしょうけど、試してみましょうか!」

試さなくていい。それにお礼を言われるべきは電気人間とカガンだ。

「うーん、流石は私、謙虚だなぁ」

「いやいや、君だって大したもんばい!さぁ!勝利の祝宴の時間たい!業務は後ばい!」

おぉー!と歓声が上がる。

なんかこっちの世界の人、色々と大雑把で羨ましい限りだ。


さんざっぱら酒と食事をご馳走になり、

専用のワープ装置に乗り、元の私たちの次元へと戻った。

お土産まで持たされちゃった!

「いやぁ~ドンリウは強敵でしたねぇ」

そうだったような、そうでもなかったような。

まあ戦ったのは私ではないので、とやかく言う事もできまい。

「おかえりなさい、君」

宇宙港に戻ると、カガンが出迎えてくれた。

「無事うまくいって良かったよ」

メロードたちはどうしたのだろうか?

「君たちが転移して丸2日経ったけど、次元転移の疲れが残ってるみたいで寝込んでいるよ」

バルキンやホーダツさんも同じらしい。

彼らもまさしく異世界を救った功労者であろう。

仕事をすっかりすっぽかしてしまったし、

今どんなふうになっているか職場に確認しようと足を踏み入れようとしたが、

その瞬間後ろから声を掛けられた。

「すまない、異世界の僕……実は困ったことが起きてだね」

なんだよぉぉぉもぉぉぉぉぉーーーー!!またかよぉぉぉぉおーー!!!

こちらの方のお話については、割愛させてもらう。


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