芸術愛が爆発だ!
宇宙とて芸術が存在する。
しかし今は群雄割拠の戦国時代、多くの芸術が銀河から消えようとしている。
だがそんな芸術が危機に陥った時に守る組織が存在するのだ。
最近、『ワイウラー芸術結社』とかいうのが太陽系に来たらしく、
毎日毎日飽きもせず日本を行き来している。
なんでも、ワイウラーという伝説的絵画師が結成した、
銀河中の芸術の収集と啓蒙、保護を目的とした集団らしい。
どこぞの殿下と同じく漫画にも感銘を受けているとかで、
ここ数日は荷物も増えて税関も忙しそうにしている。
彼らの言う芸術は実に幅が広い。
美術は当然ながら、音楽、文学、演劇、映画、などの
明らかに芸術って感じの物に加えて、
アニメ、ゲーム、同人誌、個人の書いた二次創作や適当に作られた都市伝説、
車両や電気製品、道具などのあらゆる物のデザイン、
シリーズの新作が出ないからと言って
キャラクターに淫語を叫ばせまくっているMADムービーまで、
創作物すべてが芸術だというのだ。最後のはどうかなぁ!?
そういった姿勢であるので、アニメやゲーム業界からは歓迎され、
演劇と映画、特に邦画などの業界、それと著作権的な部分からは懐疑的な視線を注がれている。
「知的生命体あるところには芸術が溢れているのだ」
タンチョウにも似た人種のワイウラー結社の職員の一人は言う。
「人間はあらゆるものを想像し、作り上げてきた。その結晶と言えよう」
確かにそれには同意だ、芸術とは技術と想像力の粋であろう。
ふと思ったが、彼らにも好みというものがあるのだろうか。
「芸術は全てが素晴らしいものだ」
彼らにとっては芸術は全て平等(地球においてもそのはずなのだが)であり、
収集し保護すべき文化財なのである。
しかしまあそこまで深刻に捉える質問でもなく、
『犬と猫だとどっちが好き?』とかその程度で良い。
「ペットは芸術品を汚すから嫌いだ」
そ、そうかもしれないけど……。
「言ってる意味はわかった。もし優れたる格というものあるとすれば、最も上等なのがテレビゲームであろう」
意外な答えである。
「絵や3DCGという美術、センスの問われるUI、音楽、シナリオ、声やモーションの演技、全てが備わっている」
言われてみれば確かにそうかもしれない、言わば総合芸術というヤツだろうか。
「左様、更にはプレイヤーが介入できるという点でもGOODだ」
なんか急に喋り方が変わったぞ……マズイ……。
「即ち体験する芸術、これまで科学の積み重ねである電子基板を使った芸術だ!
思えば昔からそうであった、絵画においても顔料は当時の最新技術が使われる、
演劇の舞台装置は機械工学で作られ脚本も世相を反映し、
文学は世代の最新の流行が記されている、音楽もそう、音響学の粋である!
火薬も花火という形で空を彩り、造園は植物学と遺伝子工学を使った!
記憶媒体の発展、即ち印刷と蓄音、写真と映写機は芸術の枠をさらに広げたのだ!
内燃機関の登場と大量生産は芸術を身近なものにし、乗用車はもはや美術品となる!
兵器はどうだろうか!美しい刀剣は冶金学を象徴するものだ、研ぎ澄まされた機能美は現代の驚異である!
科学の発展、時代の変遷と共に常に芸術はあった!芸術こそ知性体が永久に宇宙に残すべき足跡なのだ!」
結構な熱量であった、なんというか人間賛歌って感じだ!
「だからこそ、もし芸術の危機が訪れた時に、永久に失われてしまわないように我々は存在している」
ワイウラー芸術結社、なんか今まで見てきた組織の中でも一番まともな気がする……!
いや、どうだったかな、まあいいか。
「君たちも、芸術の危機が起こらないよう気をつけてくれたまえ!」
つまるところ、表現規制や暴動、戦争にならない事が重要なのだという。
戦争も時に芸術を生み出す事がある(曰く、原爆ドームとからしい。やっぱりまともじゃなかった!)が、
それよりも芸術品や芸術家の損失や言論統制などのデメリットの方が大きいとか。
そして他国との交流もまた芸術を育み、技術の進歩も芸術を発展させる。
おそらく銀河には、そして地球人類が宇宙に飛び出す未来には、
ゲーム以上の、それも我々の想像の余地もないような芸術で溢れていることだろう。
そうして彼らは、インターネット上の全ての創作物を抽出するソフトウェアを開発し
使おうとしたので日本政府にめちゃくちゃ怒られた。それは犯罪だよ!?




