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菊花の冠:皇帝来訪


さてさて、宇宙港は威光派とやらの指揮下に置かれてしまった。

威光派の要求はただ一つ、ガウラ帝国の日本への併合である。

……彼らに何の得があるというのだろうか?



「君たちにもわかりやすく言えば、宗教的意義がある」

威光派のリーダー、オホル・サラードはそう簡単に説明してくれた。

のだが、申し訳ないが日本人に宗教はさっぱりである。

「キリスト教西方教会がエルサレム奪還の為に何度も無意味な軍事的侵略を行っただろう、アレだよ」

なるほど、理解は出来た。今無意味って言った?

「言ってない」そうかな……。

とにかく、彼らにとっては大いに意義のある事なのだろう。

現在の皇帝よりもより素晴らしい威光を持った我らが天皇陛下に、

国を譲って治めてもらった方が良い、という考え方だ。

うーん、孔子の徳治主義にも似てるようなそうでもないような。

「そう、だから無意味でもやるもんなの、とにかく皇帝府に連絡したからすぐに会議は始まるだろう」

今無意味って言った?「いいや」そうだろうか……。


彼の言う通り、日本側の関係者が血相を変えて現れた。

「どういうことなんだね!」

外務大臣っぽい人に問い詰められるが、私に聞かれても……。

「全く、彼らが来てからは面白い事ばかりだな」

首相っぽい人も来た。それには同意する。

「ようこそ、宇宙港へ。おやおや、当事者が見えませんが」

「帝国の皇帝陛下や外交機関ならいざ知らず、あなた方が何者かもわからないのにここに連れて来いと言うのですか」

「そう来なくては」

首相っぽい人も臨戦態勢が整っている様子である。

日本側とっては今のところはデメリットも無さそうに見えるが、

社会的な大混乱は必至であるので、御免被りたいというところだろう。

「それで、もう一人の当事者は」

「急いで来るならば1時間以内には。そうでない場合は……しーごーろく、うーん6週間ぐらいでしょうか」

「そんなに」

報連相しっかりしてよ!急いでこない場合はどうすんのさ!

「まあまあ、それまでゆっくり気長に待ちましょう」

帰りてぇ……とでも言いたげな表情の首相っぽい人であった。


それから数十分後。

サラードは椅子に座り込み、大きな鼾を立てて寝ていた。

「それはどうなのよ」

首相っぽい人も呆れているし、みんなも呆れている。

「リーダーにあるまじき行為だ、この会議が終わればすぐに追放すべきだ!」

彼の部下らしき威光派ガウラ人も憤りを隠せない様子であった。

すると、ぞろぞろとガウラ人が入国ゲートから現れた。

どうやら急いできてくれたようである。

「お待たせしたみたいですね」

煌びやかに装飾された外套を羽織った先頭の彼が、

かの殿下の父親にしてガウラ帝国の皇帝"ガウラートリン"なのだろうか。

「いや、お待たせし過ぎてしまったのかもしれません」

あれ!ちょっと面白い人かもしれないぞ!

「これは、お初にお目にかかります、私は日本国の政治首班、総理大臣です」

「どうもどうも、私はガウラ帝国の皇帝です」

そんなサラっと言っちゃうんだ!

後ろにいる見知った顔もいる貴族たちはそういう指示でもされているのだろうか、

ただ突っ立っているだけである、一応怪しい動きがないか目を光らせてはいるようだが。

皇帝は首相と固い握手を交わした後、こちらにも挨拶をしに来てくれた。

「息子からよくお聞きしていますよ、漫画喫茶の権威、いや、日本流に『漫画喫茶の神』とお呼びすべきか……」

随分と話が大きくなって伝わっているようである。

ちょっと紹介しただけじゃないか殿下!

私との握手を済ませると、今度は椅子で寝ているサラードの元へと歩いて行く。

そして、ひじ掛けにだらしなく垂れている彼の尻尾を握ると、激しく扱き上げた!

「うひゃっ!!」

堪らずサラードは飛び起きる。

「おどかすなよなぁ!」

「お久しぶりですね」

お久しぶりとは随分な、というか意外なご挨拶である。

どうやら二人は知り合いらしい……えーっ!


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― 新着の感想 ―
[一言] 王子がそうだからそうなんじゃないかと思ってたけど、ガウラ皇帝口調軽いなあ そしてやっぱりというかその威光を日本人が感じ取れてる感じもないし、日本人からしたら威光ってなんなのか結局わからないか…
[一言] まさか、殿下の言ったことを、偉いヤツらが曲解した!?
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