表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/171

菊花の冠:威光って何!?


そもそもだが、ガウラ人らの言う威光というのは如何なるものか。

具体的な性質については全くわからない。

ガウラの皇帝には存在し、日本の天皇や地球の王族たちにも存在する。

高貴なる血を可視化したもの……ではないだろうかと私は考えている。

後光が差して見えるのではないのだろうか。

どうやって可視化したのかはわからないが、我々も徳の高い大人物に出会うとまるで輝いて見える時がある。

それのもっと強いものだろうか。

なぜこんな事を考えているのかと言うと、現在とんでもないことになっているからである。



さて、そのとんでもない事というのは、ある日の事である。

その日も割と呑気して仕事をしていた。

バルキンは休暇で、代わりにラスちゃんが彼女の窓口で受け付けている。

しっかりと仕事が出来るようになってわたしゃ感涙ものだよ……!

「あの、その、書類、出しましたけど……」

おっと失礼、余所見ばかりしていてはいけない。

今日はまあ何にもない日だろうとは思っていたのだが、

こうやってお話になっている以上、何らかの出来事があるものである(身も蓋も無いが)。

するとやっぱり突如として、物々しい雰囲気のガウラ人集団が現れた。

軍服で菊花紋章があしらわれた腕章をつけている。

そしてその中で多分一番偉いっぽい人がズイと受付に立ち、書類を差し出した。

「"皇位継承の勅"に則り、この宇宙港は我々の指揮下に入る」

え、え~~~~~~~~!?

少々お待ちください、と後ろに引っ込んでホノルド氏に相談する。

「随分カビの生えた法だけど、確かに存在はするみたいだ」

彼は分厚い本をパラパラとめくりながら言った。

だとすると、宇宙港はお休みって事になる。

「そうなるね。何のために指揮下に置くのかはわからないけど」

皇帝継承の勅、と彼は言っていたが。

「とりあえず、言う通りにしておいた方が良さそうだね」


受付に戻ると、ビデオカメラのようなものを用意していた。

「記念すべき日を記録するのは当然だ」

ここでやるのか……。彼はカメラの前に立つと、カメラマンに合図を送る。

「ゴホン、私は帝国の威光派閥の長、オホル・サラード。日本国天皇を『発見』出来た事は帝国にとっても幸運な事だった」

撮影が始まってしまった、私の返事を待つ気は初めからなかったようである。

「そこでだ、この第一村人ならぬ第一日本人にもこの国を継承する会議に立ち会ってもらう」

彼は私を指さす。別にいいけど、いつもの事だし。

「宇宙史に残る出来事なんだから軽く『別にいいけど』なんて言うな!」

勝手に決めたくせに……。

「まず我々は日本国天皇を呼び出し、ガウラ帝国の統治権の継承を提案する」

だがちょっと待って欲しい、そもそも国を譲るだなんてガウラ帝国皇帝が許すはずもないだろうに。

「この継承の勅は初代皇帝の出したお触れだ、より相応しい者が現れればそちらに国を譲ると」

つまりそれを満たすかどうかの基準が威光であると。

「その通り、日本国天皇は最終的にはそれを受け入れるだろう」

それはどうだろう、我らの陛下がそのような提案を受け入れるはずもない。

「それでこそ我らが指導者に相応しい資質を持つという事だ、だから最終的に」

ああ、そういう……でもやっぱりそんな事が実現すれば社会的な混乱は避けられないと思うけど。

大体従属国に統合されるだなんてガウラ臣民が許すか……。

「うるさいなさっきから大人しく静かに聞け!これ録画してんだぞ!」

勝手に返事したくせに……。

「とにかく、この宇宙港を指揮下に置いたのは計画の第一歩だ。以上、第二VTRに続く!」

と締め括る。第二VTRはきっとまた後で撮影するのだろう。


その後、客は全て宇宙港から追い出され、宇宙港と大使館の職員はロビーに集められた。

警備員らの姿もあったが、抵抗はしていない様子である。

「あいつら、どうも武装してやがるからな。全員ぶちのめすぐらいわけないが、犠牲者が出るかもしれねぇ」

エレクレイダーがそう言うのであればきっとそれは正しいのだろう。

だいたい継承だなんて、無茶苦茶な事を言う。

従属国である日本に併合される形になるというのに。

「まあ確かにその通りだが、彼らの言い分にも一理あるだろう」

ホノルド氏は言った。無いだろ。

「あるよ」

局長もあると言う。無いよね?

「ある」「ある」「あります」

フィーダ課長、ソキ課長補佐、アクアシ係長もあると言う。無いと思うんだけどなぁ。

「まあ、あるかな……」「ありますやんか」

メロードとラスちゃんまであるって言った!

最近ガウラ人わかってきたなぁって思ってたけどやっぱりわかんなくなった……。

「わっけわかんないよね」「そうですよ」

よかった、バルキンとビルガメスくんはこっち側だった。

……ん?バルキン?なんでここにいるんだ休暇のはずだが。

「虫の知らせってヤツ!でも大丈夫そうだし帰るね!」

いや全然大丈夫では……と言う間もなくフッと消えてしまった。

とにかく、ここまでの事をやる大義名分に使われるって、

一体全体威光というのは何なのか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ