表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/171

読み物:侵略者、銀河同盟


銀河同盟による日本侵略はすでに始まっている!

というのは大袈裟な表現だが、地方では彼らがバンバン土地を買っているというではないか。



・帝国の事情

現在、ガウラ帝国は大きな戦争も起こっておらず、なんだかんだで人口は増え続けている。

しかしながらその増えた人口の受け入れ先はそう多くなく、支配下の惑星は既に開拓済みであり、失業者対策がそこそこ急務であった。

そこで帝国は同盟国や従属国に掛け合う事となる。


・日本の地方

その事情とうまく嚙み合ったのが日本の少子高齢化社会である。

地方では人口の流出や出生率の減少などにより過疎化が進んでいた。

帝国はこれに目を付け、日本政府と掛け合った。


・技能実習制度

日本政府は既存の制度である技能実習制度を提案した。

帝国も初めは乗り気であったようだが、その実態を知るにつれ、難色を示し始める。

そして遂には帝国の大使をして「こんなもん提案しやがってほんま殺すぞ」と言わしめた。

この発言は公式文書にも記されている。


・侵略の始まり

日本政府との協力を諦めた帝国はミユ社との連携を図る。

国内において日本への移民キャンペーンが始まった。

地方に多数存在する放置された農地を買い上げ、希望者へと配布。

彼らは日本に移り住み、農地を覆う竹林や藪を切り拓き農業を始める。

現地のコミュニティでは多くの場合受け入れられたという。

田舎者は閉鎖的、とはよく聞く言説だが、ガウラ人は殆どが田舎者であるし、

そもそもコミュニティに入ろうが入るまいが不都合はない、のが理由とされている。

ミユ社は大手各社の農業機械を購入し、タダ同然で貸与、保守を行うサービスを開始した。

これは既存の日本人農家であっても利用することが出来た。

帝国はこれらを管理するために『日本農耕地管理機構』を設立。


・日本農地管理機構と農業協同組合

日本農地管理機構は農業協同組合と当然競合した。

しかし機構側は農協の組合員を排除しなかったために、両方に属する日本人農家も徐々に増えていった。

農協は莫大な資本との戦いは避け、共存する方針を取る。

結果として地球向けの販路は農協、宇宙向けは機構、と農業従事者にも都合のよい棲み分けが発生した。

とはいえ、農協側も黙って見ていたわけでもなく、幾度か交渉に臨んだが、

農協にいるような人間の人間性では話し合いにさえならなかった。ダメだった。


・栽培作物

かくして、開拓が始まった。

とはいえ、休耕田や元々農地であった土地が多く、復元するのにさほど労力はかからなかった。

主な作物としてはコメ、ムギ、トウモロコシをはじめとする各種の穀物、豆類や、彼らの好みなのか根菜類が多い。

他には地球外原産の作物、馬鹿でかい白菜みたいなのや、見た目がグロテスクなウリのような作物も栽培されている。

これらに加えて養蜂業、養蚕業、対宇宙輸出向けにエンマコオロギやスズムシの養殖も行われている。


・こだわる人々

ガウラ人の中には昔ながらの日本の暮らしにこだわる、他の来訪者とは少し志向の異なった勢力も存在する。

彼らは昔ながらの家屋にも拘り、茅葺屋根の、絵に描いたような農村の家屋に暮らしている。

その維持の為に茅場を整備したり林業に手を出したりと、半ば実験考古学の領域に足を踏み入れようとしているらしい。

そういう人たちってたまに見る。


・害獣駆除

こうして、事業が軌道に乗り始めると、害獣対策が懸念され始める。

これらにも機構からの支援が行われ、有刺鉄線や防壁建設キットなどが配られた。

更に帝国製の害獣迎撃システムの持ち込みが検討されたが、殺意が高過ぎる為に国内法的に不可能であるという判断が為された。

当然と言うべきか、日本人農家は大いに困惑する。

なお、害獣に対する効果に加え、作物を盗まれるという事態も殆ど無くなった。


・農奴

日本農地管理機構はピール首長国との奴隷交易の仲介をも行った。

人手不足に悩む日本人農家はこれを利用した。

これもまた、機構価格で破格の値段で雇えたが、結局技能実習制度と変わらないという批判が起きる。

しかしながらそもそもが奴隷の概念が日本とも異なり、

しかもピール首長国の奴隷は日本の多くの労働者よりも良い暮らしをしているのである。

ところが彼らには職業選択の自由が存在しない、それ故に『奴隷』とされているのだ。


・事業の広がり

この狭い列島には過疎化により数えきれないほどの休耕地が存在した。

その為あらゆる土地で、むしろ都市部よりも、農村地域で宇宙人らを見かけるようになったのである。

同様の動きはイギリス、ハンガリーでも広がっているという。

最近では日本の食料自給率が大幅に上昇しつつあるとの報告も出ているそうだ。

更に嬉しい事に、山間部にも人の手が入る事となる為に鹿、猪、熊などの獣害も減少傾向にあるという。


・侵略者とは言うものの…

いくらガウラ人が土地を買おうが田舎に住もうが日本人より増えようが、

そもそもが彼らは事実上の宗主国であり、いつでも息の根を止める事が出来る立場にある。

彼らの侵略ならもうとっくに終わっている。

しかも、過疎地に人が集まる事は決して悪い事ではなく、地域の活性化にもつながっている。

感謝すべきとまでは言わないが、良い方向に進んでいるという事は間違いないだろう。

今後、彼らの気が変わらないことを祈ろう。



気に入ったらブクマ感想評価よろしくね!

そう言って彼は灰になった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] これ数100年後は 人口比逆転してそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ