管理官二人旅:華麗な冒険
当たりは強いが、喧嘩は弱い、二人揃って管理官2!
私、扶桑が関所の守り、管理官。
「私はイングランドがワトフォード生まれ、オリビア・ペイリン」
趣味も育ちも違うけど、変わり者は二人とも。異星人にならあくどくモテる!
「菊花のお嬢さん、沈没したもうな」
ジョンブルの娘さんこそしっかりおしよ!
二人は入国管理官!
はてさて如何なる華麗な冒険に行こうか。
あはっ!?
なんか変な夢を見ていた。
落ちる時は落ちるものだが、どうやら命まで落っことしてしまったわけではなかったようだ。
周りに目をやる……見慣れない形の葉っぱと木々、蛍光色に光る落ち葉……。
「助けて~!」
それから触手に絡まれているオリビアさん。
「いや~~ん、ダメですぅ!助けてくださぁい!」
ナイスバデーにヌルヌルした触手が、胸に、股間に、絡みついている!ほぅ……。
って、いかん!このままではえっちな展開に!
慌ててシートベルトを外し、触手に蹴りを……入れるのは怖いのでその辺にあった石を投げつけた!
「いっつっ……!石とか……やりすぎやろ……」
命中!喋った!翻訳機を付けてるからだろうか!?オリビアは拘束から解かれ、地面に倒れ込む。
「助かりましたぁ!」
なんとか彼女を抱き寄せ、触手と距離を取る。
「石とか……無いわ……」
なんかブツブツと文句を言いながらズリズリとその場から立ち去っていく触手。
「酷い触手ですよ!ちょっと気持ちよかったけど……」
えぇ……。それはそれとして、ここはどこだろうか。
多分窓の外から見えていた惑星に間違いはないだろうが。
そもそも、あのボタンは緊急脱出ボタンか何かだったのだろうか?
座席にはパラシュート的なものが付いていて、おそらくはどこかのタイミングで作動したのだろう。
更に、座席の下には何やらケースのようなものが付いている。
取り外し、蓋を開けると、わずかな食糧品とサバイバルキットらしきものが入っていた。
オリビアの分と2セットある。
「これでしばらくは持ちそうですね」
救難信号的なものは出ていないのだろうか、それを確かめる術はない。
さて、留まるべきか、文明を探しに行くべきか。
「どうしましょう……」
救難信号が出ているとすれば、留まった方がいい。
「じゃあ留まりましょう!」
だが、もし出ていないのであれば、食糧や道具があるうちに早急に集落を探すべきであろう。
「じゃあ、探索に出ましょう?」
……どっちがいいと思う?
「救難信号が出ていると仮定するなら……えっと、すぐに出た方がいいかもしれません」
いや、救難信号が出ているなら留まるべきではなかろうか。
「ここが、触手の巣の近くでなければですね……」
オリビアは私の後ろを指さす。振り返ると、ウネウネと触手が蠢いていた。
「お前人んちに墜落してきたんにお前石は無いやろ石はお前!」
あらあらそいつは失敬、サバイバルキットとオリビアの手を取り慌ててその場を去った。
蛍光色の葉っぱがちらつく森を宛ても無く二人彷徨う。
流石に、遭難してしまった事を受け入れ始めて心細くなって来た。
時刻は知らないが、もうすぐ日が沈むだろう、かなり薄暗くなって来た。
「ワクワクしますね!」
ちっともしません。
「こうなった以上は、状況を楽しみましょうよ」
身の危険が無ければね。
「私ってば、色々と物騒な目に遭う事が多かったから、なんだって楽しんでみようって思って過ごしてるんですよ」
私もそういう楽天主義な心持ちならば、どれほどよかったか。
しかしながら、それも大切な事であろう。
遭難なんて人生に一度あるかないか(大抵の場合は二度目はなく死ぬだろう)、暗い気持ちでいては助かる命も助からない。
気を強く持とう、うん、それがいい。
「ひぃ~~!変な虫がいる!全然楽しくないです!」
お前はよぉ!!……ともかく、これ以上進むのは難しいだろう。
光る落ち葉を頼りに進みたいところだが、じんわりと光っているだけなので、懐中電灯の代わりにはならない。
気が動転して、周りを見ていなかったので今になって気が付いたが、なんと幻想的な光景であろう!
闇の中で、光る葉っぱが、黄色や緑や、橙、青に光ってまるでイルミネーションのようだ。
「綺麗ですね!彼氏とくればよかったなぁ」
息を吞む美しさだ。
さて、サバイバルキットの中身をよく見てみると、色々と入っていた。
片手で持てるほどの大きさと重さだが、十徳ナイフらしきものやライト、おそらくライター、金属の小さな容器、包帯、おそらく絆創膏、裁縫道具、笛、紐と縄、寝袋、あとボードゲーム?、そして拳銃。
「拳銃なんて、使う事無いといいですけど」
全くだ。というか正直使い方がわからない、構えて撃つだけではないのだろう?
説明書も一応入ってはいるものの、残念ながら知らない文字である。こういうのは絵で描けよ!
食糧の方は、金属の容器に入っている。缶詰のようにも見えるが、蓋を開け閉め出来る様だ。
何日漂流するかわからないからチマチマと食べようかな。
「これ意外と美味しいですよ!」
あれ!?もう半分ぐらい食べちゃってるんですか!?
3分の1ぐらい食べても多いかなぁって思ってたのに……。
「あとは暖かいミルクティーがあれば最高ですね!」
それは贅沢というものだろう。
ていうかこの缶詰全然おいしくないんですけど!味覚はやっぱ、イギリス人ってアレなのかな……。
翌朝、ぶかぶかの寝袋で寝ていたところ、ガサガサッという茂みからの音で目を覚ます。
何事かと飛び起きると、爬虫類人種のなんか部族みたいな人がいた。弓と槍を持っている!
「お目覚めのようだぜ、今日の獲物さんがよ!」
あああああああ!!蛮族だああああああ!!急いで寝袋を脱ぎ捨てて、拳銃を探すが見当たらない!
周りを囲まれている!サバイバルキットもどうやら奪われたらしい!
オリビアは、と周りを探すと、もう捕まっていた!
「いやぁ~~やめてくださぁ~~い!」
胸を揉まれ、股間に手を這わせられている!またしてもえっちな展開になってしまう!
「ぐへへへへ、今日の獲物は上物だなぁ!」
マズい、ていうか、本当にマズくないかこれは!やばいやばいホントやばい!
「……ってな感じで、訪れた人を驚かすのが好きなんだ俺たちは♪」
なるほど、蛮族ではなくひょうきんな族であったか。
「なぁ~んだ、そうだったんですかぁ。じゃあえっちな事はされないんですね、セーフ」
アウトだよ!!あなたは実際にえっちな事されてたじゃん!!えっちな目に遭ってばっかりだなこの人!
そもそもが質が悪い冗談にもほどがある!
「ご、ごめんなさい……」
部族たちはシュンとして謝った。まあ、わかればいいんだけど。
「流石はお優しい!マレビト様!」
「マレビト様ー!」「マレビト様万歳!」
「今日は宴だぁーーーーー!!!」
なんだかよくわからないけど、彼らに獲って食われるようなことはなさそうだ……。




