表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者は最強職ですよ?  作者: 夏夜弘
最終章 魔王城編
150/153

冒険者は最強職ですよ? 4

『貴様……それを破壊したからにはもう容赦はしない。本気で殺しに行く』


 そう告げた直後、エンドから莫大な魔力を感知する。その瞬間、ジンの体が危険信号を出す。


 か、体が勝手に逃げようと……それほどまでに凄まじいのか……。


『ジン、これはまずい……ここまで力が増しているとは……』


「女神?」


 女神だけではない。牢屋で見ていたレッドでさえも、腰を抜かして座っていた。


『もう無理かもな……我らも、ジンも……』


 続いてレベッカ、その次にブラックと、どんどん顔を下げてしまい、完全に諦めきっていた。


「みんな?」


『諦めがいいのは素直でいい事だ。待ってろ、そこの糞餓鬼を殺したらすぐにあとを追わせてやる』


 諦める? 馬鹿な事言ってんな。こっちは守らなきゃいけねぇもんがあるんだぞ?


 ただ、ジンの体は言うことを聞かない。


 何度も膝を叩き、動けと命じるも、一ミリも動かすことはできない。


 なんでだよ……今まで頑張ってきただろ? ここまで積み上げてきたものは無駄に終わるのか? 違うだろ? 何のための神の力だ、何のための龍後からだ?


 エンドの力は増す一方で、留まることを知らない。


 あいつに勝つためだろ!?


 だが、その思いとは逆の思いも、当然ジンの中にはあった。


 あいつに勝つ? 無理だろ……力の量が違いすぎる。


 だが、俺にはユニークスキルがある! 負けないほど強くならなきゃ……!


 先に死ぬんじゃないか? 例え強くなれたとしても、本当に殺せるぐらいの力があるのか?


 色々な思いが交差し、ジンの頭の中はぐちゃぐちゃになる。


『貴様らは終わりだ。この私がここまでの力を出させたことを褒めてやろう』


 ただ変な石ぶっ壊しただけで、手も足も出せなかったけどな……。


『一歩も動けんだろう? 今殺してやる。底を動くな?』


 段々と近づいてくるエンド。それでも、やはり一歩も動けずにいる。


 どうして動かない? 俺が弱いからか? 俺に力が無いからか?


『ジン……』


 なんで俺に力がない? なんでもっと強くなれない? なんでなんでなんでなんで?


 ジンの心は段々と閉じていく。


 もっと強かったら……もっと……。


 思えば、この冒険はふざけたものばかりだった。盗賊といきなり闘うわ、一度死ぬわ、龍に会うわ、魔王に会うわ。


 過去を振り返り、ジンは涙する。


 あれ、なんで俺泣いてんだろ……なんで俺、こんなにも死にたくないって思ってんだろ……。


 それを見ていたレッド達も、涙を流していた。それを見て気づく。


 あ、そうだ。俺、あの人達と居たいんだ……。まだ、行ったことのない所へ行きたいんだ……。


 エンドはもう数メートルと迫ってきていた。死が間近に迫ってきているのだ。


 でも、もう無理だよな……。そんなこと思っても、この不利な状況を打開できっこない。もう、死ぬのか……。みんな、俺、先行ってるな。


 そう思って時だった。


「ジンちゃん。貴方はまだこちらへ来るべきではないでしょ?」


「そーだよジンお兄ちゃん! まだ来ちゃダメー!」



 この声は……。


「ジンちゃん。貴方はそんなに諦めの早い人だったかしら? 私が知っているジンちゃんは、可愛くて、優しくて、だけれど心強くて諦めない。そんな子だと思っていたけれど?」


 そんなこと言っても、俺はこの状況を打破できる手段が……。


「あるじゃない、貴方には強力なユニークスキルが。それに気づいていないだけ」


 気づいてない? ……それって……。


 そこで、先程のカルとの闘いを思い出す。何故あの時力が湧いてきたのか。何故あそこまで強力な力が手に入ったのか。


 そうか、あの時のあれって元々あったものではなく……。


「フフ。あとは、わかるわね? ……私たちの分まで、生きてちょうだい」


「頑張れ! ジンお兄ちゃん!」


 ありがとう、ダイコさん。ありがとう、ネイン。天国で、応援しててくれよな。


『さぁ、死ね』


 エンドは、爪を剥き出しにし、首を横一線に斬る。


 そこにいた誰もが、ジンは死んだと思った。エンドでさえも。


『よし。次は……』


「次はお前だよ。エンド」


『なっ……!』


 次の瞬間、エンドは玉座のある場所まで吹っ飛び、玉座が粉砕する。


 それを見て、何が起こったかわかない一同は、目をぱちくりさせる。


「これが、その力か……あの時と同じ感覚だ。力が湧いてくる」


 エンドがゆっくり立ち上がり、魔王もまだ何が起こったか分からずにいる表情をしている。


「やっぱり、俺は死ねねぇんだよ。魔王エンド。もうさっきのようにはいかないぞ?」


 牢屋にいた皆は、声を揃えてその名を呼ぶ。


「「ジン!!!」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ