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冒険者は最強職ですよ?  作者: 夏夜弘
最終章 魔王城編
146/153

どこまでも強く、いつまでも強く 6

『貴様……今すぐ殺す!』


 そう言うカルであったが、なかなか一歩を踏み出そうとしない。


「来いよ?」


『貴様こそ、疲れて動け……』


「ほいっと〜」


 音もなくカルの正面へ移動し、本気で顔面パンチ。カルは音をも追い越さんばかりの速さで床と平行移動する。城の壁はどんどん壊れていくが、減速はしない。


「てめぇが俺にした分、ここでお返ししてやるよ」


 ジンはかなり距離飛んでいったカルに一瞬で追いつき、エルボーを腹にお見舞する。


『ぐはぁっ!』


「寝てんなよ?」


 ジンは倒れたカルの頭を鷲掴みし、軽々と持ち上げる。


「カルを軽々と持ち上げてますよ〜? カルだけに……なんつって!」


 さらにもう一発、拳に全力を込めた正拳突き。それは、強靭なまでに鍛え上げられたであろうカルの腹筋を貫通する。すると、カルは大量の血を口から吹き出した。


『き、貴様……そんな力、先程までは……』


「うるせぇよ、お前に関係ない。俺が強くなっただけだ。ここでお前は死ぬんだよ外道」


『ま、魔王さ……』


 その言葉を言わさず、ジンはカルの頭を握りつぶす。だらりと落ちるカルの死体は、塵となって消え去る。その瞬間、ジンは脱力し、ユニークスキルを解いて、その場に倒れ込む。


『じ、ジン!』


「大丈夫ですよ……ちょっと疲れただけですから……にしても、強かった……もうクタクタです」


『そ、そうよね! ……って、あ、あれれ?』


「どうしたんです?」


『なんでかしら……私がいつも身につけていた、神の羽衣が何故か無くなっていてですね……?』


「そういう趣味なんですか?」


『違うわい! 呼んでも来ないんですよね〜……』


「へぇ〜、で、その神の羽衣がどうか……」


 ジンがそう言葉にした時だった。突然ジンの身体に白い布の様なものが出現する。


「な、なんだこれ!?」


『あぁぁぁぁあ!!! 私の神の羽衣ぉぉぉお!!』


「な、なんだってぇぇぇえ!?」


 その羽衣を纏った瞬間、ジンの疲れはドンドン癒えていき、魔力までもが回復していく。


『そ、それは本来人間界には絶対に現れない物! なのに何でそこにあるの!? やめて! 触らないで! 匂いも嗅がないで! 汗臭い女神って思われるぅ!』


「そ、そんな変な臭いしませんよ……むしろいい香りで……」


『そ、そう? ま、まぁジンが着てるならいいや! 後で私の手元に戻ってきた時は一週間洗わないわ!』


「おい、今最後に聞き捨てならない発言が聞こえたぞ?」


 体力や魔力、その他諸々が回復し終わると、羽衣は消えた。その数秒後、どうやら女神の元へ戻ったらしい。


 ジンがまだ寝転がっていると、何やら騒がしい集団が、ジンのいる部屋へ駆け寄ってくる。


「むっ!? この嫌な足音とやたらうるさい喚き声は……」


 穴の空いた壁の方を見ていると、彼女らは姿を表した。何故か数人の魔族を縛り上げているが、そこは触れないでおこう。


「な、何この穴!?」


「この穴の先には……」


 そう言ったレベッカと目が合い、ジンは嫌な予感を感知する。


「まずい、これは逃げないと窒息死するな」


「ジ〜〜〜〜〜〜ン!!!」


 その叫び声とともに、残りのほか約六名の女性陣が目を輝かせ、ジンに猛ダッシュで突っ込んで行く。


 さらば、俺の休憩。さらば、静かな時間……。


 その後、ジンは気を失いそうになるまで、長い間キスをされ、倒れたとかなんとか……。



 ―それから暫くして。


「それで、これは何があったの?」


「それはカクカクシカジカでしてねぇ……」


『なんだ、それはどんな鹿だ? 食えるのか?』


「食えねぇよ!」


『なんだ、食えない鹿か……残念だのぉ』


「レッドさんが壊れたか……それに、なんだかみんな顔付きが良くありません? 何かあったんですか?」


「それは秘密よ。っていうか、ランはどうなったの!?」


「そ、そうよランは!」


「そんなに焦んないでください、マーシュさん、レベッカさん。外にいると思いますよ?」


「「外?」」


 それを聞き、一目散に外へ駆け出した二人は、数分後、ランを引きずって戻ってくる。


「や、やだぁぁあ!!」


「何を嫌がってるの!? 皆に自己紹介しなきゃダメでしょ!?」


「じ、ジン助けて!!」


「ははは……頑張れ……」


「ほらほらラン、皆どんな子か気にしてたんだから!」


「ううぅ……」


 それから、ランは皆に自己紹介をし、すぐに打ち解け、仲良くなった。その後、ここに収容されていた人たちを、一先ず人間界に返した。

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