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冒険者は最強職ですよ?  作者: 夏夜弘
最終章 魔王城編
145/153

どこまでも強く、いつまでも強く 5

「あ……僕、死んだのか。二回目かー……でも、何かいつもと違う気が……」


 カルにやられ、意識を失い、とある場所へ来たジンは、辺りを見回す。以前来た時は、真っ暗な場所だったが、今回は違う。何か、自分がよく知っている所だと感じた。


「この懐かしいというか、暖かな感じ……なんなんだ?」


『ここは、お前の中だよ。ジン』


「誰だ!」


 後から声が聞こえ、その方向へ振り向くと、目の前には自分が立っていた。


『俺はお前だ。よくある話だろ? 死ぬ一歩手前で、自分と語り合うなんて話は』


「死ぬ一歩手前……? ってことは、僕はまだ死んでないってことか?」


『あぁ。攻撃を受ける直前、お前は本能的に魔法障壁を作りカルの攻撃を防いだ。ただ、相手も魔王の次に強いだけはあったのか、衝撃で頭を打って今は気絶してるだけだ』


「それにカルは気づいてないのか?」


『気づいてない。だから、ここからはお前の問題だ』


「僕の、問題……」


『お前、もう勝てないと思ってるだろ? それどころか、もう疲れた、やりたくないとか思ってるよな?』


「…………」


 それは、攻撃をされる前のこと。死ぬと思った瞬間、ジンは自分の中で、完全に諦めてしまった。ここまで頑張ったから良いじゃないかと。後は、なんとかなるだろうと。


『それは違うよなぁ? お前はランを助けただけで満足か? まだ魔界にいるだろ? レッドやレベッカ達はどうなる? 自分だけ終わるのを待って、負けてしまえば仕方がないと言うのか? その程度の覚悟だったのか?』


「それは……」


『何も言えないのか? 俺は自分に見損なった。その程度の覚悟なら、最初死んだ時、素直にそのまま生き返らず、永遠に眠ってれば良かったんだよ』


「…………」


『何だ、下を向いて? 悔しがってるつもりか? 心の中では、何か言い訳を付けては仕方がないとばかり思ってるんだろ?』


「……まれ」


『そんな気持ちで、一緒に闘ってきた仲間を見捨てるなんて、人として失格だよなぁ? 人間以下……いや、魔族以下だよ!』


「……まれ……俺は……」


『そのまま、意識を失ったまま、お前はここで永遠に寝ていろ! それで、助けた仲間も、助けたい仲間も、人間界の皆も、みーんなおさらばだ!』


 その言葉が火種となり、ジンの心に炎が灯る。それは今までのジンの中で燃えていた物よりも熱く、大きい。


「だまれぇぇぇえ!! 仲間を見捨てる? 好きな人を見捨てる? そんな事、絶対にしねぇぇぇぇえ!!」


『ふっ……やればできるじゃないか。それでこそ俺でありお前だ。自分と話した事でよく分かっただろ? まだやらなければならない事はある。立ち上がれ。そして成し遂げろ! ……できるよな?』


「あぁ。僕ならできる。絶対に。もう諦めない。もう死なない。もう見捨てない。もう、負けない」


『良し、行ってこい!!』


「わかった!」


『お前なら……やり遂げられる……』


 ジンの中に、もう諦めるなんて考えは無い。心の中の自分と話した事。それは、ジンの進化へと、繋がる。



 ユニークスキル"世界の変革者"


 スキル内容"相手が強ければ強いほど力は増す。それは、世界を変えられるほどに"



 ジンの意識は回復し、まだ朦朧としている中、フラフラと立ち上がり、即座に"龍神化"を発動させる。


『魔王様に報告を……!?』


 カルは、ジンが立ち上がったことに気づき、すぐ様振り返って戦闘態勢を取る。


『ほう? 今のを食らって立ち上がるか。体力馬鹿なだけか?』


「うるせぇ……俺はなぁ……もう決めたんだよ。負けねぇって、諦めねぇって」


『まだそんな冗談を言うのか。めんどくさい奴だ』


「ここじゃ死ねねぇんだよ……待ってる人がいる、待ってくれてる人がいる。なら、俺から待ち人の所へ行くのが当たり前だろ?」


『何を言うかと思えば……待ち人なら、地獄で待ってるだろうよ』


「はっ……地獄なんかに俺の知り合いはいねぇーよばーか」


 自分に、自作回復魔法を掛け、魔力は完全に底を尽きる。だが、体力は全開し、傷は癒えた。なら、やることは唯一つ。


「ここが限界じゃねぇ。限界ってのは、超えるためにあるんだ!」


 全身に力を込めるジン。その力は、爆発的に高まり、その力の高まりように、カルは危険を察知する。


『な、なんだこの力は!? たかが数秒で何があったと言うんだ!?』


「はは、今ならなんでもできそうだぁ……」


 ジンは不敵に笑い、カルを睨みつける。


「ここからは、俺の時間だ。異論反論反撃攻撃は一切認めねぇ!」

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