魔界に乗り込みます! 14
あれからしばらく経ち、未だ仲間を見つけられていないジンとへレーナは、少し休憩をとっていた。
「ねぇ、ジン」
「なんです?」
「おかしいと思わない?」
「何がです?」
「何がって……モンスターが一匹もいないことよ。ここは魔界よ? ましてやこんな森、うじゃうじゃいるのが当たり前でしょ?」
「ああ、そのことですか。僕も薄々感じてました。それに、あの霧の中で聞こえた声の人が気になりますし……」
「声の人? 私、そんな声聞こえなかったわよ?」
「え?」
「まぁ声を掛ける暇もなく私は抜け出したからかしら?」
「そ、そうですか……」
何故だ? なぜ僕にだけ声を掛けた? まさか、僕が狙われてるのか……? いや、そんなわけないか。ここに来てまだ数ヶ月だしな……。
「どうしたの? そんな難しい顔して」
「あ、いや、何でもないです。先へ進みましょう。レベッカさん達も探してるかもしれません」
「そうね!」
僕は狙われる理由は何なんだ……。
それから二人は動き出し、仲間探しに尽力した。だが、しばらく見つからず、へレーナに限界が来てしまう。ジンはまだ余裕であったので、へレーナはおぶって行くことにしていた。
「ごめんね、ジン。足でまといになっちゃって……」
「いえいえ、構いませんよ!」
途中から異変に気づいたけど、まさかここまで消耗してるとはな……僕にも回復魔法が使えたら……。
「ねぇ、ジン?」
「なんです?」
「…………」
「どうしました? 誰かいましたか?」
「あなた、本当にレッドさんと結婚するの?」
「…………」
二人に沈黙が訪れる。こんな場所で訊かれるのも変な話だ。まぁ緊張が解れたって事にしておこう。
「そうですねぇ……どうなんでしょう?」
「なによ、その曖昧な答え……私だって……」
「いえいえ、嫌ではないですよ? ですけど、僕なんかいい所なんてないですし、しょっぼいただの子供ですよ? そんな僕が、レッドさんと結婚だなんしてもいいのかなって思ったんですよ」
「それは違うわ。貴方にはいいところは沢山ある。それはみんな知ってるわよ? って言うか、まさかそこまで自分を卑下するなんて思わなかったわ……」
「そうですか? 僕にいい所なんてあります?」
「あーるーの! この際だから言ってあげるわ! まず優しいところ、誰彼構わず助けるところ、素直なところ、可愛いところ、いっぱいあるわ! 他にもあんなことやこんなとこが……」
その長々と説明されるジンは、耐えきれず吹き出してしまう。
「なんで笑うの!?」
「いえ、嬉しいんです。僕、昔は嫌われてたんですよ。いろいろな理由がありましてね……」
「えぇ!? ありえない! 嘘ついたらしばくわよ?」
「嘘じゃないですよ! 本当です。ちょっと嫌われてる人を助けたら、『何偽善者ぶってるの?』と言われ、その助けた人にも『助けて欲しくなんかなかった』と言われ、もう最悪でしたよ?」
自分の過去は初めて話したかもしれない。あまり思い出したくない事だった。今自分はどんな顔をしているのだろう?
そう思った時だった。急に背中が軽くなり、どうしたのかと後ろを振り向くと、突然唇を奪われる。ジンは抵抗せず、ただじっと、動かずにいた。
「その過去が本当でも、私は何も言わない。むしろかっこいいと思う。そんな所が私は好き。心の底から尊敬してるし、ずっと一緒にいたいと思う。だから、そんなに自分を悪く言わないで?」
そのジンを見つめる瞳からは、まっすぐで、迷いの無い、本心から言っているものだとつたわってくる。そして、一粒の涙が零れ落ちる。
「……わかりました。もう自分のことは悪く言いません。だから、泣かないでください。泣いてる姿なんて見たくないですよ……」
涙を拭い、頷きながら近寄ってくる。ジンは優しく抱きしめ、一言「すいません」と言い、数分そのまま立ち尽くす。
そして、へレーナが泣き止み、一歩下がると、再びジンを真っ直ぐ見る。
「ジン、私は貴方が好き。だから、生きて帰るの。レッドさんなんかに取られてたまるものですか!」
「なんか、目を見て言われると恥ずかしいですね……」
「も、もう言わないでよ! こっちまではずかしく……」
「ふ〜ん……恥ずかしい、ですか……」
「「こ、この声は!?」」
ジンとへレーナは、その声にビクッと反応し、恐る恐る声のした方を向く。すると、そこには腕を組んで立っているレベッカとマーシュがいた。
「れ、レベッカさんにマーシュさん! ぶ、無事だったんですね……」
「ええ。ここまで大変だったわ。ここまで歩いてきたら、変なもの見せられるし、もう気が滅入るわ……」
「そ、それは……」
「詳しく、聞かせてもらうわ?」
この後、レベッカとマーシュの質問攻めにあい、ジンとへレーナは、顔を真っ赤にしながら釈明したのだった……
これからは一話投稿になる日が増えるかもしれません...ご了承ください...




