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冒険者は最強職ですよ?  作者: 夏夜弘
第三章 アルゴネズム国編
110/153

もう負けない 3

「お前を殺せるぐらいに成長したんだよ」


 ジンは、ムルドに強烈な殺気を向ける。その瞬間、ムルドの背筋は凍り付く用な感覚に陥る。


「こ、殺すだって? あの時何も出来なかったお前は、今回も同じくただやられるだけなんだよ!」


「それはやってみないと分からないだろ?」


「戯けが……やれるものならやって……!?」


 ムルドがそう言った瞬間、ジンは、その場の誰にも視認不可能なスピードで、ムルドの目の前へ行く。


「これでどうだ?」


 ジンは、軽く鼻で笑い、ムルドの腹にアッパーを決め込む。ムルドは、その強烈さに、血を地面にぶちまける。


「ブハッ……! クソッ! こんなのはマグレだぁ!」


 ムルドは、完全に頭にきて、最初から全部を出し切るくらいの勢いで、襲い掛かってくる。


「シネシネシネ死ねぇ!!」


 ムルドの攻撃は、確かに前回の闘いよりも、何倍も早くなっている。だが、ジンはそれを軽々と避けていく。


「ジンに……ジンに何が起きてるの……?」


『我には分かる……多分ホワイトもだ……』


『えぇ、わかるわ……あれは……』


『そう。あれは間違いなく我と同じ力だ。つまり今、ジンが纏っているオーラは龍のもの。もっと言えば我と同じ物と言っても過言ではない』


『えぇ。それに、多分レッドに引けを取らないくらいに強い。私なら多分負けちゃうわ』


「そ、そこまで……」


 レベッカ、マーシュ、エレンはそれを聞き、もしかしたら魔王も……と思うが、それもすぐに覆される。


『だが魔王には届かない……況してやジンには女神の力がない。あればもしかしたら話は変わってるがな……』


 へレーナもその意見が正しいと、首を立てに降っている。


『まぁ今はそんな事は考えなくていい。目の前の敵に集中を……』


「いえ、レッドさん……それが……」


 へレーナが、レッドの言葉を遮り、魔王軍の方を指を指す。そこでは、ムルドに攻撃を続けるジンに、周りの魔王幹部達が、何人もの束になってジンに攻撃を仕掛けていた。


『流石にジンでもあの人数の相手は……!』


 そう言った瞬間、ジンに五人ほどの魔王幹部が飛びかかる。それも、かなりの強さを持った者達だ。レッドは、不安に思い、冷や汗を垂らす。が、そんな心配は無用だ。


 飛びかかって数秒後、そのもの達が、血を吹き出しながら宙へ飛んでいく姿を、レッド達は確認する。


『まさか……!』


 レッドは興奮する。目の前の状況に、不安が一気に消え去る。


「何人で掛かってこようと同じだぁぁ!」


 耳を塞ぎたくなる様な、ジンの叫び声が聞こえてくる。


 次は十人で飛びかかる。その人数は、流石のジンも対処しきれず、取り押さえられ、ムルドの怒りの鉄拳を食らう。


 ジンは、殴られた勢いで、レッド達の元へ飛んでいく。


 上手くレッドが受け止め、そこで一旦激しい攻防がストップする。


「クソ……魔王幹部があっさりとやられただと……私もいよいよ出し惜しみはダメな様ですね……」


「出し惜しみ? 今のが本気だろ?」


「魔王様の力を使えばお前など……」


 そう言うと、ムルドが何かをブツブツと喋り出す。他の魔王幹部達も、ムルドへ向けて手をかざし出す。


 数秒後、その魔王幹部達から、黒い靄のようなものが現れ、ムルドに吸い込まれていく。


「な、なんだこの膨れ上がっていく力は!?」


「だから言っただろぉ!? 魔王様の力を使えばお前らなどどうってことないと!」


『ジン、まずいぞ……あれは我でも太刀打ちできん!』


「まさか……」


 だが、この時、ジンにはまだ自信があった。それは、もう一つの新ユニークスキル"龍人化"だ。


 だが、これは最後の手段としてとっておこうと決めていた。そのため、まだ使う時ではないと判断した。


「フハハハハハハ! このパワー! 何でも出来そうだ!」


 力を失った周りの魔王幹部は、力なく倒れていき、塵となって消えていく。


『魔王の力に周りの魔王幹部の力……かなりの力があるぞ!』


「貴様たちに今の私を止める事は不可能だ!!」


『ジン、一緒にやるぞ!』


「…………」


『おいジン! 聞いておるのか!?』


「……レッドさん、僕一人にやらせてください」


『何を言って……』


「僕は仇を取りたい。ネイン、ダイコさんの分の。だから僕にやらせてください」


『ジン、お主まだ……』


「大丈夫です。僕は冷静です。それに、まだ僕には『秘策』があります」


『秘策……だと?』


「はい。だから見ててください。成長した、僕の姿を」


 そう言い、ジンは、不敵に高らかな笑い声をあげている、ムルドに、殺気を向ける。

今日は、午後から少し用事があるので一話更新です!


申し訳ないです。明日は二話投稿するので、ご了承ください。

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